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奏橙「あ、先輩。もう花火始まるっぽいですよ。」
この時間は、皆のザワザワとした声、夏祭りの夜の匂いのふたつが際立つ。
竜央「おぉ!もうそんな時間か。」
驚いたのか、少し瞳孔が小さくなる。
奏橙「そ、…うです、ね。なんか、寂しいですね。」
その姿に、少し照れた様で、少し言葉が詰まる。
竜央「なんか雰囲気あるな…静かにしてなきゃ行けない…って感じの。」
ひゅるる〜…と花火が打ち上がる直前の音が止まると、
パーンと音がなり、鮮やかな美しい光が出た瞬間、遅れて大きな音が鳴る。
この3秒に満たない時間を、まじまじと見つめる者、恋人とくっつきながら見てる者、スマホやカメラで撮影してる者など、色々な人がいた。
奏橙「…(この、雰囲気の中なら、先輩に好きという気持ち、伝えられるかな…。)」
竜央「花火、綺麗だな!思わず見入っちまうよ。…って、奏橙。どうした?」
奏橙「あ、いや…あの…(言え!言うんだろ!そのために、この夏祭りに来たんじゃないか!)」
少し息を吸う。
奏橙「…俺、先輩が…」
好き、と言おうとした瞬間。
ドンッ!と大きな花火が打ち上がり、精一杯の告白は、夏の美しさに打ち消された。
竜央「ん?なんか言ったか?」
奏橙「……いや、花火綺麗ですねって。」
少し悲しそうに眉を下げつつも、笑う。
竜央「だな!」
モヤモヤとした気持ちを抱きながら残りの時間を過ごし…
竜央「じゃ、私帰るわ!じゃあな奏橙!」
奏橙「…はい。俺も帰ります。」
その様子を見てた…
月見里「もぉぉぉぉぉ!!!!なんなんですかぁぁぁ!!!」
青弓「あ、えっと、…俺らに言われても…」
叫びながら文句を言ってる月見里を、青弓と卜ヶ咲がなだめている。
奏橙「…次こそ、言えたらいいなぁ……。」
先輩なら、俺の気持ちにどう答えるのかな。
涙混じりに、街に向かって言う。
その声は、いつかきっと。
ある男女の、幸せな物語。[完]