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『群青色の心中』〜貴方となら海の底まで〜
第6話 『幸せな日々はあっという間に。』
『夕方ね……そろそろ帰らないと。』
『あぁ。』
本当ならずっとここに居たい。ボスキと2人きりでずっと…。
私は砂場から立ち上がる。
『帰りましょうか、ボスキ。』
『そうだな。』
馬車に戻り、屋敷へと帰路へ着く。
『ただいま戻りました。お父様。』
『おかえり、メリア。どうだった?』
『有意義な休暇でした。』
『それは良かった。明日は真面目に稽古に励むんだぞ。』
『はい。お父様。』
お父様に頭を下げる。
次の日。
ヒヒーンっ!ブルルッ🐴
『はぁ、はぁ…っ!前よりは乗りこなせてるかしら。』
『はい、お嬢様も上達しましたね。』
『貴方の教え方がいいのよ、ソウマ。』
『お褒め頂き光栄です。でも、不思議です。』
『何が?』
『嫌っていたお稽古を逃げずに真面目に取り組むなんて…どんな心境の変化です?』
ソウマはじっと私を見つめる。赤く光る瞳に見詰められてつい身構える。
『もしかして…担当執事のボスキ・アリーナスガ原因ですか?』
『……そうよ。彼の主として相応しい主になりたいだけ。私の事を疑ってるの?』
『いえ、ただの忠告です。お嬢様の知っての通り、貴族と平民の恋は禁止です。ましてや主人と従者だなんて身分違いにも程があります。間違いがあってはいけませんよ。貴族の娘として。』
まるで、全てを知っているかのような瞳だった。敢えて黙っているのか、私を試しているのかは分からない。
稽古が終わり、屋敷へと戻る。
『今日は馬を乗りこなせた…次はもう少し早く走ってもいいわね。』
私はメモに今日の反省を書いた。
コンコンッ。ガチャ。
『お疲れ様、主様。お菓子を持ってきたぞ。』
『ありがとう、ちょうどお腹が空いてたから。』
『タイミング良かったな。はい。』
『いただきます。ん、美味しい。』
幸せだな……。ずっとこのままで居られたらどれだけ幸せか。
『ねぇ、ボスキ。』
『ん?』
幸せのあまりつい口にしてしまいそうだ。
『…ううん。なんでもないの。』
『ふっ。なんだよそれ。』
ボスキのことを困らせたくない。
伝えたら楽になるけど、苦しめることにも繋がるかもしれない。今はこの関係のままでいたい。だけど。言葉で伝えられないのなら――。
私はボスキのネクタイを引っ張り、キスをする。
『っ、おい、主様…っ。』
『…男性の誘い方…。応用したのよ。
ちゃんと出来てる?』
『……充分過ぎるだろ――。』
元々好きな人に何をされても俺は嬉しいから理性なんてぐちゃぐちゃだ。
主様を引き寄せて自らキスをする。
『ん…っ。』
甘いキスを交わす。お互いの呼吸を…吐息を奪うように。
離れたくない――。
お互い同じ気持ちになる。
『『ねぇ\なぁ。ボスキ\主様
私\俺。ボスキのことが\主様のことが』』
伝えようとした、その時だった。
ガチャッ!
『『!!』』
『忠告したはずですよ。ボスキ・アリーナス。』
『ソウマ…っ。いつから…っ!!』
『やはり怪しいとは思ってました。最初から
これが目的だったんですね。お嬢様。稽古に真面目に取り組むようになったのも。私と旦那様を欺く為ですか。』
『っ……。』
『お嬢様。この事は旦那様に報告します。ボスキ・アリーナス。お前の処分も覚悟しておいて下さい。』
夜。食堂。
バシンっ!ドサッ!
お父様に頬を叩かれる。
『っ…!』
『お嬢様っ!!』
マルメロが私の傍に寄る。
『旦那様、いくらなんでもお嬢様を叩くなんて…っ!!』
『黙れ!飼い犬に手を噛まれた気分だ……メリア。私を欺いていたなんて。』
『……。マルメロ、下がりなさい。貴方まで罰を受けることになるわ。』
『でも…っ!』
『マルメロ。貴方は知ってたんですか?』
『っ、私は……。』
『…お父様。マルメロは関係ありません。何も知りません。これは、私の独断。お父様に逆らったのは私だけです。ボスキもそう。主である私の命令に逆らえなかっただけです。 』
『お嬢様…っ。』
『飼い犬に手を噛まれた…ですか。やはりお父様は私のことを娘なんて思ってない。ただの言いなりなんですね。私は……。お父様の敷いた道には歩まない。好きな人も、結婚する相手も全部、自分で決める!!』
『……私の教育が甘かったようだ。一から叩き直してやる。』
私はメリアを拘束させる。
『反省するまで牢屋から出すな。』
『いやっ!離して!!助けて、ボスキ…っ!』
『お前の執事なら明日ここから追い出す。もう二度とお前の前には現れない。』
『……お父様は、私の欲しいものを全て奪うんですね。』
私はギリッと唇を噛み締める。
『極刑じゃないだけ感謝して欲しいくらいだな。』
『…分かりました。お父様。私はどれだけでも罰を受けます。だから、ボスキは今まで通りここに置いてください。これから先、お父様に私は逆らわない。お父様の望むような娘になります。ボスキを傷付けたら私はそのまま舌を噛んで死にます。』
『……っ。』
『困りますよね。跡継ぎが埋めなくなったら。私が死ねば子は成せない。今のうちですよ。これは脅しじゃなく…娘としての我儘です。』
『……ボスキの代わりにお前が罰を受けるというのか。』
『えぇ。貴族として相応の罰を私に与えてください。』
『お嬢様…。』
『……ソウマ。ボスキを牢屋から出せ。
メリアはしばらく牢屋に閉じ込める。食事を随一届け、お前が監視しろ。牢屋の中でも稽古を怠らせるな。』
『かしこまりました。旦那様。』
あぁ……幸せな日々はあっという間に朽ちていく。なんて残酷なんだろう。
次回
第7話 『まるで、感情のない人形のよう。』
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