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「人差小指は実在していた。だが、そのことを知っているのは霊媒体質を保持している人物、そしてネームドという裏側の人物だけ。例え幽霊になろうと、1回目から彼は実在していたのだ。では逆に考えてみよう。本当は1回目から194回目……今回まで、実在していなかった奴がいて、でもそれを全員が認知していなかったら?……本当は存在しなかったはずの人物を、全員がさも初期からいた人物だと誤認していたら?」
「無論、これは可能性の話だがな。もしかしたら、そんなことがあり得るかもしれないという」
*
「俺、お前に名前が星斗だったってこと、言ったっけ」
この言葉を出すのに、俺は何のためらいもなかった。
気付いたら発していたその言葉。
じっくり音端の話を聞いていたわけでも、考察していたわけでもなく、ただなんとなく話を流していたら、急に頭にその言葉が舞い降りてきたかのように。
静寂が訪れる。音端は何かを思案しているようだ。
最下層を探索していてCDの部屋を見つけた、とでも言ってくれたらよかったのだが、時系列的にありえないのだろう。
この指摘の仕方で、変に俺達がいろいろ知っている方だと思ってほしくはないが叶わない願いなのだろうか。
例え今目の前にいる音端が敵でも、今の俺達には情報が欲しい。
自分がやらかしてしまった時の、あの嫌な雰囲気が続き、俺が関係ない事を考えようとしてきたときに、音端がやっと口を開いた。
「……そうっすね。色々あったんで知ってることも多いんすよ」
「ほーーーーーーーん???はーーーーーーん???へーーーーーーぇ??」
「どういう相槌なんですか……」
「というか、皆さんこそどうやって最下層に?僕はCチームで飛ばされてきたんすけど」
「へぇぇぇぇぇ??話逸らしちゃうんだぁ??まあいいけど、こっちも色々あって。俺は初手最下層スタートだったんだけど、そっから上手い事復活して、そこでaチームだった猫手と指揮と合流。んで、探索してみた結果、花芽の部屋から最下層に続く階段が見つかって」
「花芽さんの部屋からっすか?信じられないっすね。あの人、ただの参加者のはずなのに」
「ええ。貴方ももうご存じかと思いますけれども、この状況を作り出した黒幕、輝煌グループのトップを殺害したとみられる花芽さんは、今思えば重要な役目を与えられていたのかもしれませんね」
「へー、そっちもそっちで頑張ってくれてたんすね。……というより、猫手さんのこと追わなくていいんすか?」
「あーそうじゃん!!……でもあいつ……えと、死んでるみたいな話が出てなかったか?」
「ええ。ですから、猶更確認しに行こうと思ったのですが、音端さんも来ていただけませんか?」
「あ、僕はちょっと用事あるので、失礼するっす」
「えやっぱ怪し」「そうですか、ではまた」
「やっぱ怪しいだろあいつ!!一回アッパーしようぜ!!」
「まあまあ、今はそれよりも猫手さんですよ」
「まあそうだけどあいつなんか知ってそうじゃん!猫手殺したのももしかしたら……!」
「それはないですかね。あの人は神化人ではないので」
「もう訳わかんねー!!」
「暫く私の指示に従っていただけますか?いずれ説明はするので」
「おっけー……」
*
俺と指揮は、猫手が亡くなった場所らしい「死体安置所」と呼ばれる場所に着いた。
某コス〇コによくあるバカでかい冷蔵庫みたいな温度で、全ての壁が棚になっていて、その棚から真っ白な足がのぞいている。
中央付近に猫手の物とみられる吐瀉物や血液が散乱していて、臓器のようなどす黒いぶよぶよの何かもあった。
今まで現実味のない事が起こりすぎていたせいで、どんなにえぐい状況でも耐えられると自信を持っていたが、ここまで酷いと思っていなかった。
こっちまでつられて吐きそうだった。てか何回か二人して吐いてる。
「……ひっでぇなこれ」
「ええ……。噂には聞いておりましたが、まさかこれほどとは思いもしませんでした」
「こんなんになるまで気づかなかったのか?というか、猫手はどこ行った?」
「猫手さんは神器と呼ばれる存在になっておりまして、彼女の中には神化人がいたんです。木更津さんとmessiahさんのような状況ですね。それで、その中に居た神化人と言うのが、ネームドのjealousyです」
「おー、これで全員揃った……のか?」
「ええ、私たちはこれでおそらく全員把握できましたね。総数は8なのですが、messiahさんが7と言っていたのが気がかりなのですが……まあいいでしょう。それで、神器は基本的に自我が多少揺らぐ程度で、本来であれば人格が破綻する、身体が制御できなくなる、ですとかそういうことは起こりえません」
