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それでも君は僕に話し掛け続けた。
これは黒塗りの世界へ行ってしまった君へ送る手記である
「ドス君!」
何も話さず本を見ている僕に今日も君が話し掛ける
君はただ、笑っていた
そんな君が可愛らしくて君の頬に口付けをすると紅くする
それは伝えこそはしない密かな愛だった
今日の君は何かの歌を口ずさんでいた
曲名は分からないが落ち着いたメロディーで読書にぴったりだった
最近の君は、元気がない
いつも笑顔の貴方は何か大きな物を抱えている様で
何処か呆然としていた
僕は何もできなかった
「ヒョードル君、」
僕はゴーゴリさんを抱きしめた
口では伝えられないから
それでも、届かない
僕は君にずっとずっとずっとずっと話しかけた
でも君は答えられない
こんな生活が続いて、君の声が、愛が、温もりが恋しくなっても君は気付くことは無かった
気紛れに抱き締めないで、
勘違いさせないで、
君からの愛を求めてしまう前に
「ゴーゴリ、さん?」
今日は中々尋ねて来ない為、僕の方からゴーゴリさんの家を訪ねた
縄を切って脈を計ってみる
ねぇ、僕知ってるよ。
フョードル君さ、此の前女の子と会ってたよね
やっぱり。形だけなんだよ
なら、君を好きな私が死ぬ前に。
全てを終わらせてしまえば良い
そうしたら、そう出来たなら幸せな頃の儘、いられたのかなぁ、
喪服なんてもう十数年着ていなかったもので
解れていて不器用ながらも直してみる
何故こんなにも簡単に人って死んでしまうのだろうか。
あの彼がどうして此処まで追い詰められてしまったのか、
決して愛情を表に出さなかった自分への罪として。僕はこの手記を書き連ねている
「言葉で言わないと伝わりませんから、」
それは友人でも家族でも恋人でも
「早く言えば良かったのですけど」
手遅れになる前に
「彼と話せる時に」
悲しみを
「悔やみを」
愛を
「どうか」
どうか
「貴方へ」
此れは君への、