テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
第十二章、戦慄するような緊迫感でした。米軍E-2Dが何も見えない焦りと、ナシル軍EB3が高みから全てを見透かす対比が巧みで、思わず息を止めて読みました。高高度からの奇襲とマッハ6の爆弾――常識を覆す攻撃に、米軍の"必勝"の空気が一瞬で揺らぐさまが克明でした。最後の「こんなことで沈む国ではなかった」には、苦くも確かな敬意が滲んでいて、余韻が深いです。ウーパールーパーさんの戦場を描く視線がとても好きです。
第十二章 海戦Ⅰ《2025年9月4日―明朝5時30分》
少し早い寒さが来るこの時間、再編を終えた米海軍の第2、第10空母打撃群を統合した連合艦隊が北大西洋に展開していた。
だがこの海域は歓迎してくれることはなかった。
深い霧、冷ややかな海面…視界は数百メートル先も怪しく…艦橋からは僚艦の探照灯の光が薄すら見えるかどうかだった。
レーダーだけは淡々と周囲の様子を映し出していた。
《上空8000メートル米海軍の早期警戒管制機E2Dホーク・アイ》
低く暗い雲海の上。
海上は深い霧に隙間なく埋められていて、
上空から肉眼で海面を見ることは不可能だった
だがE2Dにとってそんな事は問題無い
機体上部に搭載された巨大な円盤状のレーダー
その高性能なレーダーは数百キロメートル先の空を、そして海を見ていた。
しかし…E2Dのレーダーには米国艦艇しか映らなかった
オペレーターは何度もレーダー画面を確認した。
「……おかしい」
隣の管制員が顔を向ける。
「何がだ?」
「この海域には、敵艦隊がいるはず…なのに…」
画面上には味方艦艇を示す光点が規則正しく並んでいる。
空母。 巡洋艦。 駆逐艦。 補給艦。
だが――
その周囲には、何もない。
「おかしいな。
ステルス艦艇でも持っているのか?」
誰かが否定した
「いやそれはないだろう、一隻ならまだしもナシルは艦隊で来るはずだ」
E-2DのAN/APY-9レーダーは、遠距離の航空目標だけではなく、海上目標の監視も可能だ。
それほど強力なセンサーが何も捉えていない。
「衛星の情報は?」
「雲のせいで光学画像は使用不可能です」
「赤外線カメラはどうだ」
「雲が断熱材になっているため、見えません!」
報告を聞いた管制員は黙り込んだ。
通常なら、どれか一つは引っかかる。
レーダー。 衛星。 赤外線。 通信傍受。
《巨大な艦隊》が移動しているなら、完全に痕跡を消すことなど不可能だ。
「……艦隊司令部へ報告」
機長が静かに口を開く。
「内容は?」
オペレーターが振り返る。
数秒の沈黙
そして
「ナシル艦隊、現在位置不明」
その言葉が機内に落ちた。
「……不明?」
「はい」
「我々のレーダーが?」
「捕捉できません」
E-2Dの乗員たちは知っていた。
この機体は、ただの監視機ではない。
空母打撃群の目だ。
今まではその目としての責務を果たせていた…
だが、その目は今…
何も見えていない。
《ナシル空軍所属早期警戒管制機EB3》
上空26000メートル。
雲のはるか上、ダークブルーの空
静かな機内には複数のオペレーターが並んでいた
そのうちの1人が言った
「どうやら敵さん…」
オペレーターの大半が耳を傾ける
彼は続けた。
「自分たちは《狩る側》と思ってるみたいだな」
隣の管制官が呟く。
「無理もないさ」
「相手は天下の米海軍の空母打撃群だからな」
管制官は呟いた
「まあ…この高度からは大体600キロメートル先まで見れる目があるからな」
別の管制官が
「一つ一つは小さくても、集まれば存在感があるものだ…」
管制官はレーダー画面を見つめながら呟いた。
そこには、数百キロ先に展開する米海軍の艦隊が映っていた。
巨大な空母。 それを守る巡洋艦。 幾重にも配置された駆逐艦。 補給艦。
一つの都市が海を移動しているような光景。
「……確かに、世界最大級の海軍だ」
別のオペレーターが言う。
「普通なら、この艦隊を見た瞬間に相手は諦めるだろうな」
「普通なら?」
「そうだ、普通なら」
EB3の巨大なレーダー画面には、敵艦隊の位置情報が次々と更新されていく。
距離。 速度。 敵艦隊の推定針路。 艦種推定。
全てが表示されていた。
「相手は我々が見えていないと思っている」
「だが…アイツらは航空機には高度が大切なのを理解していない」
「E2Dはたしかに優秀だ…だが、低すぎたな」
「いくら優れていても…地の利が常につきまとってくるんだ…所詮運用方法によるものだ」
パイロットはそう…呟いた
「何度見てもアメリカの空母打撃群の輪形陣は美しいな…」
管制官がそう言った。
EB3のレーダー画面には、規則正しく配置された艦隊、中心には巨大な空母
その周囲を取り囲む、イージス巡洋艦…そしてイージス駆逐艦。
何層にも重なる輪形陣の防空に隙間などなかった
「全方位の侵入を拒んでるな…」
レーダー画面を見つめる管制官の声には、わずかな感嘆が混じっていた。
空母を中心に展開する艦艇群。
