テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,316
293
773
Episode 31「狙撃」
廃ビルエリア。
三上は一人、崩れた路地を進いていた。
瓦礫。
崩れた外壁。
途中で放置された車両。
見通しは悪い。
だが時折、建物の隙間から長い射線が通っている。
その度に三上は足を止めていた。
「……嫌だなぁ」
小さく呟く。
誰に聞かせるでもない。
ただ、口に出さないと妙な緊張に飲まれそうだった。
端末のマップを見る。
現在位置を確認。
黒瀬たちとはかなり離れている。
無線は静かだった。
その静けさが逆に嫌だった。
三上はゆっくり建物の角へ近づく。
すぐには曲がらない。
壁に背を預けたまま、少しだけ視線を出す。
誰もいない。
だが、それが安心材料にはならない。
相手は当真だ。
見えてからでは遅い。
三上は小さく息を吐く。
「マジでどこだよ……」
返事はない。
当然だった。
足元の瓦礫を避けながら進む。
できるだけ音を立てない。
だが、自分の立てる小さな足音すら妙に耳についた。
前方。
少し開けた通路が見える。
崩れた高架の下。
遮蔽物はある。
だが完全ではない。
三上は露骨に嫌そうな顔をした。
「射線通ってるじゃん……」
その時。
無線が小さく鳴った。
『三上先輩』
黒瀬の声。
三上が少しだけ安堵する。
「おう」
『そっち、何か見えますか』
「いや、何も」
三上は周囲を見回す。
静かだった。
風の音だけが聞こえる。
『そうですか』
黒瀬の声も静かだった。
『気をつけてください』
「言われなくても気ぃ張ってるっての……」
無線が切れる。
三上はもう一度、開けた通路を見る。
行くしかない。
このまま止まっていても仕方ない。
ゆっくり前へ出る。
身を隠せる場所を選びながら進む。
当真なら高所を使う。
三上は自然と上を警戒していた。
それらしい場所はいくつもある。
なのに。
どこにも姿が見えない。
数歩進む。
その瞬間。
乾いた銃声。
三上の視界が揺れた。
何が起きたか理解するより先に、胸部へ強烈な衝撃が走る。
「ッ――」
身体が崩れる。
撃たれた。
そう理解した時には、もうベイルアウト光が広がっていた。
最後まで。
どこから撃たれたのかは分からなかった
コメント
1件
うわ、三上やられたか…。狙撃の緊張感、めちゃくちゃ伝わってきたわ。無線の静けさとか、射線が通ってる場所を避けながら進む描写がリアルで、こっちまで息止めて読んじゃった。どこから撃たれたか最後まで分からなかったのも、当真の凄みがよく出てたな。