コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
おれとルティはレイウルムの隠し出口で待機している。その合間にアクセリナは、ジオラスとしばらく話をしていた。その間、外から戻って来た盗賊の男たちからは励ましの言葉が飛んでくる。
「お頭の為に頑張れよ! あ、そうだ! 汚れがついてるんだが、盗ってきた防具はいるか?」
「いえいえ、お気持ちだけで!」
「そうか。見たところ随分軽装だが、くたばんじゃねえぞ?」
「気を付けます」
さすがに誰か分からない冒険者の装備を着る気にはなれない。
とはいえ、言われてみれば今身に着けている装備はミスリルブーツに布のシャツだけ。危険な魔物がいると聞いていたのにもかかわらず、うっかりしていた。とりあえずアクセリナが合流する前にガチャを引いて装備を整えることにする。
腰袋に手を突っ込むのも久しぶりだが――いいモノが出てくれるだろうか?
「ルティ。もしアクセリナの姿が見えたら、その辺で足止めしておいてくれ」
「あっ! ガチャをされるんですね? 分かりましたっ!」
実はかなりの間、ガチャをしていない。
(レアは確定されると思うが、劣化するなんてことはないよな?)
今ある魔石は、聖女エドラとスキュラの戦いで失った魔石を除いて五枚ほど残っている。それらを片手で重ね合わせ、地面に投げてみた。
【Lレア 錆びた片手剣 Lv.–】
【Lレア 忘れ去られたアーマー Lv.–】
【Lレア 忘れ去られたガントレット Lv.–】
【SSSレア 忘れ去られたトラウザー Lv.350】
【Uレア ???をテイマー出来る】
予想した通り、劣化していると言ってもおかしくないものばかりが出た。Lレアなのに錆びてるし、防御力が無さそうな装備ばかりだ。もしや呪い装備なのでは無いだろうか。しかもよく分からないのをテイマー出来るというのも明らかにおかしい。
出た以上仕方が無いので、出た防具を身に着けることに。もっとも、これでは戦えないに等しいと言えるかもしれない。
そうこうしているうちにルティと一緒にアクセリナが外に出て来た。二人はおれの装備が変わっていることに気付き、唖然としている。
「はわぁぁ……しゅ、出発しますです」
「で、ではアックさんも行きましょう!」
ルティも明らかに言葉を失っていたので、おれは何も言わず進むことにした。
レイウルム半島の道は片側に海があり、逃げ場が限られている。見渡す限りの砂地に僅かな草地が広がっていて、その背後に少しばかりの森林があった。
これからやるのはジオラスから頼まれた弟探しだ。話によれば剣士の弟は冒険者パーティーに入っている可能性が高いらしい。
広範囲スキャンを発動させると、王国に向けて進む集団をすぐに探知する。アクセリナの話では王国から戻って来るパーティーにいる確率が高いようだ。それを踏まえ、おれたちは王国に向かって歩き出す。
「そっちに行ったぞ、ルティ!」
「は、はいっ! とぉぉぉぅりぃゃぁああああああ!! あひゃあぁぁぁぁ!?」
「ヒ、ヒール!!」
「ほへえええ」
何とも愉快な掛け声に合わせ、アクセリナの回復がルティに注がれていく。ルティは拳一つで砂地のサソリに重い一撃を与えている。それだけでも大したものだが、森林にひそむマンティコアに対しても同様だった。
本来ならおれが先導して行く手を阻む魔物を倒すべきなのだが――
「アック様は後ろからゆっくりついて来てくださいっ!」
「あ、あぁ」
「ルティちゃんはご主人様にいい所を見せたいんですよ、きっとね」
「いや、アクセリナまでそれを言うのは……」
「そうそう、気軽にセリナと呼んでくださいね! ……ともかく、見ていてスッキリするくらい強いんですもの。ルティちゃんのことを温かく見守ってはいかがですか?」
盗賊ジオラスの相方である回復士アクセリナには本当の名前を打ち明けた。たとえ一時的だとしても同じパーティーを組む仲間に違いないからだ。
「なるほど、ルティシアのシアちゃん改めルティちゃんですね。では、私のこともセリナとお呼びください」
彼女を回復士として同行させているが、当初はアクセリナの力を使わせるつもりは無かった。それというのも、ルティ特製の万能ドリンクの存在が大きいからだった。
「アック様。辛抱してくださいね! わたし、頑張りますから!!」
「はは、頼もしいな」