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『群青色の心中』〜貴方となら海の底まで〜
第7話 『まるで、感情のない人形のよう。』
『は……?主様が俺の代わりに…?』
『はい……。ボスキさんを牢屋から出す代わりにお嬢様は牢屋に…。』
『っ、くそ…っ!』
俺は部屋から出ようとする。
『ダメです!ボスキさん。』
その手を掴んで止める。
『貴方が行ったら逆効果です。余計に旦那様の機嫌を逆撫でしてしまいます。』
『っ…ふざけんなよ…っ。俺は、主様の為ならどんな罰でも受けた。それなのに、なんで俺のために――それに…っ。』
あの時俺に…伝えようとしてたのは――っ。
俺はギュッと拳を握り締めた。
牢屋にて。
『……ごめんね。ボスキ。私が出来るのはこれくらいで。』
ボスキは牢屋から出られて暫くは屋敷から離れた所で謹慎処分となったが、それが終わったら屋敷へ戻ってこれるらしい。以前のようにはいかなくとも、また執事として屋敷にはいられる。
(良かった。ボスキは私が守る。お父様なんかの思い通りになんかならない。)
『ボスキ…あの時、なんて伝えようとしてたのかな。』
私は部屋の隅に座り込みそう呟く。
『好きだって…伝えられそうだったのになぁ…う、うぅ…っ。』
ボスキもあの時私に伝えようとしてくれたのに。
『言えなかった…っ。ボスキ、ボスキ……っ。』
私は誰もいない静かな場所で静かに涙を流す。
『…お嬢様。申し訳ございません。
でも。もう少し、もう少しだけご辛抱下さい。私が必ず、貴方をお守り致します。』
牢屋に閉じ込められ、月日は流れる。
毎日のように監視される日々。
地獄のような稽古。
時間だけは無情に過ぎていく。
そして、いつの間にか3ヶ月という時が過ぎた。
『ボスキさん…。今日はお嬢様が牢屋から出られる日ですよ。会いに行かれないのですか?』
『……もう、いいんだ。俺が主様に迷惑をかけたんだ。合わせる顔がねぇよ。』
『っ……。』
ガチャッ。ガシャンッ…。
『…お嬢様。旦那様からの伝言です。充分反省なさってるようなので出られますよ。』
『……。』
『お嬢様?』
『…クスッ。えぇ。』
私はスっと立ち上がる。
コツコツ……。
牢屋を出て自分の部屋へと向かう。
『っ、お嬢様……!良かった、ご無事、で…。お嬢様……? 』
お嬢様の海を移したような淡い水色の瞳が暗く、澱んでいた。まるで……感情のない人形のような、そんな瞳。ガラス玉をはめ込んだ様な…。
『おはようございます。マルメロ。』
『っ……!』
『これからはちゃんとします。貴族の娘として。この家の為に。お父様に逆らうなんて以前の私はなんて愚かだったのでしょう。』
『お嬢様…?』
『お腹が空きましたね…そろそろ朝ご飯ですか?』
『っ……なんで、お嬢様…っ。』
私はお嬢様の服を掴みその場に崩れ落ちる。
(なんて酷い…。お嬢様をこんな風にするなんて…っ。そうだ、ボスキさん、ボスキさんと会えば…。)
『っ、お嬢様、ボスキさんと――。』
と、その時ボスキさんが廊下を歩いてこちらに向かってくるのが見えた。
『ちょうど良かった、ボスキさん、お嬢様が…っ。』
『おはようございます、ボスキ。』
『……。はい。おはようございます。』
『そんな……っ。ボスキさん、このままでいいんですか、ボスキさん…っ!』
『騒ぐんじゃねぇよ。聞こえるだろ。』
『っ!』
『…主人の決めたことに従う。
それが…従者の役目だろ。』
コツコツ…。
『そんな……。』
あぁ、可哀想に。運命に引き裂かれた2人。
所詮は2人とも権力の傀儡になるしかない。
『ボソッ。このままでいいわけねぇだろ…くそっ。』
『っ、お嬢様、これ、これ覚えてないんですか?』
四葉のクローバーの宝石を見せる。
『お嬢様が私にくれた贈り物です。これも、これのことも忘れてしまったんですか?』
『…そんなことより、お腹が空きました。部屋まで持ってきてくださる?』
『…そんなことよりって…。お嬢様、本当に……っ。』
私は食堂へ歩く。
『…変わってしまったんですね、お嬢様――。』
食堂にて。
『……メリア。』
『はい、お父様。』
『反省したか?』
『……はい。以前の私は愚かでしたね。
でもご安心をお父様。私はもう以前の私ではありません。今まで以上にお家に貢献いたします。お父様に相応しい娘に。そして、お世継ぎを産むためにヤーラン様と結婚致します。事は早い方がいいですよね、今すぐ結婚式をあげませんか?』
『っ…。』
怖いくらい従順だ。お嬢様は。全身の血が凍るよう。
『お前が婚約できるのは18歳になったらだ。気が早い。』
『今が10月ですからあと半年ですか…
私の誕生日が待ち遠しいですね…。』
『……。』
『ところでお父様。私の担当執事はボスキのままですか?』
『いや、それは……』
『変えるなら変えても構いませんよ。
貴族が平民に恋することなんて有り得ませんし、以前の私ではないとお父様の目から見てお分かりでしょう?』
『……。』
冷たい瞳に見つめられゾクリと震える。
『お前がそういうのならそのままにしよう。』
『感謝致します。お父様。』
私は席を立つ。
『おい、どこへ行く。』
『え?何を仰ってるんですか?お稽古です。ご飯をゆっくり食べる暇があるならお稽古をしよと。昔からのお父様からの口癖ですよね?』
核心を突かれたようで胸が締め付けられた。
『そ、そうだな。』
『ソウマ。支度をしますね。』
『…はい。お嬢様。』
バタンッ。
『……。』
俺は主様を見つめる。
次回
第8話 『嫉妬でおかしくなりそう。』