テラーノベル
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「じゃ、行ってきます」
「おう。気ぃつけるんだぞ」
武器屋のおっちゃんに見送られ家を出るヲノとダイン。
愛は武器屋のおっちゃんの店の隣で加工などを行っている店の店主である
エルフの“お姉さん”の家に泊まらせてもらった。ヲノとダインが愛に合流して
武器屋のおっちゃんのお店がある大通りの反対側へ、メモトゲ城の周囲を回って行く。
メモトゲ城を囲むようにNeutral Keeplayの建物が建てられている。
武器屋のおっちゃんのお店がある大通りの真反対にも大通りがある。
その大通りの中腹には国境検問所のような門が設置されている。
そこでNeutral Keeperの方に持ち物検査、来た目的などを聞かれる。
もちろん出るときにも持ち物検査はされる。愛、ヲノ、ダインも持ち物検査をされて門を潜る。
「ひさしぶりだわぁ〜」
と辺りをキョロキョロ見るダイン。門を過ぎてもまだ通りの両端は塀に挟まれている。
「なんか…。なんかめっちゃ嫌」
と両側の高い壁を見ながら言うヲノ。
「わかります。なんか緊張しますよね」
と同意する愛。ワクワクしているダインと少し緊張気味の愛とヲノでその通りを端まで歩いていった。
端まで行くと通りを挟んでいた塀が開け、桟橋が複数海のほうへ伸びているエリアに出た。
そこはムアニエル地帯から別の場所へ行くための船や
反対に別の場所からムアニエル地帯に来る船が着く船着場。その船着場から淡く見える島があった。すると
「おぉ!ダイン!」
そこで待機するおっちゃんがダインに手を振る。
「あぁ!」
手を振り返すダイン。引き寄せられるようにダインがそちらに歩いていったので愛とヲノもついていく。
「ひさしぶりだなぁ〜。どうした?リチエスタ(おつかい依頼)か?」
「まあぁ〜…に近いかな?」
「どこまでだ?安くしといてやるよ」
「水人機械之都(みずときかいのみやこ)まで」
とワース(通貨)を手渡すダイン。
「後ろの2人もお連れさんか?」
とおっちゃんにチラッっと見られてペコッっと頭を下げる愛。
「おう」
ダインが答える。
「っしゃ乗んな」
と言われてボートに乗り込む3人。そして船が出た。
「うわぁ〜…」
珍しそうに目を輝かせて辺りを見渡すヲノ。
「なんだ。海出るのは初めてか」
おっちゃんが船を漕ぎながら言う。
「あぁ。…スゲェ…」
「ほら見てみな」
とおっちゃんが顎で指す方向を見るヲノ。
「うわぁ〜…」
ヲノが生まれ育って、今まで出たことのなかったムアニエル地帯の島が小さくなっていく。
不安とワクワクが入り混じり、心臓が高鳴っていくのを感じる。その後しばらく時間船に揺られた。
ムアニエル地帯の島が小さく淡くなっていき、水人機械之都の島が大きく鮮やかになっていく。
すると遠目からはわからなかった揺らぐ透明の壁のようなものが現れた。
さらにスライム状のヒト型をしたヒトがそこにはいた。
「一旦停止お願いします」
と言われて船が止まる。
「持ち物の提示をお願いします」
と言われて持ち物検査が始まる。どうやらムアニエル地帯の国境検問所のようなところが
水人機械之都では水上にあるらしかった。持ち物検査の最中に、来た目的を聞かれて、それに答え
「どうぞ。ようこそ水人機械之都へ」
と言われて船が再び進み始める。
ムアニエル地帯のように陸地までその揺らぐ透明な壁のようなもので挟まれていた。
「これ…触っていいのかな…」
とヲノが手を伸ばそうとする。
「やめろっ!死ぬぞ!」
とダインに言われてビクッっとして手を引っ込めるヲノ。
「嘘だけどねぇ〜」
と笑うダインを
「ねえ。落としてもいい?海に沈めてもいい?」
と到底落とせない体格差だが落とそうとするヲノ。その2人の様子を見てクスッっと笑う愛。
