「お姉さんも旅に出ているのよね。後、ディオはどうしたのかしら」
長めのソフトソバージュを後ろで結った真理が微笑む。
「前に家に来ないかと何度か言ったんだがね……真理……いいのか? 本当にこれで」
私は不可解さを覚えた。渡部と角田はウロボロスの蛇で現実を修復する時……。確かにいなかったはずだ……。
真理は世界を確かに救ったのだし、不思議だけど、この世界のことは今は後回しにしようと言っている。決して私だけではないはずだ。漠然とした不安を感じているのは。
南米から日本に戻ると、世界中の人たちはやはり何週間も眠っていたままだった。その中には、死亡者も何百万人もでていて、改めて恐ろしい体験をしたんだなと、震えあがった。
死んだ人は何カ月間も寝たままになり、ついに起きることがなかった。
「ここが、現実か定かではないし、ウロボロスの蛇は尾を呑み込んでサークルを描いているから、この漠然とした不安を抱いてしまう。夢か現実かわからない世界ではなくて、本当の現実の世界では必ず生きているはずよ。生存不明な渡部くんと角田さんたちもそうなのよ」
呉林は奇妙なことを言ってウインクをした。
ここが、どこなのかはわからない。生存不明な渡部と角田や死んだ人たちには申し訳ないが。
でも、私たちは世界を救った……。