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おと
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#Mrs. GREEN APPLE🍏
こんぶ@ミセス推し
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kurara
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初めに少し喋るんですが、お話とは何も関係ありませぬ
アイコンを変えさせていただきました、混乱させてしまった皆様申し訳ないです🙇
うちに昔からいる子です☺️なんだかかっこいいポーズをしてたのでアイコンにしちゃいました🤭
ほんと可愛くて、写真のホルダーがミセスとこの子でいっぱいです🧸
昨夜はほとんど眠れなかった。
畳の匂いが漂う二階の和室で、何度も寝返りを打った。耳を澄ませば、遠くで川の水音が絶え間なく聞こえていた。七年前、幼い僕が涼ちゃんと一緒に裸足で飛び込み、冷たさに歓声を上げた、あの川。
窓の外はすっかり明けている。高原の朝は、東京のそれとはまるで違っていた。肌を刺すような重苦しい熱気はなく、代わりにどこか湿り気を帯んだ清涼な空気が、カーテンの隙間から部屋を満たしていた。
「元貴、朝ごはん。」
階段の下から母の声が響く。僕は重い体を起こし、顔を洗うために廊下へ出た。
洗面台の鏡に映る自分の顔を見る。七年前とはまるで違う。背は伸び、輪郭は削げ、声だって低くなった。けれど、内側にある泥のように重い感情だけは、あの頃の泣きじゃくっていた幼い僕のままだ。
「…若井滉斗。」
声に出してみると、胸の奥がチリリと痺れた。
昨日の夕方、涼ちゃんの家の庭で出会った少年。整った横顔と、どこか大人びた雰囲気を纏った同級生。
彼が涼ちゃんの隣に立っていた姿が、瞳の裏に焼きついて離れない。二人の間には、僕が踏み込めない、当たり前の空気みたいなものがが流れていた。
朝食の席で、味噌汁の湯気を眺めながら、それとなく祖母に問いかけた。祖母は、昔からここらに住んでいて、勿論涼ちゃん家族のこともよく知っていた。
「ねえ、おばあちゃん。…若井くんって子、知ってる?」
ふと箸を止めた祖母が、思い出したように頷いた。
「滉斗くんのこと? 知ってるよ。涼架くんの家のご近所でね、ずっと昔から涼架くんと一緒にいるの。あの子、すごくしっかりした子でね。涼架くんのお母さんからも、いつも感謝されてるよ。」
「…ずっと、一緒に?」
「ええ。涼架くん、小さいうちに大きな手術をしてね、その後からどうしても記憶が長続きしなくなっちゃって。元貴が東京に帰ったあとも、滉斗くんは毎日涼架くんの家に行って、声をかけて、一緒に学校に通って…。あの子がいたから、涼架くんも寂しくなかったかもねえ。」
祖母は何の気なしにそう言って、鮭の塩焼きに箸を伸ばした。喉の奥がキュッと縮こまる。
祖母の心底優しい、友達が寂しくなっていなくてよかったね、とでもいうような視線が今は痛かった。
あの子がいたから、寂しくなかった。
その言葉が、胸に冷たく突き刺さる。ごめんおばあちゃん。僕の中身は、そんな綺麗な感情じゃない。
僕が東京で、涼ちゃんは今頃どうしているだろう、とか、僕のことを忘れて泣いていないだろうかと、届くはずのない思いを馳せていた七年間。
僕の知らないその時間のすべてで、若井滉斗は隣にいたのだ。僕がなりたかった「一番近くにいる存在」として。
食後、僕は逃げるように親戚の家を飛び出した。