「触っても平気ですよ」
と愛に言われ、恐る恐る触ってみるヲノ。
「うおっ。み、水?」
しかしその水らしき壁は掬えもせず、触った手も濡れない。
「それは水にいるマナトリアが水人機械之都のエリアから外に出ないために
水民(みずたみ)のNeutral Keeperの方が造ってる魔法の壁なんです」
「なっ、なるほど…」
船着場に着いて船から降りる。
「んじゃ、気いぃつけてな!」
おっちゃんが船で去っていく。
「さて。柊さんのご自宅へお邪魔するとしますか」
と言うダイン。
「わかりました」
愛が先導して歩いていく。ダインもヲノも新鮮な周囲の景色にキョロキョロして歩みが遅くなるが
その心の内を読み取っている愛は2人の歩みに合わせて歩く。
「ここです」
と着いた古い日本家屋。引き戸をガラカラガラと開く愛。
「ただいまぁ〜」
「あ、帰ってきたの?おかえり」
部屋の奥から声が聞こえる。
「あ、どうぞ。入ってください」
と言う愛に
「あ、お邪魔します」
と言いながら入るダイン。
めっちゃ靴置いてある。靴屋かなんかしてんのかな
と思うヲノ。その心を読み取った愛は
「あ、そうか、そうですよね。すいません。
お手数なんですけど、そこで靴を脱いで上がってください」
と2人に言う。
「あ、なるほど」
「すいません。ニッポンジンの家は玄関で靴を脱いで上がるんです」
「あ、そうなんですね」
と言って靴を脱ぐダインとヲノ。
「あ、これは」
とダインが自分のハンマーを指指す。
「あ、…じゃあ玄関に置いておいてもらっていいですか?」
と言われてダインはハンマー、ヲノはブレードを玄関に置いておく。
居間に進む愛の後についていくヲノとダイン。
「あら。大きなお客様」
とダインを見て言う愛の母。
「母です」
と愛が紹介する。
「どうもぉ〜はじめまして。愛の母です」
「はじめまして!ダイン・ボルニ・アマキクです!」
元気よくダインが自己紹介をする。
「はじめましてぇ〜。そちらのフード被ったあなたは?」
と愛の母に聞かれ
どうしよ…フルネームは…
と思っていると
「別にフルネームじゃなくていいですよ」
と愛がヲノの心を読んで言う。
ヤバッ…柊さんは心が読めるんだった
と思うヲノ。
「ニッポンジンなので」
また心を読んだ愛が言う。
「ヲノ…です。よろしくお願いします」
と自己紹介をする。
「はい。こちらこそよろしくお願いします。あ、座って座って?ダインさんにとっては窮屈かもしれないけど」
「あ、いやいや。失礼します」
と言って胡座をかくダイン。
「どうも」
胡座をかくヲノ。
「お茶でも」
と立ち上がろうとする愛の母に
「あ、お母さん、私がやってるから」
と言う愛。
「そお?ありがとうね。あ、羊羹があったから切ってお出ししてあげて?」
「わかったー」
愛は台所でお茶を淹れる準備をする。
「お2人はムアニエルから来たのよね?」
とヲノとダインに聞く愛の母。
「あ、そうですそうです」
とダインが答える。
「愛とはどこで?」
「えぇ〜っとぉ〜…」
ダインがどう説明しようかと悩んでいると
「助けてくれたの。お2人が」
と台所から愛が言う。
「助けてくれたってなによ」
愛の母が台所を振り返って聞くと、愛がおぼんに湯呑みを4つ
そして羊羹の乗った小皿を4つ乗せて居間に戻ってきた。
「私がムアニエルに行って、ちょっといろいろあってお2人に助けてもらったのがお2人との出会いなの」
と説明しながらヲノ、ダイン、自分の母、そして自分の分とそれぞれの前に
お茶の入った湯呑みと羊羹の乗った小皿を出した。
「ありがとう」
「…ありがとうございます」
「あ、お食べになってください。で?愛、いろいろってなに?」
「それは…いろいろよ」
「まさか、またあんたあの絵本の葉っぱだかなんだかを探しに行ってたんじゃないでしょうね!?」
