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「えっと、学習スペースは、、、」
中央の階段を上がった左手にあるらしい。
学習スペースは思ったより広かったが、そのほとんどの席がすでに埋まっていた。
─みんなすごいな。
匡は感心しながら空いている席を探す。
「あの、良かったらここどうぞ。」
ひとりの女子がリュックを置いていた席を空けてくれた。
「あ、どうも。」
─同い年くらいか、、
チラッと横を見ると、ノートにぎっしりと問題が解いてあるのが見える。
匡はなんだか焦ってきてリュックから自分のノートを引っ張りだす。
2時間くらい座っていただろうか。
普段しないことをして、さすがに集中が切れてしまった匡は、休憩がてら図書館を散歩してみる。
─資料、趣味、歴史、日本文学、外国文学、、
図書館に来るのはもちろん、本を読むことすらほとんどない匡にはハードルが高そうなものばかりだ。
匡は本を手に取ることもなく2階を1周し終えた。
1階に下りてみると、”こども”と書かれてある部屋があった。
外から中を覗いてみると、小さな本棚がいっぱい並んでいて、床で読めるようにマットが敷いてあるのが見える。
全体的にポップでかわいらしい部屋に、高3男子が入るのは躊躇する。
─ここは何だろう。
こどもコーナーを通り過ぎた匡は隣の小さな部屋に気づく。
中には誰もいないようだ。
─ここも児童書かな、、
さっきの部屋の真新しい本たちと違い、部屋にある本はどれも読み込まれたあとがある。
どうやら古い児童書の書庫のようだ。
「あれ、、?」
匡は見たことのある名前を手に取って地べたに座った。
─懐かしい、、
どんな話かは忘れてしまっていたが、夢中で読んでいた事だけは覚えている。
匡はパラパラとページをめくってみる。
─そうだ、こんな話だった。
その本は、ある少年が夢の中で出会った少女と旅をするというストーリーだった。
小さい頃の匡は、この話が好きで何度も読み返していた。
ふと懐かしい記憶が蘇ってくる。
小2の夏休み。
乗れるようになったばかりの自転車で転んで足を骨折したことがあった。
友達と外に遊びに行くこともできなかった匡は、その夏休みをほとんどここで過ごした。
たしか、その時にこの本を教えてもらった。
─あれ、この本を勧めてくれたのって誰だったっけ、、、
最後までページをめくると1枚の紙が落ちてきた。
“今日は暑い。
暑いからかいつもより人が多いみたい。
だけどこの部屋には私以外誰もいない。”
きれいな字で書かれたこの紙は日記のようにも手紙のようにも見える。
一誰が書いたんだろ。
匡はそう思いながら、挟まっていた紙を元に戻して本を閉じた。