目的地なんて決めていなかったはずなのに、足は自然とあの坂線を描いていた。
坂道を登り切ると、あの家が見えてくる。七年前と変わらない、白いフェンスと小さな庭。
玄関の前に立ち、深く息を吐き出す。心臓がうるさいくらいに打ち鳴らされていた。チャイムを押す手が震える。
ピンポーン、と澄んだ音が響く。数秒の静寂の後、バタバタと軽い足音が近づいてきて、ドアが静かに開いた。
「はーい…あ、元貴!」
そこに立っていたのは、涼ちゃんだった。
昨日のTシャツ姿とは違い、薄いイエローのシャツを着ている。ふわふわとした髪が、朝の光を受けて柔らかく光っていた。
「おはよう、涼ちゃん。」
「うん、おはよう! ええと…お母さんなら今、裏の畑に行ってるよ?」
「ううん、おばさんに用があるんじゃないんだ。涼ちゃんに…会いに来た。」
「僕に?」
不思議そうに、でも嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、七年前のあの夏と何一つ変わっていなくて、胸が痛いくらいにしめつけられる。
やっぱり、僕を忘れていても、この笑顔だけは涼ちゃんのものだ。
「入って入って! 今、部屋で本読んでたんだ。」
促されるまま、靴を脱いで家に上がった。廊下を歩く間、胸の動悸は強くなる一方だった。
案内されたのは、一階の奥にある涼ちゃんの部屋。南向きの窓から温かな光が差し込み、木製の勉強机と、小さなベッドが置かれている。
かつて涼ちゃんの好きと言っていたキャラクターや漫画が、あちこちにちりばめられている。その変わらない部分が嬉しくて、切なかった。
「適当に座ってて。今、お茶淹れてくるね。」
涼ちゃんがパタパタと部屋を出ていく。一人残された後に、再び部屋の中を見回した。整頓された本棚、棚の上に飾られた小さな貝殻、
そしてーー勉強机の端に置かれた、一冊のノート。
僕の視線は、そこに吸い寄せられた。使い古されて、端が少し擦り切れて、ところどころ水でくにゃりと曲がってしまっている、小汚いノート。表紙には、幼い僕の拙い字で、こう書かれていた。
『なつ休みの日記 もとき・りょうか』
「…あ…。」
思わず声が漏れた。あのノートだ。七年前の夏、長野を去る最後の日に、半ば強引に、けれど祈るような思いで託した絵日記。
『僕のことを忘れても、これを見て思い出して』
そう言って渡した、涼ちゃんとの秘密の宝物。やっぱり、涼ちゃんは、これをまだ持っていてくれたんだ。
胸の奥で、カッと熱い火が灯る。やっぱり涼ちゃんは、どこかで僕との思い出を大切にしてくれていたんじゃないか。かつての僕の存在は、消えていなかったんじゃないか。
淡い期待と歓喜に震える手で、僕はノートに手を伸ばした。表紙をめくる。
最初のページには、僕が書いた下手くそな川とスイカの絵と、読めるかどうかギリギリの文字。
「はは、種飛びすぎだろ…。」
ページの端の端まで飛んだ涼ちゃんの種は、まるでかつての暑さまで持ってくるように鮮明に頭に描かれる。
二ページ目には、紙いっぱいの野原の絵。
三ページ目には、二人で見つけた、綺麗な石の絵。
クワガタも、花火も、向日葵も、…あの輝かしい夏の記憶が、鮮やかに蘇る。
ページをめくるたび、目頭が熱くなった。僕のあげた絵日記を、涼ちゃんは七年間、ずっと部屋の机の上に置いていてくれたのだ。
けれどーー
ページをめくっていくうちに、指先がピタリと止まった。
七年前の僕が書いた、最後のページ。『また ぜったいに あおうね』という僕の文字と、下手くそな二人の似顔絵。そこで僕の書き込みは終わっている。
だが、ノートはそのページでは終わっていなかった。
薄く見える次のページに書かれていたのは、僕の文字ではない。少し大人びた、けれど整った、別の誰かの筆跡。