「でも、猫手はそんな感じだっただろ」
「そうですね。これにはからくり以下の仕組みのようなものがありまして、神化人の中でも悪い人……例えば、出世欲が強かったり、人間をお金稼ぎの単位としか考えていないような人は、神器の体をわがものにしたいと強く願えば、本当に神器の体を自由自在にできてしまう場合があるのです」
「え、てことは猫手はjealousyにそれされたってことか」
「ええ、そう考えられます。神器の体は神化人そのものの体に作り替えられ、その過程で神器の臓器や血液等を全て吐き出すんだとか」
「グロいどころの話じゃないな」
「本当に惨いですね」
「……じゃあ、今猫手はjealousyになっているのか」
「そうです。そして一番の問題は、前に話した通りこの手法は悪心を抱いている神化人にしか使えません。つまり、邪念がある神化人を完全にフリーにしてしまったこと。こうなれば、計画遂行も容易でしょうし、神には私たちも勝てませんから」
「jealousyの企みを止められないのか。そりゃまずい、しかも仲間と1:1交換にしちまったしな」
「非常にまずい展開です。第三ゲームに向けて、最下層に行って味方を補充したかったというのに。……今回の件は、私の軽率さが招いた結果です。あの時にもう少し準備してから最下層に行こうですとか、最低でも神器にはこのようなリスクがあると猫手さんに伝えておけば……」
「いいよもうそれ系、俺もお前も暗くなってどうする。こっからなんとかしなきゃってことだろ?一回前向いて今後の事について色々考えようぜ、お前考えるの得意なんだろ?それで二人でここから脱出できたら、その後に打ち上げして反省会だ。そんなんでいいんじゃないかな、現に俺も多分悪いし。俺もお前もおあいこですねーでいいだろ、な?」
指揮の顔から笑みが零れているのを、俺はなぜか目にとめた。
ほんの一瞬だけ、周りの空間から五感が消え去ったような気がした。
「……ありがとうございます」
「まあな。そしたら、お前の作戦を教えてくれよ」
*
黄楽天様は何処だ?
広場にもいないのは当然であろう。あの方はネームドだぞ。
しかし、最下層にもいないとは。
ネームドは最下層のa,bに集合して今後について話している。
黄楽天様もそこに居られるはずではないか。
だが、そこにあの方はいらっしゃらなかった。
blossomに聞いても、彼女は知らんとしか答えなかった。
c側を探すほかあるまいと、必死に探すも、結局見つかることはなく。
先程の死体安置所にもいらっしゃらないと言うのか?
あの方を僕は探しているだけだ。
黄楽天様は何処だ?
暫く時は経ち、僕は本来存在を確認できない筈のネームドと出会った。
彼の名はjealousy。神化人である彼を霊媒体質でない僕が視認できるということは、神器になり替わることに成功したということ。
噂には聞いていたが、百聞は一見に如かず。一気に現実に巻き戻り、あれほど惨いことをさも当然かのように行ったのかと、改めて邪神の恐ろしさに震えたものだ。
「jealousy、黄楽天様は何処だ?」
「最近の君はずうっとそればっかりだねぇ、たまにはそれ以外のお話もしないの?(呆)」
「五月蝿いな。僕は黄楽天様を見つけなければ、何をするにしても無能力にほかならない。黄楽天様は何処だ?」
「さぁねぇ……」
「とぼけるなよ。お前が何かしたのか、いやしたんだろ?」
「僕というよりは、ambition君たちじゃないのかなぁ……」
「ambition?そんなわけないだろ。奴はもっと意味不明な事を大胆に平然に行う化け物だ。黄楽天様を隠すだなんて小賢しい真似、貴様のような邪神にお似合いだ。黄楽天様は何処だ」
「はぁ……頭固いなぁ……僕はambitionが単体で動いてるとは一言も言ってないんだけどなぁ……(呆)」
「何を言っているのか分かっているのか?あのambitionが誰かに協力するだって?」
「そうだよ、ambitionは変な条件付きで衣川と花芽に協力してるんだよ」
「それは……本当か?その衣川たちが黄楽天様を何処かに隠していると?」
「うん、何か計画があるみたいでさぁ、bloodの研究を邪魔するとか言ってて、許せなくない?(怒)」
「ああ、そうだな。それで、黄楽天様は何処にいらっしゃる?」
「結局そこに帰ってくるんだ……(呆)黄楽天……messiahは、今ambitionの所にいるよ」
「感謝する」
「”empty”、それで、何する気なのさ」
「簡単だ。黄楽天様の仇討ちをするに決まっているではないか」