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「じゃあね」
その言葉が落ちた瞬間、どうしようも無い程の焦燥感に駆られたのは何故だろうか。
引き止める事が正しいのか否か考える間もなく。
気が付けば、その手に触れていた。
「……………元貴?」
引き止められた張本人である若井は現状を理解出来ていないらしく。
いや理解出来るはずも無いんだけど。
「………あーー…」
上手な言い訳も思い浮かばず、掴んだままの手を離す事すら出来ずに言葉を濁す。
玄関まで来て何やってんの。ほんとに。
久しぶりに若井を部屋に呼んで、日も沈んで、今日はただ解散ってだけで。
それだけなのに どうしてもこの気持ちに抗えなかった。
全部素直に言うなら「帰したくない」。
素直に言えるなら、ね。
それでも この手を離して何でもない、と言うことだって容易くはない。
感情に任せすぎた故の行動を綺麗に誤魔化せる程余裕なくて。
この場で今抱えている気持ちを全部吐露してしまおうか、なんて考えに理性が揺れる。
上手くまとまらない思考に一度息を吐き出してから掴んでいた手を離す。
そのまま熱の浮かんだ頬を隠す様に若井の肩口に額を預けた。
「…ごめん、後少しだけ付き合って」
“後少しだけ”ってその間に何かしたいとか何か言いたいとか、そんなのがある訳じゃない。
なんの考えもないその場凌ぎな言葉だけど、ちゃんと本音ではある。
何か続けようと口を開く前に 背中にそっと手が触れた。
「何時間でもどーぞ」
そう返す若井の手つきが優しくて、全身の力がふっと抜けた。
感じる体温と距離感に指先が熱くなる。
腕を回してその身体を抱き寄せると、擽ったそうな笑い声が耳元を掠めた。
「…ありがと。やっぱ疲れてんのかも」
「そりゃそうよ。誰がどう見ても働きすぎだからね」
素直に気持ちを伝える事はまだ叶わなくて、疲れのせいにして理由を付けてみたり。
言い出したくて、でも言い出すことも出来なくて。
悟られないように態度を作っている反面、全部伝わってたらいいのに、とか。
とんでもない矛盾だけどさ。
「疲れてんならいつでも言いなね」
「言ったら何かしてくれるんだ?」
「してあげられるけどそこに期待する事あんまなくない?笑」
冗談めかして言ってみたけど、本当はどうしようも無いくらいに嬉しい。
そうやって自分を心配してくれるのが 自分の好きな人だったから。
諦めるのか伝えてしまうのか、どちらにも割り切れずにいた癖にこんな些細な一言で感情が溢れてしまう。
「じゃあ、さ」
低い鼓動は耳の奥に響いたまま 溢れた想いを言葉にする。
若井がそうやって言ってくれるんなら。
俺の知りたいこと、教えてくれる?
「…好きって言ったらどーすんの」
急に何で、って困るかもしれないし 良い意味でも悪い意味でも何も思わないかもしれない。
別にそんなのだっていいから、知りたい。
若井のこと、全部。
数秒の間があった後 小さく呟くようにして言葉が返ってくる。
「…どうだろね。分かんない」
何処か楽しそうな口調とは裏腹に その声色は冗談と言える程軽くなかった。
「分かんないから、言ってみて」
やっと更新出来ました(超土下座)
コメント
12件

たまらん🥹🥹🥹🥹

ぬおおおっ!!!若井ぃぃぃーっ!! な、な、な、何なんだっ!最後のセリフは!何なんだぁぁぁ!!クソっ……男前すぎて鼻血しか出ないじゃないかっ!! さあ!もっくん!言うんだ!早くっ!!早く好きって言ってべろちゅーの一つや二つやってくれ!!スライディング =͟͟͞ _|\○_土下座 あ、どうもっ、いちさんお久しぶりです♡(◜ᴗ◝ )
やばいです、しんどい😭😭😭😭🙏🙏🙏🙏