嫌な鼓動とともに、次のページを開こうとした瞬間、
「元貴、お待たせ! 冷たい麦茶、持ってきたよ。」
パタパタという足音とともに、涼ちゃんが部屋に戻ってきた。トレーの上にグラスを二つ乗せて、嬉しそうに微笑んでいる。
僕は慌ててノートを閉じ、元の位置に戻した。手が冷たく痺れていた。
「あ…ありがとう、涼ちゃん。」
なんとか声を絞り出した。
涼ちゃんはグラスを机の上に置くと、僕が戻したノートに視線を落とした。そして、なんでもないことのように、柔らかく微笑んだ。
「あ、そのノート、見た? すごいでしょ。」
「…え?」
「それね、僕が小さい頃に、東京のお友達からもらった大切な日記なんだって。お母さんや滉斗が教えてくれたんだけどね。その子のこと、あんまり覚えてないんだけど…でも、すごく大切な宝物。」
涼ちゃんは愛おしそうにノートの表紙を撫でた。
「僕毎日いろんなことを忘れちゃうから、若井が、このノートの続きに、これからのことを全部書いたらって言ってくれたんだ。だから、毎日ここに忘れないうちに書くようにしてる。朝起きてこのノートを読むと、すごく安心するから。俺にも、こんなに優しい友達がいるんだって。」
無邪気に、透明な瞳でそう語る涼ちゃん。
その言葉の一つ一つが、刃となって僕の胸を削ぎ落としていく。
涼ちゃんは感謝しているのだ。「もときくん」が残したノートに。そしてそれを、涼ちゃんの宝物として引き継ぎ、日常を守り続けてくれた若井滉斗に。
そこには、何の悪意もない。
涼ちゃんを救っていたのは、間違いなくあのノートであり、その続きを共に過ごした若井の存在だった。嫉妬し、怒る理由なんてどこにもない。若井は涼ちゃんのために、僕にはできなかったことを七年間やり続けてくれたのだから。
でも…僕は、感謝なんてできない。大人ぶって、涼ちゃんを支えてくれてありがとう、なんて言えるわけがない。
僕の『特別』だったはずの場所。僕が涼ちゃんの心に刻んだはずの傷跡。そのすべてが、若井滉斗という存在によって、綺麗に、優しく、上書きされてしまっていた。
僕が東京で過ごした七年間は、何だったんだろう。
僕が長野を想って流した涙は、一体誰のためのものだったんだろう。
「元貴?どうしたの、顔色悪いよ?」
心配そうに顔を覗き込んでくる瞳には、相変わらず僕の影は映っていない。今の僕はきっと東京の「もときくん」でもない。
ただの「今日初めて会った、感じの良い親戚の友達」としての僕がいるだけだ。
「ううん…なんでもない。ちょっと、暑かったからかな。」
無理やり歪んだ笑顔を作り、差し出された麦茶を一口飲んだ。ガラスの冷たさが喉を通り抜けていく。
このノートを取り戻したい。
涼ちゃんの記憶を、僕の存在で埋め尽くしたい。
他のページなんて全部破り捨てて、僕の知っている、あの夏の涼ちゃんを取り戻したい。
ただそんな思いだけが、脳を溶いているようだった。
コメント
9件
更新ありがとうございます💕 2人だけが共有しているはずのひと夏の思い出のノートが、思いがけず『更新』されている事で、❤️君の気持ちの揺れ動きや苛立ちがすごくよく伝わって来て、この後どうなるんだろうって、ドキドキしました✨ お話の続きがますます楽しみです🥰
うわ、めっちゃ胸が苦しくなった…。主人公の「僕の特別だった場所が上書きされていく」感覚、すごくリアルに伝わってきた。ノートを宝物として大切にしている涼ちゃんの無邪気な笑顔と、それを見て嫉妬とやるせなさで押し潰されそうになる主人公の対比が刺さるわ。若井くんの存在が大きすぎて、主人公の七年間が虚しく思えてしまう気持ち、わかるよ…。続きが気になる!