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ルティに案内され食事を取ろうと小屋に移動すると、そこにはお頭であるジオラスと彼の妻らしき女性の姿があった。こぢんまりとした場所におれとルティの皿がすでに並べられ、食事の用意がされていた。
「お前、アック……だったか。ぼけっと突っ立ってないでそこに座れ」
「は、はい」
「シアちゃんもそこに座ってね」
「はいっ!」
どういうつもりか分からないものの、おれとルティは一緒に座ることに。食事をしながら尋問でもするつもりがあるのだろうか。
「はははっ! そう緊張するな。毒なんか入れてないぜ! 相方のアクセリナとお前の連れのその娘が作った料理だからな!」
「相方のアクセリナ? えっと、この娘は連れというか何というか」
「何だ、違うのか? 盗賊スキルを……と言っていたからてっきり――」
「あ、あぁ、そういう意味ならそれで」
ルティの特製かと思いきや豆スープと水、獣の干し肉が並べられている。地下都市だからなのか、それほどいいものを食べているわけではないようだ。
隣に座るルティを見ると、とにかく笑いが止まらないのか微笑みまくっている。何にせよ落ち着いて食事を取るのは久しぶりだ。
遠慮なく頂いた料理は結構美味しかった。そんな中、ジオラスが目を光らせておれに話を切り出す。
「……それで、アック。お前、本当は盗賊ではないだろう? もちろん単なる荷物持ちでも無い。違うか?」
出会った時からすでにバレていたようだ。それでも仲間にするということは、ジオラスにも何かの狙いがあった可能性がある。
「荷物持ちってのは本当ですよ。元、ですけどね。今は色々やってる冒険者ってところです」
「それは面白いな。ついでに言うと見たところお前は魔法が使える。そうだろ?」
「……一応は」
何気ないふりをしながら、人のことを観察して見極めていたようだ。その辺はさすが盗賊のリーダーといったところか。
「魔法が使えるのならこの辺の魔物……もちろん、冒険者の相手も出来るよな?」
「強さの度合いにもよりますけどね。何かやりたいことでも?」
「あいつらとは別の仕事になるが、お前に頼みたいことがある。お前ならやれるはずだ」
てっきり昼間の冒険者を襲って直接武器を盗んで来い。と、言われるとばかり思っていた。だが全然違うようだ。
「何です?」
「魔物を狩りつつ、冒険者パーティーにいるとある剣士を探してもらいたい」
「剣士?」
「それには当然ながら危険がつきものだ。そこで、お前にはアクセリナをつける。もちろんそこにいる娘も連れていけ! もっとも、彼女は盗賊というより回復可能なドワーフのようだが?」
ルティのことまで見抜かれていた。この男の実力は相当ありそうだ。
「それはいいですが、剣士と言われてもどうやって見分ければ?」
「元剣士と言うべきか。実はそいつは俺の弟なんだ。弟を探して連れて来てくれないか? 弟の名はデミリスだ」
「弟ですか。彼の特徴は……?」
ここを通る冒険者パーティーがどれほどいるのだろうか。魔物の強さも知らないし思っているより楽な仕事では無さそうだ。
「それなんですけど、アック様に似ているみたいです~!」
「ん? 何で知ってるんだ……」
「シアちゃんの相方があなたですね? 私は回復士アクセリナ。優しさがあり、それでいてやる時はやる! そんな力の持ち主な所が似ています」
自分が優しいかどうかは何とも言えない。
「……なるほど。あなたも同行するというわけですか?」
「シアちゃんは魔法が苦手のようですし、私がいれば問題は無いかと」
「はぅ~ごめんなさいです」
ルティの回復手段はお手製ドリンク一択。万人に効くかは不明だが、効きすぎるのが難点になる。念の為だが二人の強さを確かめてみることにするか。
【ジオラス・ルダン 盗賊/剣士 Lv.90】
【アクセリナ・ルダン 回復士 Lv.80】
【ルティシア・テクス 従順なルティ Lv.???】
何故かルティの強さまで見えてしまった。しかもまた称号が変わっている。ルティのレベルが変動しまくりなのか、数字は見えなくなっているようだ。見たところ盗賊の頭領と相方の強さはその辺の冒険者より実力がありそう。
そうなると、後は外に存在する魔物の強さが気になる所だ。
「アック。どうだ、やってくれるか? 無事に弟を見つけここへ連れて来た時は盗賊のことを詳しく教えてやるぞ!」
「弟さんがこちらを敵とみなした場合は?」
「問題ない。剣士として未熟な奴だ。魔法には弱いし、どうすることも出来ないだろうな」
「やる分には問題ないですが、同行するのはアクセリナさんだけですか?」
「そうだ。お前も気付いての通り、ここにいる者たちは盗賊とその家族だけだ。お前のように実力を隠している奴はいない。冒険者の武器を盗れても戦える奴はいないわけだ」
盗賊と言うわりにはしょぼい仕事をしているからそうだろうと思っていた。だがここでジオラスの頼みを聞いて弟を探せば、借りは作れそうだ。冒険者パーティーと戦うことになっても負けることは無いし、素直にやってみることにする。
「わたしも頑張りますよ~!」
ルティもやる気を見せているようだし、
「やりますよ、弟さん探し」
「すまんな、俺はここを離れられないのでな。あいつらにも伝えておく。明朝にでもよろしく頼む!」
「分かりました」