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「リョーカ!!!」
モトキが駆け出す
崩れた道路を飛び越え
瓦礫を蹴り
落下地点へ向かう
ヒロトも後ろを追う
だが
途中で二人とも足を止めた。
落ちてきたはずのリョーカを
“誰か”が抱えていたからだ
白い服
長い銀髪
女――に見えた
だが違う
人間特有の気配がない
肌が白すぎる
瞳孔がない
呼吸音もしない
何より
周囲のバグ達が
その存在に跪いていた。
「……誰だ、お前」
モトキが銃を向ける
その存在は
静かにこちらを見る。
そして
微笑んだ
『初めまして』
声が
頭の中に直接響く
『人類最後の抵抗者達』
ヒロトが舌打ちする
「うわ、嫌なタイプだ」
『私は端末』
『ヴェルトラウムの一部』
その瞬間
モトキの殺気が跳ね上がる
銃声
パンッ!!
だが
弾丸は届かない
目の前で止まった
空中で
「……ッ!?」
弾丸が
ぐしゃりと潰れる
重力そのものを握り潰されたみたいに
『無駄』
銀髪の存在は、
まるで感情なく言う。
『あなた達では、世界は変えられない』
「はっ」
ヒロトが笑う
血だらけのまま
短剣を構える
「そのセリフ、ラスボスっぽくて嫌いじゃねぇよ」
『理解不能』
「だろうな」
ヒロトの目が細まる
「お前ら、“人間”嫌いそうだし」
一瞬。
銀髪の存在の表情が止まる。
『嫌悪ではない』
『進化だ』
『苦しみを終わらせるための』
モトキは吐き捨てる
「本人の意思無視してか?」
『個の意思はノイズ』
『統合こそ完成』
「だから嫌いなんだよ」
モトキはリロードする
カチン
「お前らみたいなの」
その時
銀髪の存在が、
抱えていたリョーカを見る。
『RX-00』
『なぜ抵抗する』
『お前は我々の一部だ』
リョーカは動かない
ボロボロだった
腕は千切れ、
顔の半分が砕け、
内部機械が露出している。
それでも
小さく、
唇が動いた。
「……やだ」
銀髪の存在が沈黙する。
「ボク、そっち行かない」
『なぜ』
「だって」
リョーカの壊れた目が、
モトキ達を見る。
「こっちのほうが、好きだから」
その瞬間
空気が変わった。
ヴェルトラウムが
怒った
空の巨大な目が
完全に開く
地下都市全域に
黒い亀裂が走る
『理解不能』
『理解不能』
『理解不能』
声が重なる
世界中から響いてくるみたいに。
バグ達が暴れ始める
建物が崩れる
地面が割れる
「マズいぞ!!」
ヒロトが叫ぶ
「都市ごと潰す気だ!!」
銀髪の存在が、
ゆっくりリョーカを地面に下ろす。
そして
こちらへ手を向けた
『排除する』
瞬間
見えない圧力
モトキの身体が吹き飛ぶ。
「がっ……!!」
肺の空気が消える
瓦礫に叩きつけられる
ヒロトも地面に押し潰されていた。
「ッ……重……!」
重力
周囲一帯の重力が狂っている
立てない
骨が軋む
『終わりだ』
銀髪の存在が近づく
静かに
確実に
モトキは歯を食いしばる
身体が動かない
銃すら持ち上がらない
死ぬ
そう思った時だった
――カチ
小さな音
銀髪の存在の額に、
銃口が当てられていた。
リョーカだった
半壊した身体で、
立っていた。
『RX-00』
「ねぇ」
リョーカが笑う
壊れた顔で
泣きそうな声で
「友達傷つけるの、やめてくれない?」
次の瞬間
リョーカの胸部が、
眩く光った。
モトキの目が見開く
「……待て、リョーカ」
気付いてしまった。
それが何か
「お前、それ……!」
リョーカは振り返らない。
ただ静かに言った
「モトキくん」
「ヒロトくん」
声が震えている
「短い時間だったけど」
黒い光が膨れ上がる
空間が裂け始める
ヴェルトラウムが初めて、
後退した。
『自壊反応確認』
『停止しろRX-00』
「やだ」
リョーカは笑った。
今までで一番、
優しく。
「ボク、人間になりたかったから」