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結婚式の次の日。土曜日。起きたらもう14時、午後2時を回っていた。
よく寝た。よく寝過ぎたくらいだ。といっても体はどこか疲れている。寝過ぎて背骨が痛む。
「…イテテテ…」
背骨を摩りながら立ち上がり、洗面所へ向かう。歯を磨いて顔を洗…
「イテテテ」
うために背中を曲げるが、背骨が痛む。
今日は家で安静にしてよう
そう思った。冷蔵庫を開ける。一人暮らし、特に料理もしない独身男性の冷蔵庫。
食材の「し」の字もない。ビールビールビール。
そして申し訳程度の牛乳やカラシやわさびなどのチューブタイプの調味料類。
いつ、なぜ買ったかわからない豆腐があった。
「…豆腐…」
消費期限を見る。
「大丈夫」
冷凍室を開ける。冷気が漏れ出てくる。冷蔵室とは違い、冷凍室にはそこそこものが入っている。
冷凍食材は料理をしない一人暮らし、独身男性の大いなる味方である。
そこから小分けされた枝豆を取り出す。慣れた手つきで電子レンジに放り込み、温めスタート。
恐らく前回も豆腐のパッケージを切るために使われた以来の包丁で
また豆腐を覆うビニールを切る。中から水が溢れ出てくる。
プラスチックの容器中で豆腐を半分に切り、お皿に乗せる。
残りの豆腐は次の日の夜に食べようとそのまま冷蔵庫にしまった。
お皿に乗せた豆腐をさらに半分に切る。一応包丁を水洗いし
一人暮らしをするときに意気揚々と買った包丁スタンドに刺す。
「醤油…醤油…」
醤油すらどこにあるのやら。
そもそも醤油あったっけ?
と思う始末。探し、探し。結局灯台下暗し。電子レンジの横にあった。
醤油をかけ、冷蔵庫からチューブの生姜を出し、豆腐の上にちょこんと乗せる。
ピーッ、ピーッ、ピーッ。
「はいはいはい」
リビングのローテーブルに豆腐を乗せたお皿とお箸を置き
電子レンジに向かい、電子レンジのドアを開ける。
殻というか皮入れのためのお皿に、熱々の枝豆の袋を人差し指と親指でつまんで乗せる。
リビングのローテーブルの上に置く。もう15時、午後3時近く。
お昼ご飯をガッツリ食べると夜が食べられなくなるので、お昼ご飯は今目の前にあるこれだけ。
「あ。これ両方大豆か」
今気づいた。テレビをつけ
「いただきます」
と言ってお箸と豆腐の乗ったお皿を持つ。豆腐をお箸で一口分に切り崩し
生姜をつまんで乗せる。口へ運ぶ。豆腐の少しコッテリした感じと
醤油のしょっぱさを生姜がさっぱりさせてくれる。
「んん〜。夜」
めちゃくちゃ夜を感じる。お皿を置き、枝豆を手に取る。
「あっつ」
まだ熱い。口の中に入れ、ポコポコポコと中身だけを出す。
皮についた塩味と豆の風味が口の中で混ざる。美味い。リモコンでテレビ番組をザッピングする。
どこも面白い番組はやっていない。録画した番組を見ることにした。
「さあ始まりました、ほへとに百舌鳥でぇ〜す」
もう何度も繰り返して見ているので、内容、オチはわかってはいるが
何度見ても大笑いできる。大笑いしながら、おつまみのようなお昼ご飯を食べた。
「Oh!!my!! He’s heeeeereeeee!!」
ソファーが後ろに倒れる勢いではしゃぐ風天(ふうあ)。
「マジか!ポツリしないと」
別の団体に所属していた選手が
風天(ふうあ)の見ている世界最大のアメリカンプロレスの団体でデビューしたことを
ポツッターで投稿した。
「うわぁ〜マジか。最高かよ」
ピロン。通知が届く。
レオさんがいいねしました。
レオさんがリポツリしました。
万尋がいいねしました。
万尋がリポツリしました。
「お。レオさんとま…ひろ?さん?もユニバースかぁ?いいねぇ〜」