「…」
愛の母が頭を抱える。
「だって今のところそれしか方法がないでしょ!?」
重く、ヒリついた空気にヲノもダインも羊羹を食べる気にはなれなかった。
愛の母は愛の方に寄る。そして愛を優しく抱きしめる。
「気持ちはわかるけど、お願いだから私の気持ちも考えて。あなたまで失ったら私はどうしたらいいの?」
と言うと
「ごめんなさい。でも灯(あかり)はまだ生きてるんだからそんな言い方しないで?」
と優しく言う愛。
「私だってお母さんと同じだよ?私だってお母さんとおじいちゃんと灯(あかり)と会えなくなるのは嫌だよ。
だから充分気をつけてる…とは言いつつも危なかったのは事実だけどね…」
2人は離れる。
「灯は…」
「大丈夫だよ。おばあちゃんが読んでくれた絵本を私は信じてる。
だからお母さんのためにも、おばあちゃんのためにも探しに行きたいんだ」
「愛…」
「大丈夫!ヲノさんもダインさんもいるから!」
と急に振られてビクッっとして背筋を伸ばすヲノとダイン。
「あなたちは…もしかしてLimpiador(リンピアドール)をされているの?」
と愛の母に言われる。
「あ、はい。一応」
とダインが答える。
「ヲノさんも?」
「…まあ…はい…」
「フード取ってもらってもいい?」
と愛の母に言われて
「え。…なんで」
とフードを掴み、より深く被るヲノ。
「愛と仲良くしてるあなた方の素性を知っておきたいの」
「あ、いや…これは…」
これはマズイ…どうすれば…
と思っているが、顔の上半身が見えず、鮮明には心を読めない愛と愛の母。
「お母さん、無理強いはダメだよ」
しかし愛の忠告を聞かず立ち上がり、ヲノに寄っていってフードに手をかける。
ダインは容易に止めることはできたが、愛と愛の母のやり取りを聞いていたら
止めようかどうかは迷ってはいたが、体は動かなかった。
あわあわしながら成り行きを見守るダイン。愛の母が少し抗うヲノのフードを取ると
金色と黄緑色の間の「薄萌葱色」と呼ばれる綺麗な色の髪が露わになった。
「あら綺麗な髪」
その綺麗な髪が露わになったことで、隣のダインは
あぁ〜…バレた…
と思った。そのダインの心を読んだ愛。
「バレた…って、なんですか?」
「え?」
「ダインさん今バレたって」
「嘘っ!?声に出てた?」
と驚くダインに
「柊さんはニッポンジン。読心術が使えるから」
と呟くヲノ。
「あぁ〜そっか。…もっとヤバいだろっ!?」
と納得しかけるもより驚くダイン。
「なに?なにかあるの?」
愛の母が元の位置に戻って座り、ダインとヲノを交互に見る。
「…」
無言のヲノ。あわあわ焦るダイン。
「言えない…ことなんですか?」
愛が不安そうにヲノを見る。
「…」
「ヲノ。そうする?」
とダインがヲノにだけ聞こえるように囁く。
「…言わないでもらえますか」
とヲノが口を開く。
「言わない。まあ、内容によるけども」
愛の母が言う。ヲノは1つ息を吐く。
「オレの名前なんですけど、ヲノ…。ヲノ・テキシ・メモトゲっていうんです」
「メモトゲって」
愛が呟く。
「そうよね?メモトゲってムアニエルの」
愛の母も愛に向かって言う。愛も愛の母もヲノを見る。
「はい。メモトゲ家の息子です」
「…」
「…」
「「えぇ〜〜!?」」
ご近所に聞こえるほどの大きな声で驚く2人。
「なにしてるの!?ご両親探してるでしょ!?」
愛の母が驚きながら心配そうに言う。
「あ、いえ。自分専属の世話係のエルフのルノーってヒトに
友達の家行ってくるから。って言っておいたので大丈夫だと思います」
「あぁそうなの?」
「そうだったんですね。なんかすいません。気軽に話しかけちゃって」
と謝る愛。
「あ、…いや…全然…」
「こいつ女性と話したことないんで、むしろどんどん話しかけてやってください」
とダインがヲノの頭に大きな手を置く。
