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ひとまず動けない三人を運ばないと、アレに追いつかれるのはまずい。
千壽ちゃんをおぶって、春千夜と武臣さんは両脇に抱えながらなんとか小屋に向かって歩き出す。
永子「お…重い…くそ」
三人も、しかもそのうち二人は大男なのもあってクッソ重い。
おばあちゃんなら余裕でもアタシは歩くだけで精一杯。
永子「男…二人…くらいは…歩けよ…!」
こんなことしてるうちに、恐ろしい気配が背後に迫ってくるのを感じる。
正直脇に抱えてる二人くらいは置いていきたい、けど見捨てたら何されるかわからんから無理。
春千夜「ぁ…あ、あ?…なんだ、これ」
武臣「ん、ぅ…は…?え、永子…?!」
やっと正気に戻った男二人を乱暴に降ろしてさっさと走らせる。
永子「早く走って!追っつかれたらただじゃ済まないよ!」
男二人もよろけながらなんとか走り出した。
やっと見えてきたボロ橋をダッシュで渡る。
すると、突然のどっかの縄がギチギチ…バチンッって音が鳴ってアタシが渡りきったときに一気に崩れてった。
一番後ろにいた春千夜は引き返して落下しんかったけど、武臣さんがもう少しってとこで足を踏み外した。
武臣「うわぁーーーー!!!」
永子「くっ…!掴まれぇ!!」
一歩遅かったら真っ逆さま、千壽ちゃんには申し訳ないけど落ち葉の地面に放って武臣さんの右袖を掴んだ。
千壽「いたぁっ!?…えっ?なに?!」
永子「千壽ちゃん!寝起きでごめんけど手伝って!落ちるーーー!!」
春千夜side
くそっ、どーすりゃいいんだ!?
川底に真っ逆さまにゃならなかったが、橋が壊れちまったせいで化け物がいる山ん中に閉じ込められちまった。
千壽「おーい…聞こえるかー?春兄ぃー!」
春千夜「聞こえてんぞー!どーすりゃいいんだー?」
橋を渡りきった永子、千壽、武臣は…まぁ色々あったっぽいけど無事そうだ。
永子「とりあえず!アタシは村に行って誰か呼んでくるー!」
永子が助けを呼びに行って、千壽と武臣はここで待っておくみてぇだ。
春千夜「…あれ?」
千壽「どうしたんだー春兄ぃー!」
そういえば、ここには生配信でずっと撮影してたっけ。
春千夜「おい!お前ぇらカメラとスマホもってっかー?!」
千壽「えっ?!ジブンはジブンのしか持ってないけどー!」
武臣「俺は車に置きっぱなしだー!」
やっべ!
配信したまま山ん中に落としちまったか?!
春千夜「落としちまったみてぇだー!取りに行ってくるわー!」
武臣「は?!何言ってんだやめとけ!!」
千壽「化け物見たんでしょ!そんなの探してる場合じゃないって!」
後ろから大声で止める二人を無視して、俺はさっきの場所までカメラとスマホを取りに戻った。
春千夜「…あった、配信は切れちまってるけど、壊れてはないな」
あの化け物と目が合った場所に落ちていた。
なぜか配信は終了してたけど、操作に問題はなかったから、気にしないようにした。
春千夜「さて、と…アイツが来る前に戻んねぇとな」
俺はスマホをポケットに入れ、その場を去ろうとした。
ふと、何処からか妙な声が聞こえてきた。
……………
……………
……………
…いつの間にか眠っちまってた。
目を開けると空はもうオレンジ色になり始めている。
春千夜(…なんで…俺…)
こんな場所で寝たことが思い出せない。
体が重く頭だけ起きると、目の前にヤツの白い足が見えた。
服も着てない毛も生えてない痩せたアイツは、またあの目で俺を見た。
春千夜「ぐあぁッ!!?あ”あ”あ”あ”…!?!?!? 」
死にたくなる、そんなことしか考えられねぇ
くそ…やべぇ…
春千夜(ダメだ…このまま……舌を噛み切っ…)
バシャッ!!
いきなり真後ろから水が飛ぶ音が聞こえた。
するとヤツに茶色の濁った液がかかっていた。
???「ぐぎぃぎゃあああああああああーーーーーーーーーーーー!!!!!」
化け物は顔をぐちゃぐちゃに覆いながら凄い速さで逃げた。
永子side
永子「ったく何やってんのよこのバカ」
頭から肥やしを被った化け物は逃げ、バカはへたり込みながらアタシの方に振り返った。
永子「村に助けを呼んで戻ってきたらアンタが機材取りに戻ってたって聞いて…ほんとバカじゃないの?!アタシが間に合わんかったら死んでたよ!」
村の人はここに近づきたくないからって、アタシはこのボトルに入った肥やしだけもらって引き返したら、コイツが山にまた戻ったって聞いてほんと呆れるやらイラつくやら…
反対側にもう一個の入り口がなかったら崖に降りて川を渡って登らないといけない羽目になってた。
春千夜「…!?クッセェ!?」
永子「はぁ、やっと気付いたか 」
春千夜「なんっだよこれ!?なんでこんなクセェんだ!」
永子「アレを追っ払うには糞尿が最適なのよ。だから村の農家の人からちょっと貰ってきた」
春千夜「はぁっ!?!?っざけんな俺にかかったらどーすんだよ?!!」
永子「だいったいアンタが戻んなかったらアタシが山を何時間も走んなくてすんだんだけど?!アンタが悪いんでしょーが!」
アタシらは武臣さんと千壽ちゃんが救助隊を連れてきてくれるまで口論してたみたい。
今回のことで武臣はもうホラーは懲り懲りだと言ってたし、千壽ちゃんももうこんなことしたくないみたいだった。
アレは…邪視は下半身に関する物、表現が弱点だけど、完全に退治できるわけじゃない。
あの山は、今後一切誰も入れないように隔離されたそうだ。