テラーノベル
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次の日も、いつも通りだった。
小テストは満点、教師に当てられれば完答、難問と言われる応用問題も即答、教師が冗談で出した未解決問題も─…辞めておこう。
類は下校の道を変えることにした。帰途でるいー!と、聞き覚えのある大声が聞こえてきたが、
類(…何も聞こえない…何も聞こえない、はずだ)
俯いて通り過ぎた。
類(僕に、光を見る資格はない)
昼夜、面白くも難しくも無い問題を解き続けた。そうしていないと、存在を維持できないんじゃないかとも思った。
毎日毎日毎日、例の場所の近くの道を通る時は耳を塞いで走った。もう、待ってなんか居ないと、分かっているのに。
例の出来事から約一ヶ月経った頃、注意報レベルの大雨が降った。その日、母さんに送迎してもらったのだが、車内では母さんとの会話から逃げるように、英単語帳を読んでいた。母さんはそれを見て、
朝比奈母「車で送迎すれば勉強時間も増えるし、変な子に絡まれないし良いわね」
と、それから毎日、車での送迎が始まった。母さんと二人の時間が増え、増々体力も減っていった。
僕はこの状態をどう表すのかと聞かれたら真っ先に“地獄”と言うだろう。…相手によるが。
母さんは容赦なく、僕と司くんが喋っていた道を通った。僕はその度に、司くんがそこに居ないことに、安堵と絶望を覚えた。
だからその日も、いつもと同じ日の筈だった。いつも通り送ってもらい、いつも通り授業を受け、いつも通り校門前に停めてある母さんの車に乗り込もうとしていた。
不意に、手首が引かれた。
振り向くと目に写ったのは、ここらではあまり見ない、だけれど何度も見た制服。それから、金の瞳と髪。
類「つ、かさ…くん…?」
類が上手く言葉を発せず、ただ目を見開いている間にも、車内の母さんが司に向かって何か怒鳴っていたが、類にはもう聞こえなかった。
司「類!この劇、逃走劇か傀儡劇、どちらがいい?」
類「ぇ…」
何も怖くない、と言うように司が笑った。
司「類が決めるんだ!我らが演出家!」
きっと、正解は司を振り払って車に乗る事なのだろう。
…でも。
類「…逃走劇を、お願いできるかな」
類は恐る恐る司の手を握り返した。
司「任せろ!」
二人は司のその一言を合図に、手を繋いだまま走り出した。後ろで車のエンジン音が聞こえる。母さんは追ってくるだろう。それでも。
それでも、彼と一緒ならば大丈夫だと思える。
母さんを巻くために司に連れられるまま路地裏と呼ばれる道路に入った。車が一台通れるか通れないかの狭さの道路だ。走って、左に曲がって、また左、今度は右に曲がった。グルグルと類は訳も分からぬまま司の手だけを頼りに走った。
類「ちょ、っと…まっ…」
そして、そう距離を走っていないような地点で、類が立ち止まった。
司「どうした?!体調が悪いか?!」
そう焦ったように振り向いた司が見たのは、膝に手を置きゼェゼェと肩で息をする類だった。そもそも、舞台役者として日々鍛えている司と、拒食症に勉強ばかりでの運動不足の類である。類が早々にバテるのは火を見るよりも明らかだった。
#兄弟パロ
かの
456
#暁山瑞希
ねる
722
101
類はこれ以上走れる様子じゃない。でも、まだこの距離では追いつかれる可能性がある。巻き切れていない。
司「類…少し揺れるぞ」
類「へ…え?!」
司は類の背中と膝裏に腕を回し、軽々と抱き上げて走り出す。所謂姫抱きという体勢であるが、類は混乱と落ちないように必死に司を掴むのに頭がいっぱいなので気付いていない。というか、そもそも姫抱きという概念を知らないので恥ずかしがる事もない。
振動と回る視界で、頭が溢れかけた時、司は不意に止まった。
司「多分巻けたな…!」
類「ここ、って…」
そこは、以前二度訪れた司の家。
司「さあ入れ!」
当然の様に類を招き入れるものだから、
類「…お邪魔します…?」
類も思わず、光の住処に飛び込んだ。
コメント
1件
ああ、第7話読んだよ…!類くんがずっと自分を閉じ込めてる感じが切なくて、でも最後の司くんの「逃走劇か傀儡劇」って台詞で一気に引き込まれた。あそこ、マジでかっこよかったわ。姫抱きで連れ出して「光の住処」に招き入れる流れ、叙情的でめちゃくちゃ良かった。この二人の距離がようやく動き出した感じがして、続きが気になる!