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リオが厩舎に着くと、素早く準備を終えたゲイルと先ほど知らせに戻ってきた騎士、そしてもう一人の騎士が、馬に荷物を括りつけている所だった。置いていかれなかったことに安堵の息を吐く。 リオも急いでいつも乗っている馬を引っ張り出す。毎日リオが丁寧に世話をしているからか、馬はとてもよく懐いている。「頼んだよ」と首を撫でると、馬は気持ちよさそうに鼻を鳴らした。
ゲイル達が馬に乗り出発する。
リオもすぐに後を追う。三人とも何も言わないところを見ると、納得はしていないが、リオがついて行くことを、渋々了承してくれているのだろう。
しかももっと早く進めるだろうに、リオがついて行ける速さで進んでくれている。三人との距離が離れてきたと思うと、すぐに追いつく。助けないと言ってたけど、結局はリオを気遣ってくれている。
リオは、ゲイルと騎士達の優しさに感動し、なるべく迷惑をかけないよう、必死で馬を走らせた。
リオは、なんとかゲイル一行について行き、さほど遅れることなく、一昼夜かけてギデオンが消えたという現場の山の|麓《ふもと》へ着いた。少し登って、ひらけた場所の木に馬を繋ぐ。そしてギデオンのことを知らせ来た騎士の後を、皆でついて行く。
しばらく進むと、たくさんの騎士達がいる場所へ着いた。ここがギデオンが飛ばされた現場らしい。
ゲイルの姿を見つけて、ギデオンと一緒に討伐隊として来ていた騎士達が寄ってくる。しかし、その中にロジェの姿が見えない。ゲイルに報告している騎士の話によると、遠く離れた場所へ捜しに行って戻らないそうだ。
ギデオンが襲われた状況も聞いた。
数十人で魔獣を囲い、一斉に攻撃を仕掛けた。魔獣は何十箇所も刺されたが倒れず、更に暴れ出した。皆は慌てて逃げたが、ギデオンの部下が一人、逃げ遅れた。部下目がけて魔獣が振り下ろした爪を、ギデオンが剣で受け止めた。大きな爪が剣に引っかかったまま魔獣が腕を大きく振ったために、ギデオンの身体は、軽々と遠くまで飛ばされたらしい。
「なんと。無茶をさなる」
話を聞いたゲイルの顔が険しい。
無茶をしたギデオンに対して怒っている。でもそれ以上に、心配でたまらないのだ。
リオも「何やってんだよ、バカ」と思わず口から出た。
無事に帰ってくるって約束したのに。だから俺を連れて行けって言ったのに。きっと寝不足で判断を誤ったのだ。
更に話を聞いた。
魔獣はギデオンが飛ばされた直後には退治されたらしい。討伐隊の仕事は終わった。だが国中から集められた優秀な騎士のほとんどは、残ってギデオンを捜索してくれているらしい。
リオは、ゲイルの周りに集まる騎士達から離れて、ギデオンが部下を庇ったという辺りの土を触り木に触れた。何かしらを感じ取れるかと思ったが、わからない。
リオは辺りを見回してため息をつく。
こんなに大人数で捜しても見つからないなんて…と最悪の事態を想像して目の前が暗くなる。
|比喩《ひゆ》でなく実際に暗くなり、ふらりとよろけた身体を、誰かが支えた。