テラーノベル
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翌日になったら熱はすっかり下がっていて、身体も楽になってた。
家にいても母親がまるで腫れ物のように俺に接してくるから心地悪い。父親は冷ややかな視線を俺に向けてくる。
もう何も期待していない。期待しているのは潤だけだと。
「実里くん、また明日ね〜」
「またねー」
今日もへらへら笑いながら寄ってくる女の子に愛想を振りまく。
女の子ってやたらとボディータッチが多い。嫌がるのも、背中に触れないでと言うのも面倒。
そんなこと言ったら、絶対に詮索される。
だから、いつも通り桃色のカーディガンを肩にかける。これなら少し盾となる。
そういえば、あの人はボディータッチとかしてこないな。
「……ましろせんぱい」
彼女の名前を呟く。
「呼んだ?」
「へ!?」
まさか本人が現れると思わなくてビックリした。
「熱は大丈夫?」
「もう下がったよ。運んでくれたんでしょ?ありがと」
ほっとしたように微笑むましろせんぱいは、九條の人間でもないのに泉に利用されているかわいそうな人。けれど、この人見てると、ちょっと心が和む。
「家庭科室行くところ?」
家に帰る方が嫌だし、行くかな。
「ましろせんぱいも行くでしょ」
「うん、一緒に行こ」
ああ、やだな。
そういう真っすぐな笑顔は……苦手だ。
家庭科室のドアを開けると目を見張る光景が広がっていた。
「お前ら見てるとイライラすんだよ!」
「気にせずにいられるわけないだろ」
和葉と武蔵が喧嘩をするのは珍しい。
「やめろって!」
口論する和葉と武蔵の間に歩が入って宥めようとしてる。
なにやってんだよ。ましろせんぱい、呆然としてんじゃん。
「潤、てめぇもだ」
和葉の鋭い視線と潤の冷たい視線がぶつかる。
「少し落ち着きなよ」
「良いやつぶって逃げてんじゃねぇよ。お前兄貴だろ」
……喧嘩の原因、俺かよ。またあの話。うんざりだよ。
俺を腫れ物のように扱わないでよ。嬉しくないんだよ、そんなの。
喉元に様々な言葉が引っかかる。
だけど声を上げて、怒鳴る気力すらわかない。
「もう俺のことなんて放っておいてよ」
一斉に視線が集まる。
俺とましろせんぱいが来ていたこと気づいていなかったんだな。
驚いている顔が滑稽だ。馬鹿だね。みんな馬鹿だよ。……俺も。
視線に耐えきれず、その場を立ち去った。
海の紅月くらげさん
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