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桃赤
※nmmn ※stxxx
※なんでも大丈夫な方のみ
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
みなさんはどんな夏になりましたか?
俺は…
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
明るい太陽があたりを照らす。
なにもすることがなくて、
夏を感じるためにとりあえず海へ向かった。
電車に揺られること1時間半。
人は少なく、山が多い場所へ来た。
そこはかつて俺が住んでいた場所。そして思い出の場所。
少し歩くと道は開け、目が痛くなるような明るい砂と、目に優しい青色の海が広がった。
少し歩くと靴に砂が入ってきて、海だと改めて実感する。
懐かしさに浸っているとふわっと風が吹く。
あの頃の思い出が蘇る。
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
赤『ねーぇー!桃ちゃん!早くこっちきてよー!』
桃『もぉ、暑いんだもん…!』
赤『夏なんだから当たり前でしょ!!』
桃『そぉだけどさぁ…』
赤『ね!この海、桃ちゃんの目の色みたい!きれぃ…』
桃『そうか?海のほうがきれいだろ』
赤『どーこーがー?桃ちゃんの目のほうがきれい!俺桃ちゃんのことだーいすき!』
桃『っな、』
赤『ほら!こっちきてー!!』
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
赤『…ふふっ、』
あの頃を思い出していると笑みが溢れた。
一番楽しくて幸せな日々は、もうとっくに終わってる。それが現実。
今は社会に押しつぶされそうな毎日。
その苦しさを少しでも和らげるためにここに来た。
それなのに苦しくなってしまうのはなぜだろうか。
ああ、きっと…
『会いたくなっちゃったな、』
この気持ちのせいだろう。
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
これから先も桃ちゃんとずっと一緒に居られると思っていた。
放課後、家には帰らず桃ちゃんを連れ回したり、桃ちゃんの家に遊びに行くことばかりだった。
それは俺の家庭環境が悪かったから。そのことには小さいながら分かっていた。
けれど、とうとう最悪な事態が起こった。
両親の離婚。
それだけならまだ良かったのだが、どちらも俺を捨て、祖母のもとへ行くことになってしまった。
祖母の家は遠く、もうここには来れないんだろうなと思い、泣きじゃくった記憶がある。
俺は桃ちゃんに別れを言うのが嫌で、黙って別れてしまったことをずっと後悔していた。
そのことすらも、忘れようとしていたみたいだった。
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
色々と思い出していると随分と時間が経っていたようで、
「もう帰ろう。」
そう思い立ち上がると後ろから砂を踏む音が聞こえてきた。
それが彼だったら、なんて思いながら振り返った。
目の前には 先程見ていた青い海のようにきれいな瞳。桃色の髪はぶわっと吹いた風に乱され、そして微笑んでいる。
桃『赤、』
昔とは違う低い声で俺の名前を呼び、その瞬間暖かさに包まれる。
赤『桃、ちゃ…?』
桃『ふっ笑、全然変わってねぇ…』
赤『な、!?』
背中に回っていた手からは開放され、目と目が合う。
赤『む、桃ちゃんが変わりすぎなだけだし…』
桃『ま、そーかもな、笑』
桃『てか、なんでこんなとこにいんの?』
赤『えー…暇だったから、?』
赤『それこそ桃ちゃんはまだここらへんに住んでるの?』
桃『いや?全然。こんなとこじゃなんもないし。』
赤『へ〜、それもそうだね、笑』
なんて他愛のない話をしていたらあっという間にあたりは暗くなってきていた。
赤『もう帰らなきゃ、1時間半かかるんだよね、』
桃『そっか、』
赤『桃ちゃんは?大丈夫なの?』
桃『俺?俺は実家に泊まってるよ。』
赤『そっかぁ…ね、連絡先交換しよ!』
桃『…それしないでさ、次会えたらしようよ。』
赤『…え?』
桃『次も会えたらちょーエモくね?笑』
赤『次会えなかったら嫌じゃん!』
桃『どーせ俺の実家わかるだろ?そっから連絡しろよ笑』
赤『…たしかに、?』
赤『じゃあ、次会えたらね?』
桃『おう。』
赤『約束っ』
桃『約束な。』
『またね』
*𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯*
会いたい人に会えたこの夏は
“忘れられない夏”になった。
𝐸𝑁𝐷𓂃𓈒𓏸◌