テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
スペースとオリキャラ達
猫塚ルイ

「……助ける?」
俺の問いかけに、壱馬は満足げに目を細めた。
「そう。息苦しいならもう戻らなくていいよ。俺ならもっと自由に、もっと楽しく君を愛してあげられる」
壱馬の腕が俺の肩に回される。
そのまま彼が手配したらしい車へと促された。
頭のどこかで「ダメだ」と警告音が鳴っているのに、玲於への怒りと疲れが判断を鈍らせる。
けれど、彼が俺を連れ込んだのは、高級ホテルのスイートルームだった。
ドアが閉まり、鍵がかけられた瞬間
壱馬の顔から「優しいお兄さん」の仮面が剥がれ落ちた。
「……さて。レオは今頃、GPSがここで止まってるのを見て、発狂してるだろうなぁ」
壱馬は俺をベッドに押し倒すと、ポケットから自分のスマホを取り出した。
カメラを俺に向け、その口角を醜く歪ませる。
「お前が俺の腕の中で泣き叫ぶ動画をレオに送りつけたら、あいつ、どんな顔するかな?絶望して死んじゃうかもね。くくっ」
「……っ、ふざけんな!!」
俺は必死に抵抗し、壱馬の胸を突き飛ばした。
こいつは俺を助ける気なんてさらさらない。
ただ、玲於を壊すための「道具」として俺を利用したいだけだ。
あんなに最低だと思っていた玲於の束縛さえ、こいつの純粋な悪意に比べれば
不器用なほどの愛だったのだと思い知らされる。
その時だった。
バコォン!! と、壊れんばかりの勢いでホテルのドアが蹴破られた。
「……霄」
そこに立っていたのは、肩で荒い息をつき、瞳を血走らせた玲於だった。
彼は迷うことなく壱馬に突っ込み、その顔面に拳を叩き込んだ。
「ははっ、早いお出ましじゃん……っ」
壱馬は口元の血を拭いながら笑ったが、玲於の殺気に押されたのか
舌打ちをして部屋を飛び出していった。
「またいつでも奪いに来るからさ」という不吉な言葉を残して。
静まり返った部屋。玲於は震える手で俺を抱き上げた。
「……ごめん。ごめん、霄くん…俺が、俺がもっとちゃんとしてれば……っ」
玲於は俺の胸に顔を埋め、子供のように泣き崩れた。
「あいつが…あいつが霄くん触ったと思うだけで、俺、自分が壊れそうで…もう、霄くんを外に出したくない。どこか誰も知らない場所に閉じ込めて、俺だけが見ていたいんだ……」
その告白は、完全に壊れてしまった男の末路だった。
でも。
俺は玲於の背中に腕を回し、その震えを鎮めるように強く抱きしめた。
こいつをこんなに壊したのは、あのクズ兄貴だ。
そして、こいつを直せるのは、きっと俺しかいない。
「…わかったって。どこにも行かないよ」
「霄くん……?」
「玲於の気が済むまで、束縛でも何でもしていいよ…俺、玲於の鎖なら、喜んで繋がれるから」
俺の言葉に、玲於が息を呑む。
俺たちは、もう普通の恋人には戻れないのかもしれない。
でも、この狂ったような執着の中にこそ
俺たちの真実があるのだと、俺は確信していた。