「うるせぇな…」
と呟く。
「そ、そうですか」
「でもメモトゲ家のヒトがLimpiador(リンピアドール)なんてされてるのね」
「あ、いえ…。兄も姉もいますが、2人ともしていません」
「え、あ、そうなのね?」
「じゃあなんで…」
「…ずっとつまんなかったんです。城に暮らしてて音楽やら武道やら勉強やらを
ずっと外に出ず城の中でやり続けて…城の窓から見た城下町の人たちは楽しそうで。
城から見えるこの大陸(水人機械之都)ももう1つの大陸も見えてて
城の外にはいろんな世界が広がってるんだと思ったら、居ても立っても居られなくて。
それで家をこっそり抜け出て。おっちゃん(武器屋のおっちゃん)やダインに出会って
Alma Limpiador(アルマ リンピアドール)って職業を知って
カッコいいだけじゃなくてヒトのためになる仕事で。未知なる世界を見たくて、未知なる刺激を受けたくて
まだまだ半人前だけどLimpiador(リンピアドール)になったんです」
と理由を愛と愛の母に語った。
「…そうなのね。うちの島(水人機械之都)にもお城があってね?
お金持ちはいいねって愛とも話してたことがあったんだけど、お金持ちにもお金持ちで悩みがあるんだね」
と愛の母が優しく、納得したように言う。するとガシャンガシャン。と引き戸をノックする音が聞こえてくる。
「あら。誰か来た。ヲノさん、フード被りなさい」
と愛の母が立ち上がりながら言う。
「あ、はい」
とフードを被るヲノ。
「はーい」
と言いながら愛の母が玄関へ行き、引き戸を開く。
「こんにちはぁ〜」
「あら。Neutral Keeperのお2人。どうかなさいました?」
という玄関の愛の母の言葉を聞いて
「ヤバい。NK(Neutral Keeperの略称)が来た。柊さん、ヲノをどっか部屋に隠してくれないか?」
と言うダイン。
「あ、そうですね」
とヲノを隠そうと画策した瞬間
「あ!隠さないでくださいねぇ〜」
と言う声が玄関のほうから聞こえ、3人ともビクッっとする。
「すいません、失礼しますぅ〜」
と言いながらNeutral Keeperの2人が入ってきた。
「あ、やっぱり」
と言う鳥人のNeutral Keeperのヒト。
「おぉ!ダインさんじゃないっすか!」
驚くニッポンジンのNeutral Keeperのヒト。
「あ、え!?ジョゼさんに中芽さん?」
ダインとは顔見知りのNeutral Keeperのコンビだった。
「あ、すいません。身分を申し遅れました。
私(わたくし)ムアニエル地帯でNeural Keeperをさせていただいている、ジョゼ・ノウン・チカと申します」
と自己紹介をするジョゼ。
「…」
ボーっと家の中を見回すニッポンジンのNeutral Keeperの人の背中を羽で叩くジョゼ。
「うおっ。あぁ、私(わたくし)もムアニエル地帯でNeural Keeperをさせていただいている
中芽(なかめ)律人(りつと)と申します」
と頭を下げる律人。
「なんで2人が?」
そう。その島にはその島で働くNeutral Keeperのヒトがいる。
ムアニエル地帯ならムアニエル地帯専門
水人機械之都なら水人機械之都専門のNeutral Keeperのヒトがいる。
ジョゼと律人の2人はムアニエル地帯でNeutral Keeperとして働いているので
本来、水人機械之都にはいないはずなのである。
「あぁ〜、いや、ちょっと上からのリチエスタ(おつかい)で」
と律人が後頭部を掻きながら笑いながら言う。
「で。ダインさんはヲノさんを隠そうとしたようですが?」
とジョゼがダインにジト目を向ける。
「聞こえ、…てた?」
「鳥人の聴力舐めないでください」
「そうでした…」
「で?なんで隠そうとしたんですか?…もしかしてヲノさん。お尋ね者ですか?