前衛。 中衛。 後衛。
それぞれが役割を持ち、互いの死角を補うように配置されている。
まるで巨大な要塞が、海の上を移動しているようだった。
「これが……空母打撃群か」
若いオペレーターが呟く。
「そうだ」
隣の管制官が答える。
「数十年かけて完成された、アメリカ海軍の象徴だ」
レーダー画面には、無数の光点が規則正しく並んでいる。
護衛艦艇。 航空機。 哨戒機。 補給艦。
一つの艦隊ではない。
一つのシステムだった。
「正面から挑めば?」
誰かが聞いた。
数秒の沈黙。
そして古参の管制官が答える。
「正面から、バカみたいに突っ込むのはバカがす
ることだ」
「だが上からならどうだ?」
「こちらスカイアイ、サラマンダー各機は高度22000から侵入、空母打撃群に一撃食らわせてやれ」
「サラマンダー了解」
「ボムズアウェイ」
サラマンダー隊4機それぞれが投下した500キロ誘導爆弾は吸い込まれるように空母へと近づいていった…
《米空母、CVN-69ドワイト・D・アイゼンハワー》
「……レーダーコンタクト!」
CICに警報音が響いた。
「方位は!?」
「……本艦直上です!」
一瞬、誰も理解できなかった。
通常、空母打撃群への接近は低空から来る。
地球の曲率、レーダー地平線、艦艇の探知能力。 敵機は海面すれすれを這うように接近してくる。
それが常識だった。
しかし――
今回の敵は違った。
「高度……確認!」
「……2万メートル以上!」
CICの空気が変わる。
「……嘘だろ?そんな高度から……?」
オペレーターが呟く。
「4機編隊……!」
「たった4機?」
オペレーターが画面を睨む。
だが次の報告で、その表情が変わった。
「……待ってください」
「敵機から複数の物体が分離!」
「数……16!」
沈黙。
「爆弾……?」
誰かが呟いた。
敵機本体ではない。
すでに投下された16発の誘導兵器。
それが高高度から、重力と速度を味方につけながら降下してくる
「投下機体…識別……不明」
艦隊防空システムが次々と反応する。
イージス艦。 戦闘機。 電子戦システム。
巨大な防衛網が目を覚ます。
「ミサイル迎撃は!?」
「だめです!!間に合いません!!」
「ええい!ならCIWSだ!CIWSを使え!!」
艦長の声がCICに響いた。
だが、オペレーターの表情は険しいままだった。
「艦長……」
「なんだ!」
「目標、高度……依然として高空を維持」
「……」
「接近速度から判断すると、投下済みの兵装です」
一瞬、沈黙が落ちる。
「……何?」
「敵機本体ではありません」
画面上。
4つの機影とは別に、複数の小さな反応が下降を開始していた。
「誘導爆弾……?」
誰かが呟く。
「こちらより上空から投下したのか……」
艦長はレーダー画面を睨む。
敵機ではなかった。
問題は……
すでに放たれた攻撃そのものだった。
「迎撃可能距離まで……」
「残り15秒」
CICの空気が一変する。
「各艦、近接防御システム起動!」
「ファランクス、交戦準備!」
艦隊を囲む護衛艦から次々とレーダーが反応する。
巨大な空母を守るために作られた、多層防空網。
その最後の盾。
CIWSの激しい音……
しかし……
「……速い」
オペレーターが呟く。
「落下速度が予想以上です」
《ナシル空軍 EB3》
「迎撃開始を確認」
オペレーターが報告する。
「当然だな」
管制官は静かに答えた。
「相手はアメリカ海軍だ」
「これくらいで動揺する相手ではない」
レーダー画面には、護衛艦から放たれる迎撃システムの反応が次々と表示されていた。
「……さすがだ」
別のオペレーターが呟く。
そう…攻撃を仕掛けたのはたった4機のFG.2であった…
「4機の侵入に対して、艦隊全体が一瞬で反応し
ている」
「新型の500キロ誘導爆弾は高高度からの投下時は落下中の最高速度がマッハ6にもなる…これを食らえばいくら空母打撃群であってもひとたまりもないさ…」
………
「艦長!!間に合いません…」
「そうか…我々はここが墓場みたいだ」
直後に激しい爆発と白い閃光
第2空母打撃群所属、巡洋艦フィリピン・シーの船体中央部に誘導爆弾が2発の誘導爆弾が命中
運動エネルギーと炸薬により船体中央部が折れ…轟沈した
そして同時にCVN-69ドワイト・D・アイゼンハワーにも複数の誘導爆弾が命中…
飛行甲板は損傷し、航空機の発着艦能力を失う…
「ふむ…沈められなかったか…」
そう言ったのはEB3の管制官
「どうします?もう一回落としますか?」
隣の管制官が言うと…
「いや…撤退だ…」
「ですが、まだ攻撃の余力は――」
「ある」
即答だった。
「だが、必要ない」
管制官は淡々と続ける。
「アメリカ海軍は、損傷したまま同じ戦術を繰り返す相手ではない」
「今頃、彼らは我々の攻撃方法を分析している」「アメリカもバカじゃない、損傷が大きいはずの第2空母打撃群を下げて第10空母打撃群のみで…我々の首を落としに来るはずだ…」
彼の国アメリカは負けた…
だが……
こんなことで沈む国ではなかった