Claireが死んだ。八つ裂きにされて。何故おれを置いていったのだろう。もうあの声を、あの姿を見ることが出来ないだなんて考えられない。
「ーーさん、Enーさん」誰だろう、呼ばれている気がする。「Engelさん!」大きく力強い声で呼ばれ、頭がはっきりとしてきた。前を向くとBloomie先生がこちらを見ている。周りを見るとBubbleや他の同級生が心配そうに見つめられていた。「Engelさん、大丈夫ですか?」大丈夫な訳が無い、とは言えずに「はい、大丈夫です。」と言った。周りはClaireが死んでもいつも通りに過ごしている。何故そんな事が出来るのだろう。
そう思いながら授業を受け、家へ帰った。
暗い部屋で鏡の自分を見つめる。意識がぼんやりとしてくるとなんだか自分の姿がおかしく感じてきた。なぜ自分の姿がClaireではないのか?それを考えるだけで頭がおかしくなりそうになる。そしてすぐに実行に移した。髪を切るとバサバサと下に髪が落ちていった。そしてClaireに限りなく似た髪型にする。片目はどうしようもないので前髪で隠すことにした。
次の日、学校へ行くと同級生や先生達が自分をじろじろと見てくる。何をそんなに見るのだろう。そして席に着くとBubbleが話しかけてきた。「ねえEngel、どうしたの?」Bubbleまでおかしい。おれはClaireだ。「何を言ってるの?私はClaireだよ」そうだ。私はClaire。Bubbleは一瞬戸惑ったような、辛そうな顔になったがすぐに笑顔になり「そうね!ごめんなさい。私おかしかったみたい!」と返事をした。
今日はなんだかきっちりと頭に授業の内容が入ってくる。そして家に帰り、もう一度鏡の前に立つ。やっぱり目がおかしい。目が多い。正しく直さなくては。ハサミを持つ手が震える。覚悟を決め、思い切り目を突く。その瞬間、激しい痛みが目を襲った。思わずカエルのような声が出た。頬に生暖かい液体が流れる。呼吸が荒くなりながらも鏡を見つめる。Claireは生きている。鏡にはClaireがいる。そうだ。これだ。この姿こそが本当のClaireだ。なんて幸せなのだろう。頭がぼんやりとしてきた。そのまま痛みと幸せに包まれながら、目を閉じた。
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〈Bubble視点〉
Engelが2日も学校に来ていない。その事をBloomie先生に伝えると着いてきてくれる事になった。
放課後になり、Bloomie先生とEngelの家に行くことになった。急に言ったことなのにわざわざ仕事を終わらせてくれて着いてきてくれたらしい。「わざわざごめんなさい。」というと「何?生徒の事が大切じゃない先生なんていないのよ。」と言ってくださった。
そうしてEngelの家の前に着いた。まずは扉をノックする。「Engelー?」とBloomie先生が声を掛ける。返事はない。ドアノブに手を掛けるとドアが開いた。そして同時に鉄臭い匂いがずしりとのしかかってきた。匂いは肺にこびり付くような、浸透していくような何とも言えない気持ち悪さがある。それでも進んで行き、リビングと思われる部屋を見ると信じられない光景があった。
床にはEngelが倒れ、目からは大量の血が流れていた。そんなのを見ると何か出来るはずも無く、足に力が入らなくなりその場に座り込んでしまった。後ろを見ると流石にBloomie先生も後ずさりしていたが、すぐに携帯で警察に連絡をしていた。この状態だともう生きてはいないことなんて私でも分かる。連絡が終わったらしく、Bloomie先生は「大丈夫、落ち着いて。あなたは大丈夫。」と背中をさすってくれた。
段々と息が出来るようになったてきた頃には警察が来ていて警察からの沢山の質問に答えた。
そして家へ帰ったのは夜遅くだった。Bloomie先生からは明日は学校へ行かなくても大丈夫、課題はゆっくりでいいので進めておくこと。と伝えられた。しかし何かをする気にもなれず、すぐに寝た。
それからというもの、確かに私の生活は色が薄れたように感じた。しかし周りの同級生や先生達の励ましがあってどうにかpaper schoolに通えている。
そして今日はClaireとEngelの墓参りに来た。2つ並んだ墓石の前に立ち、花を置く。
拝啓、ClaireとEngelへ。2人は空の上で会えたのかしら。そして幸せに過ごしている?私があなた達の元へ行くのはずっと先だろうけど、待っていて欲しいわ。
Bubbleより
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梅酒ソーダ‼️です。
今回は結構前から固めていた死ネタを書かせて頂きました。Engelの容姿はTwitterの方で軽く載せていますので見て頂くと分かりやすいと思います!
リンク↓↓↓
https://x.com/umeoisin/status/1861048390525788619