以前お会いしたときもずっと俯いてましたもんね?」
「覚えてたんだぁ〜」
ダインが言う。
「たしかに。鳥頭って言葉もあるのにね?」
と言う律人の頭を羽で叩くジョゼ。
「いてっ…。でもほんとなんでなんですか?」
律人が聞く。
「あ…えぇ〜っと…」
とダインが答えようとすると
「あぁ、ヲノさんは家出をしてきているので、Neutral Keeperの方々に見つかると
やいやい言われると思ったので隠そうとしたんです」
と愛が言った。ヲノとダインは
うわーほんとのこと言いおったー
と思った。その心を読み取った律人。
「あ、ほんとのことなんですね」
心読まれたー
と思うヲノとダイン。
「ダインさん、ダメじゃないっすかー。家出人を囲っちゃー」
と律人に言われる。
「すいません」
「まあ、私たちはダインさんが悪い人ではないと知ってるのであれですけど
家出人を使って悪いことするヒトもいるんですからね?」
ジョゼにも言われる。
「はい。仰る通りで」
「でもどうして家(うち)に来たの?」
と愛の母がNeutral Keeperの2人に聞く。
「あぁ。いや、歩いてたらとんでもなく大きな声が聞こえて
ここ(水人機械之都)のNKが行こうとしてたんで、僕らが代わりに行きますよって言ってきたんです」
と律人に言われ
あぁ、私たちだ…
と思う愛と愛の母。
「あ、お2人だったんですね」
と言う律人。
「「すいません」」
「いえいえ。何事もなく良かったです」
と言うと律人はジョゼと目を合わせ、お互い頷く。
「じゃ、我々はこれで失礼します」
とジョゼが言う。
「あ、え」
思わず立って玄関までお見送りに行くダイン。愛の母もお見送りに玄関まで行く。
「い、いいの?」
ダインがNeutral Keeperの2人に聞く。
「なにがです?」
「いや、ヲノ。あいつ家出人だし、オレは囲ってる…って言い方は悪いけど、今はヲノと一緒に住んでるのに」
律人とジョゼは顔を見合わせて肩をすくめる。そして笑顔でダインを見て
「ま、さっきも言いましたけど、私たちがダインさんが悪い人じゃないって知ってるので」
「ダインさんのとこにいるならまあへーきかなっていう」
と言う。
「え、あ、なんかありがとう」
「いえいえ。ま、本当ならうち(Neutral Keeplay)に来てもらって、事情諸々聞いて
家出人本人と家出先のご家族と話し合ったりして、その後を決めるんですけど、ま、ぶっちゃけめんどいんで」
と律人が言うとジョゼが羽で律人の頭を叩く。
「ぶっちゃけすぎです。ま、でもそーゆーことなんで。私たちはこれにて失礼します。
すいません。お邪魔しました」
「ごめんなさいね?大きな声出して心配かけて」
「あ、いえ。何事もなくほんとよかったです」
「では失礼します。お邪魔しました」
と言ってNeutral Keeperの2人は家をあとにした。愛の母とダインは居間に戻る。
「ナイス!ファインプレー!」
と愛に言う愛の母。
「え?あ、うん。ありがとう?」
「…す、すいません。た、すかりました」
と愛にお礼を言うヲノ。
「私の娘ながら頭が良いわぁ〜」
「え。どーゆーことですか?柊さんがほんとのこと言ったとき、オレめっちゃ焦っちゃったんですけど」
と言うダインに説明を始める愛の母。
「NKは基本的に2人1組で動いてて、1人は基本的にニッポンジンなの。
読心術を使えて、なにかを隠しててもわかる確率が高いからね?
だからあの場で変に嘘を言うとバレてめんどくさいことになる確率が高かったの。
そこで“メモトゲ家”から家出してきたってことを言わず、ただ単に家出してきたって言えば
ヲノさんもダインさんも心の中で「言うなよ」とか思うでしょ?
