テラーノベル
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準備は整った。私が狩り続けてきた「邪悪」とは、怪物のことじゃない。
人間の心の奥底に眠る、真っ黒な欲望の種を回収していただけ。
溜まりに溜まったこの「世界の毒」を、今から一気に解放してあげる。
空は紫色に濁り、人々が隠していた本音が剥き出しになっていく。
愛を誓い合った恋人たちが殺し合い、平和を謳った政治家たちが略奪を始める。
隠されていた「真実」が、ようやくこの世界を塗りつぶしていく。
「あははっ! 見てよ、これが君たちの正体だよ! 綺麗だね、これこそが本当の世界だよ!」
悲鳴が音楽のように心地いい。
空っぽだった私の心が、ようやく満たされていくのを感じる。
だって、誰も嘘をつかなくなったんだから。
みんな、素直な「欲にまみれた獣」に戻ったんだから。
街は静かになった。
欲望を使い果たした人間たちは、ただの動かない肉の塊になって転がっている。
「死」こそが、唯一彼らが辿り着ける「平等」で「純粋」な状態。
私は、崩れ落ちた学校の屋上に座り、最後の手紙を破り捨てた。
そこには「努力は必ず報われる」なんて、使い古された呪いの言葉が書いてあった。
報われたよ、私の努力。
だって、こんなに静かで、醜いもののない世界を創り上げたんだから。
「さようなら、最低で大嫌いな世界。……やっと、静かになれたね」
コメント
2件
センス えぐい 脚本家なれるよ(?)