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「待って」
走って出て行く実里くんの背中を必死に追いかける。どうして彼らが喧嘩をしていたのかはわからないけど、今は実里くんを追わないといけない気がする。
「待って……!」
伸ばした手が実里くんの背中に触れる。
――その瞬間、勢いよく振り払われた。
「っさわんな!!」
「!」
「……っ」
こんなに怖い実里くん見たことない。硬直する私を見て、実里くんの表情が一瞬歪む。
「実里くんっ」
身を翻して離れていく。背中にかかっている桃色のカーディガンが揺れて、栗色のゆるいパーマのかかった髪が項垂れる。
——待って。待って、実里くん。
「えっ!?」
肩を叩かれて振り返ると、人差し指を口の前に立てた彼が「しーっ」と微笑んでいる。
「実里を助けたい?」
その問いかけに、私は咄嗟に頷いてしまった。
化学室に入るように促される。窓に暗幕がかけられていて、中は真っ暗だ。
「一体どういう……」
「いいからここで待っていて」
それだけを言い残して〝彼〟が消えていく。目的がなんなのかわからない。私がここで待つことと実里くんを助けることになんの関係があるんだろう。
少しして、勢いよく化学室のドアが開けられた。
「——また呼び出されたって、大丈夫なわけ?」
「え……」
「は……? 女子たちは? 今あいつから連絡が来て……」
血相を変えてやってきたのは、実里くんだった。
どうやら私がまた女子たちに呼び出されたと聞いて、慌ててやってきてくれたらしい。
先ほどはあんなに私を拒絶した実里くんが、息を切らしてまできてくれたことに驚く。
「あのね、これは————」
事情を話そうとしたところで、電気が消されてドアが閉められてしまった。
「!?」
窓に暗幕がかかっているため、辺りは一面暗くなった。
どうしてわざわざ〝彼〟は電気を消したんだろう。そんな疑問を抱いていると、怯えるような声が聞こえてきた。
「……ひ、っ」
「実里くん?」
「た、たすけて……」
暗くて表情も見えないため、手探りで実里くんに手を伸ばす。
「どうかしたの?」
「く、らい……」
「え……?」
触れた手が氷のように冷たくて震えていた。
「む、無理なんだ……こんなに暗いのは無理だ。真っ暗は怖い。怖いよ、いや、だ……っ」
実里くんを安心させるように手を強く握る。すると握り返された。
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海の紅月くらげさん