「どうすりゃいいんだ・・・」
パン屋のオヤジは一人、絶望感に苛まれていた。
なんで俺ばっかり、いっつもこんなんばっかだよ!
ぐるぐると回る頭の中、愚痴や言い訳祭り開催中。
わっしょい、わっしょい、俺様わっしょい!
たこ焼きねぇ!
焼きそばねぇ!
残り時間もあと少し!
お金もねぇ!
やる気もねぇ!
頭の毛根あと少し!
ってやかましいわァァァ!!!
あたおかムーブも過ぎると、かえって冷静になる。
オヤジはふう、と一息つくと、こんなことになった原因を思い返してみた。
ホァンホァンホァン・・・回想始め
「パンを作れぇぇぇ!」
えらい人に頼まれた、いやこれはもはや命令だ。
このハラスメントに厳しい時代、そんなんありか?
あるんだわ、特に地方とか田舎とか、島根とか。
まあ、そんなこんなでパンを作ることになったが、そこはオヤジ、本職パン屋なのでよゆーよゆー。
なんなら、筋トレしながらでもできるわ!
腹筋ヨシッ!
強力粉ヨシッ!
スクワットヨシッ!
バターヨシッ!
おまえにヨシッ!
俺にヨシッ!
んー、ヨシッ!
筋トレってアレだ、やってるとほら、だんだん楽しくなってくる。オヤジもいつしかニッコリ、動きにもキレが出始めた。
セィ!セィ!
そしてオヤジの洗練されたキレのある動きは、徐々に伝説の現場猫のポーズに近づきつつあった。
タマゴヨシッ! ビシッ!
塩ヨシッ! ビシッ!
バットヨシッ! ビシッ!
オーブンヨシッ! ボキッ!
オヤジの指は折れた。
利き手の指を折ったオヤジは、あまりの痛みに床を転げ回り、釣り上げられた魚みたいに体を跳ね飛ばし回った。大人なのに声をあげて泣いた。
「島根はなんて恐ろしいとこなんだ!」
すべてを島根のせいにした。
ホァンホァンホァン・・・回想終わり
「ウッ・・・くそッ・・・島根ェ・・・」
オヤジは呪うようにつぶやいた。思い出したらまた悲しくなって涙が出た。鼻水も出た。
そんなオヤジをネコは見てた。
そして眉間にシワを寄せ、スッと立ち上がり、オヤジに近づき、肩に手を乗せて言った。
「話は大体わかった。私が手を貸そう」
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はーとヨシっ!