テラーノベル
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本格的に部活が始まってから、私たちの日常は一変した。
私はスコアラーとして、遥は選手として、毎日クタクタになるまでテニスコートで過ごす。
ある日の放課後。突然の夕立に襲われ、私たちは慌てて部室棟の軒下に避難した。
「最悪……。予報じゃ晴れって言ってたのに」
私は濡れたジャージの袖を絞りながら、空を見上げた。凌先輩たちは、成瀬先輩の提案で早めに車で送ってもらったけれど、居残りで自主練をしていた私と遥は完全に取り残されてしまった。
「……これ、しばらく止まねーぞ」
遥はカバンを枕にして、コンクリートの床に座り込んだ。
薄暗い軒下。激しい雨音が周囲の音を遮断して、まるで世界に二人きりになったような錯覚に陥る。
「……ねえ、遥。なんであんなに必死に練習してるの? 凌先輩を超えるためだけ?」
ずっと気になっていたことを聞いてみた。遥は少し黙った後、雨のカーテンを見つめたまま口を開いた。
「……それだけじゃねーよ。お前こそ、いつまであいつのことばっか見てんだよ」
「えっ……?」
「……いや、なんでもねー。あいつに勝てば、お前が少しはマシなスコアラーになるかと思っただけだ」
遥はバツが悪そうに横を向いた。
いつもなら「何それ!」と言い返すところだけど、雨音のせいで少しだけ感傷的になっていた私は、そっと遥の隣に座り込んだ。
「……私ね、最近、遥のテニスを見るのも好きなんだ。凌先輩とは違うけど、なんか、目が離せないっていうか」
「……お前、それ……」
遥がこちらを向く。その瞳に、一瞬だけ熱い光が宿った。
でも、彼はその言葉を飲み込むように視線を雨へと戻し、小さく呟いた。
「……バカ紗南。そんなこと、無防備に言うんじゃねーよ」
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