叶と剣持が付き合う話。
⚠︎︎叶視点
0:03
目の前でもちさんがなにやらスマホをいじっている。
もうとっくに終電はすぎていた。
なりゆきで遅くなってしまったもちさんに、また泊まってく?と聞くと案の定、うん、と返ってくる。
最近は特に入り浸っているので、どんどん僕の部屋にもちさんのものが増えていってる。
みゃのパペットとか木刀とかパジャマとか。
昔なら嫌と感じていたかもしれないが、不思議と今はそれが心地よいと感じている。
これが愛情なのかもしれない。
そんなピンク色な気持ちを自覚すると、突然目の前の彼の肩が華奢に思えてきた。
ほんとのもちもちハリネズミみたいだ。
「もちさ〜ん、僕の家まで来て、なんでゲームしちゃうのー」
するりと腕を伸ばして触りながら尋ねると、彼のスマホをいじっていた手が止まり、こちらを振り向いてくれる。
「やめて、くすぐったい」
むすっとした表情でこちらを見ているが、すでに彼の耳はゆでダコみたいに赤くなっていた。
やれやれ、表情だけ取り繕ってんの、バレバレなんだよな。
たまらなく愛しく思えて両手を首にまわす。
ぎゅーっと抱きしめていると抵抗することも無く抱き締め返してくれる。
「………あのさ、」
しばらくしてからゆっくり口を開く。
「ずっと思ってたんだけど、、」
すんなり切り出せたことに自分自身びっくりしていると
「ん?なに?」
と、不思議そうなもちさんの声が耳元で聞こえた。
2人きりの空間が時を奪う。
もし断られたらどうしよう。そんなつまらない懸念が立ちはだかって今の今まで言い出せなかった。
でも、彼の小さな身体を感じるとどうしようもなく一緒にいたくなる。
「………同棲しよ」
小声で吐き出すように呟いた。
もし聞こえてなかったら、と後悔した。だけどそれはそれでいいと思えた。そもそも、今こうしていられること自体が、奇跡なのだから。
しばらく気の張った、静かな時間が流れる。顔が見えないので、彼がいま何を考えているのかわからない。嬉しがっているのか、嫌がっているのか、はたまた聞こえていなかったのか。
だが、もう1回言えるほどの勇気がでず、彼の応答を静かに待つ。
何分たったかわからない。
「……っ」
耳元で鼻をすする音がした。びっくりして体を話すと、そこには今にも泣きそうな剣持刀也の姿があった。
「ごめん、嫌だったよね、、ごめん、」
泣かせてしまった。最愛の人を。今一番笑顔でいてほしい人を。やっぱり、こんな僕じゃ。。。
そう、絶望していた。その時、
「かなえくん違うの、」
「僕も、いっしょに住みたい、です」
それは、彼がいつも配信で出してるような凛とした声ではなく、鼻がつまった、ぐずぐずの声だった。
だけど、その言葉の中にはしっかりと重みのあるなにかがあって、それこそが、ずっとぼくが求めていたものだと悟った。
「ほんとに、? 」
「うん、」
鼻をならしながら話す君。僕もいつのまにか泣いていたようで声が震えてる。
「ぼく、かなえくんと、一緒に住みたい。」
もちさんが続ける。
一体なにが起こっているのか分からなくなりそうだった。ぼくは夢でも見ているのか。
いや、ちゃんと現実だ。何百回も思い描いた世界がすぐそこに待っている。あとすこし勇気を出した向こう側の世界に。
「………もちさん、あのね、ほんとに、大好きです。順番、絶対おかしいし、頼りないぼくかもしれないけど、、、よかったら、僕と付き合ってください。」
涙で、きらきらひかる彼の目を見つめる。
「っ……………はい!」
涙を袖にうつしながら、もちさんは笑顔で笑っていた。どうしようもなく愛しくなってしまって、思わず抱きしめる。
そこに彼がいることを確かめながら。
Fin.
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