いいねとリポツリしてくれたレオさんや万尋さんのアカウントに飛んで
過去の投稿を眺めながら、引き続き、アメリカンプロレスを鑑賞した。
「タァ〜」
声と共にギターを弾く海綺(うき)。
「タァ〜ラァ〜ラァ〜」
ギターのポッカリ空いた穴、サウンドホールと呼ばれる穴にタオルを入れているので音は響かない。
「はぁ〜」
ギターの練習をしながら好きなアーティストさんのMyPipeチャンネルでミュージック・ビデオを見ていた。
海はゲームをして過ごしており、いい感じにお腹が空いたのでキッチンへ行く。
冷蔵庫の冷凍室を開いて冷凍食品を漁る。
「オムライス…なるほど。あり」
裏の温め方法を読みながらレンジで温めをスタートさせる。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、カップシュペリガリ。ビールを流し込む。
「っ…ふぅ〜…」
眠くなるような、逆に目が覚めるような不思議な感覚。温まるまでビールを飲みながらもう1マッチした。
意外と長引いて、マッチの最中に電子レンジが急かしてきた。
「いただきます」
スプーンでオムライスを掬う。最近の冷凍食品はよくできていて、少しトロッっとしている。
「あっつ。うんまっ」
美味かった。
「今宵のゲストはぁ〜?若者から絶大な人気を誇る音楽グループ
「Beautiruls」の皆さんでぇ〜す」
「誰」
呟きながらオムライスを食べる。
海の所属するコーポレートマーケティング部門では新たな顧客獲得はもちろん
長期的パートナーなど自社のイメージや価値の向上を目指すため
最近の流行りなどを知ることで、コラボなどをしたり
活用することができるので、流行りを知ることは重要となる。
「ビューティルルス?フルじゃねぇんだ」
スマホで検索エンジンHoogle(ホーグル)を起動して
検索欄に「ビューティルルス」とカタカナで入力して検索する。
「「Beautiruls」とは男女6人のボーカルユニット。
ユニット名の「Beautiruls」とは「Beautiful」と「Be U virus」を組み合わせた造語であり
「美しさの感染」といった意味を持つ。へぇ〜」
そのままMyPipeで曲を聴いてみようと思ったが
「今夜は番組の最後で最新曲である「この恋心、君に感染したらいいのに」を
ご披露してくださるということで」
という言葉が聞こえたので
「おもろいタイトル」
呟き、スマホをソファーの端に置いた。
そのままオムライスを食べ進め、番組を最後まで見て「Beautiruls」の最新曲を聴いた。
テレビサイズだったが気に入った。スマホでnyAmaZon(ニャマゾン) Musicのアプリを開いて
検索欄に「Beautiruls」と入れ、お気に入りに入れる。そして番組内で今気になっているアーティストさんや
憧れのアーティストさんはいらっしゃいますか?という質問に答えたメンバーの回答の
「Ring-Win-Ring」や「祭乃華」や「風ノ音」もお気に入りに入れておいた。
「ご馳走様でした」
キッチンへ行ってお皿とスプーンを洗う。一緒に持ってきたビールをキッチンで飲み干す。
ベコッっと凹ませ、缶ビール専門のゴミ袋に投げ入れる。
カランガランガランッ。先輩空き缶と後輩空き缶がぶつかる音が響く。
冷蔵庫を開いて新しい缶ビールを取り出す。冷蔵庫の扉が閉まる前にもうプルタブを開ける。
ジュルッ。飲み口から溢れた泡を吸う。リビングへ戻って引き続き、テレビを見る。
土曜9時のドラマが始まる。ドラマが始まると土曜の終わりを感じる。
しかし、それに抗うため、いつもなら深夜2時くらいまで映画を見たりしていたのだが
前日の結婚式の疲れがまだ残っているからか
襲ってきた眠気にあっさりと負け、ソファーで寝落ちしてしまった。