そしたらその心を読んだNKのヒトが嘘をついてないってわかってくれる。そう考えたんでしょ?」
と愛の母が愛に聞く。
「あぁ、うん。そう」
「我が娘ながら末恐ろしいわ」
「褒めすぎだって。ヲノさんが私の命を助けてくれたんだもん。これくらいは、ね?」
「あらそうなの?私はてっきりダインさんが」
「いやいや。オレは気づかなかったんですけど、こいつが」
と得意げに、嬉しそうにヲノの頭に大きな手を乗せるダイン。
「ありがとうございます」
と愛の母がヲノに頭を下げる。
「いやいや…」
と言っている間にダインが羊羹を
なんだこの小さい黒い塊…
と思いながら一口でパクンと食べた。
「…う…」
俯き震えるダイン。
「ダインさん大丈夫ですか?」
愛が心配そうに言う。
「愛、消費期限確認した?」
「してない。え!?ダメなやつなの!?そんなの置いとかないでよねお母さん」
「美味い!なんだこれ!」
「え」
「え?」
「は?」
「なんですかこれ!ただ甘いだけじゃない。香り、そしてこのしっかりした固形なのに
噛むごとにとろけていくように変形する感じ。めちゃくちゃ美味しいです!」
どうやら美味しくて震えていたらしい。
「ビックリしたぁ〜…。ま、美味しいならよかったわ」
「ヲノ!食べないならくれ!」
と奪おうとするダインからお皿を持ってダインの手から逃げるヲノ。
「食べるよ」
食べてみるヲノ。
「あ、ほんとだ。美味しい…」
と静かに驚き、呟くヲノ。
「そういえばあなたたちは今日はどうするの?ムアニエルに帰るの?」
と愛の母が2人に聞く。
「あ、いや…。決めてないですね。柊さんのご家族に会って
柊さんが求めている、その絵本に出てくる葉?を探す旅に同行する許可をいただきたくて
その許可を得るまではいようかとは思ってたんですけど」
とダインが言う。
「…」
愛の母は難しい顔をする。
「お母さんお願い。私1人じゃないし、私はヒールの魔法を使える。
命を助けてくれたお2人に、少しでも恩を返したいの」
「…」
しばし静寂が居間を包む。
「…はあぁ…」
愛の母がため息を1つ吐く。
「わかったわ」
「…お母さん」
「あなたは物静かな子だったけど、家族のこととなると自分を通してきたわがまま娘だったからね」
「そ、そうだっけ?」
「そうよー。ヒールの魔法を勉強するときだって
ヒールの魔法は他の魔法と違ってベースがゼロからスタートするから
すごく大変なのよ?って言ってもやるって聞かなかったし」
「そ、そうだったかもね…」
「それに1人じゃないってのは安心材料にはなった」
と言って愛の母がヲノとダインを見る。
「ダインさんもヲノさんもいい人そうだし」
「ありがとうございます!」
「あくまでいい人“そう”ですからね?まだ全幅の信頼を置いてるわけではないですので。
…ヲノさん、ダインさん」
「はい」
「…」
「娘を守ってあげてください。お願いします」
とちゃぶ台に頭がつくほどに頭を下げる愛の母。
「はい。守ってみせます!」
「…はい…」
「お母さん…」
愛の母が頭を上げ、パンッ!っと手を1つ打ち鳴らす。
「じゃあ、2人とも今日はうち(家)に泊まってきなさい!部屋ならあるから。
そろそろお昼ね!材料足りるかなぁ〜」
と愛の母が立ち上がり、台所へ向かう。
「あ、お母さん私も手伝うよ」
と愛も台所へ行く。愛と愛の母が料理を作り、4人でお昼ご飯を
「うんまっ!!お母さんおかわりお願いしてもいいですか!?」
「やっぱりダインさんはたくさん食べるのねぇ〜。でも美味しい美味しいって食べてもらえて嬉しいわ。
夜はもっと量を作らないとね?ワース(通貨)ならヲノさんが出してくれるでしょうし」
「お母さん」
「冗談だって」
「…まあ…全然いいですけど…」
なんて話しながら食べた。
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