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暫(しばら)く時間の経過したレストランエリア、二人の男性を前に最初に声を上げたのは、サッパリとしたいつも通りにすっぴん丸出しのコユキであった。
「んねぇ! この雉セットって雉カレーと雉ラーメンのハーフセットなのかぁ…… 無いでしょ? せめてレギュラーサイズ、いいや、ダブルサイズに出来ないのかな? んねえ駄目ぇ? コユキ飢えてんのよぉ! ×四で良いんじゃないの? んでそこを何とかお値段的には×三でお願い出来ないとか何とか、アタシ、飢えてんのよぉー! 結果次第じゃここで飢え死にするんだからねぇ! それで良いのん? そこら辺を責任者の皆様に聞いて来てくれないかしら? 良い? 死ぬんだからね? 死ぬよ?」
「は、はいっ、聞いてきますねっ、ダブルで三倍以内に価格を抑えられないのかどうかっ、少々お待ちをっ! スタコラサーっ!」
コユキは悪そうな顔を浮かべてフューチャーと運ちゃんに言ったのである。
「ふふん! やったわね! この流れでダメとか無いからっ? ほぼ百パーで『特別ですよ』とか言われるからさっ、楽しみにしていてねん!」
フューチャーが驚いたような顔で返す。
「ええっ! そうなの? そうなんだ…… 時代の流れとかむつかしいんだね……」
運ちゃんは余裕っぽかった。
「んふふふ、でしょうねぇ! んふふふ、ふふふ」
店員さんが帰って来て言った。
「オーナーに確認したらダブルで三倍で良いそうですよお客さん、でもこれって、『特別ですからね』っ! SNSとかで言ったらだめですからね? 大丈夫ですか?」
ほら見ろ、そんな表情を浮かべながら勝ち誇ったコユキは店員さんに答えたのである。
「うわー嬉しいわね! んじゃダブルを七つ持って来てくれるかな? アタシって口硬いタイプだからん誰にも言わないわよ! ってかSNSって何? 美味しいのそれ? って事よぉぅ! 店員さんっ! 飢え死に寸前なのよぉ! んで、アンタ等は?」
コユキの問いにまずはフューチャーが、続いて悪魔だったらしい運ちゃんが笑顔で答える。
「あ、じゃあ、私もダブルで! 一つで良いんで、ダブル一つでっ!」
「良いですね、七つですか? では久々に貴女に寄り添うとしましょうか…… お姉さん、私もダブルを七つ頂きましょうか! お揃いですね、キュベレー様、おっと、お客さん!」
コユキがキョトンとした顔のままで答えたのである。
「キュベレーってか? 随分古い言い回しじゃないのぉ? アンタあれかね、古い古い、それこそこの子たちと同じくらい古い神様なのん? ねえ、フューチャー様? アンタよりよっぽど古い悪魔や神様なんじゃないのぉ? どう? どんな気分? ねぇ、ねぇ?」
フューチャーは答える、多少苦虫を噛み潰した感じである。
「いやいやいや、原初の神とは我々とメット・カフーの五柱だけですよ、それより古い神など存在しません! この運ちゃんもイキっているだけの若い神に他ならないでしょう! 決まりですよ? ルキフェル殿!」
「ふーんそうなの? アタシ的には古いとか新しいとかどうでも良いけどね? アンタにとってはそう言う細かいことが大事なのね、そこだけは良く分かったわん」
「なっ?」
「ほら、コユキさん、キュベレー様、いいえ、ガッライ陛下、雉セットダブルの一つ目が来ましたよ、一緒に頂けるとは光栄の砌(みぎり)です、温かい内に頂きませんか?」
「おお、塩ラーメン風味なのね! それもアタシの大好きな細麺じゃないのぉ! よしっ! あれ言っとくか、せーのぉ」
パンッ! 「「「頂きますっ!」」」
頂きますの後はテーブルに向き合う三人は一言も余計な会話をする事が無かった。
只々目の前に供せられたどんぶりの中に描かれた絶品、超舌の旨味を味わう事に集中していたのであった。
極細麺に雉ガラから丁寧に取った出汁と、決して主役を邪魔しない為に添えられた必要最小限のトッピングは、これがゴール、突き抜けた結果だけど? 何か? そう言わんばかりの雉肉の肉団子と地鶏の特製チャーシューで全て、統べて、総てを完結させていたのであった。
ワンセット目のスープを飲みほしたコユキは興奮気味に叫んだのであった。
「な、なにこれぇー! 全然違う、ダンチ、いいやレベチじゃないのぉ! アンタッ! フューチャー様? アンタワンセットで良いのかしらぁ? 後悔先に立たず、よぉっ?」
フューチャーが間を置かずに言った、スプリングスティーンに寄せた表情である。
「お姉さん、同じ奴、もう一杯、いいや、もう三杯、いいかな?」
「あ、はいっ! 雉セットダブル(特別)! もう三セット追加でぇーすぅ!」
「サンクス!」