僕含め家族4人は、山奥に暮らしていた。
僕は双子で、有一郎という僕と顔が
そっくりな兄がいる。でも性格は
全く似ていなかった。
僕はぼーっとしていて、兄さんは
しっかり者だった。逆な性格だからか、
僕はよく兄さんに叱られている。
すごく冷たい人だけど、極たまに兄さんは
僕に向かって優しい素振りを見せる。
僕はそれが好きだった。
温かくて、嬉しくて。
守られている感覚がした。
でもある日、両親が2人同時に
死んでしまった時から、兄さんは
笑わなくなってしまい、たまに見せる
優しい素振りも僕に見せなくなった。
もともと冷たかった人が、
さらに息がしづらいぐらい冷たくなって
しまった。
両親がいないので、僕と兄は毎日必死に
生きるため水を汲んだり木を運んだりと
大変な仕事をしていた。
でも僕は体力がなくて、いつもあまり
働けていない。兄さんは力持ちだから、
僕の倍働いていた。
僕の体力がないせいで、
「なんで出来ないんだ」と兄によく
怒られている。
しかも僕は 料理もできない。
兄さんは、両親が生きてた頃、よく
母さんの料理の手伝いをしていたため、
最低限の料理はできていた。
母さんが死んでからは毎日兄さんが
ご飯を作っていた。
ある日、僕はいつもより働けなくて、
すごく落ち込んでいた。
でも兄さんは、僕がどれだけ働けなくても
ご飯の量は必ず兄さんと同じ量だった。
……すごく申し訳ない気持ちになった。
僕は全然働けていないのに、
何故兄さんと同じ ご飯の量なのだろうか。
兄さんは沢山頑張っていたのだから、
もう少し多く食べて欲しい。
僕は兄さんに夜ご飯を渡された時、
小さくこう呟いた。
「いらない」
「…は?」
僕がご飯を拒否すると
兄さんは僕の顔を見て睨んできた。
とても怖い。でも兄さんには
沢山食べて欲しい。
僕は重たい口を開いた。
「……だ、だって今日、あんまり
働けてないから…。
それなのに、兄さんは
いつも兄さんと同じ ご飯の量に してくれる
でしょ?
申し訳ないよ……。
兄さんの方が頑張ってるから、
もう少し兄さんには食べて欲しいな、」
俯きながらそう言うと、兄さんは
しばらく黙り続けていたので、
ふと顔を上げると、
兄さんは少し困ったような顔をしていた。
「……別に。働いてなくても働いてても
量は同じって決めてるんだよ。 」
「……でも、僕ほんとに今日
全然働けてない。働けてないのに
無料でご飯を食べるわけにはいかないよ」
「なら食べるな。
俺は少食だからそんなに 要らないし、
もしお前が食べなかったらそれは捨てる。
それだけだ。」
「そんな……っ、僕は兄さんにもっと食べて
欲しいのに、それじゃ意味ないよ……!」
「だから俺はいらないって言ってるだろ!
捨てるのが勿体ないと思うんだったら
さっさと食え。」
「……分かった、」
また兄さんに怒られてしまった。
僕はただ兄さんに笑って欲しいだけなのに。
少しでも幸せになって欲しいだけなのに。
僕はいつも余計なことばっかりしてる。
僕は要らない方がいいかな。
いつもなら美味しく感じるふろふき大根が
今日は味がしなかった。
しばらくし、深夜になったので僕たちは
いつも通り別々の布団で横になって
寝ていた。
でも僕はまともに寝れなかった。
どうやったら兄さんに褒められるのか、
僕はずっと考えていたから。
何かいい方法はないかなと考えていると、
ある考えがひとつ思い浮かんだ。
仕事をいつもより頑張ればいいのだ。
兄はいつも水を汲んだり木を運んだり
動物を狩ったりして料理までしている。
きっとものすごく大変なはずだ。
僕だったら耐えられない。
なら、僕がその兄の負担を減らせばいい。
料理は出来なくても、仕事を兄さんより
頑張れば、きっと兄さんだって喜ぶ はずだ。
なんでこんな簡単なことを思いつかなかったのだろう。
早速明日実践してみよう。
僕は笑みを浮かばせしながら眠りについた。
次の日の朝、僕達は早速仕事をした。
まずは木を運ぶ仕事だ。
兄さんは大体、10本くらいの木を
毎日運んでいる。
それに対して僕はいつも5本しか運んでいない。
今日は僕が10本運んで兄さんの負担を
少なくしてやるんだ。
僕はやる気満々で早速木を運び出した。
1本、3本と僕はいつも通り
息を切らしながら頑張って木を運んだ。
やっと半分まで運んだ時、僕は既に
限界だった。
兄さんは凄いな。こんなに疲れるのに、
兄さんは疲れた顔せず 冷静に運んでいる。
僕も頑張らないと。休んでいる場合ではない。
僕は頑張って一生懸命いつもの倍
木を運んだ。
「っはぁ、はぁっ……ん、、、、っ」
現在運んでいる木の本数は10本目。
これが運び終わればやっと 休憩できる。
息切れも凄くて、体も重くて、
今にでも倒れそうだが、
兄さんの喜ぶ顔のためならなんだって
頑張れる気がする。
10本目を運び終わった瞬間、僕は地面に
座り込み息を整えた。
本当に疲れた……。兄さんはこれを
毎日運んでいるのか。本当に凄い。
でもまだやらないといけない仕事がある。
もっと頑張らないと。
次は水汲みだ。
水汲みはさっきの仕事よりマシだから
簡単だろう。 まぁいつもの倍
汲まなくちゃ いけないけど…。
僕は川にやってきて、早速水汲みを始めた。
ここの川の水はすごく綺麗で、
音も心地よい。僕の気に入ってる場所だ。
昔兄さんとよくここで水遊びしてたっけ。
またやりたいなぁ。
僕は黙々と川から水を汲んで
川で汲んできた水を家に溜める 行動を10回繰り返した。
少し疲れたがやっぱりさっきの仕事より
遥かにマシだったので、すぐに水汲みは
終わった。
もう仕事は終わったけど、まだなにか
兄さんの為に手伝いたい。
何かあるかな……。
そう考え思いついたのが、
川で魚を取る事だった。
魚を取れば、食事の量も多くなるし
きっと兄さんも喜ぶはずだ。
僕は早速川の中に入り魚を必死に探した。
「……!いた!」
魚を見つけた僕は一生懸命魚を
捕まえようとする。が、逃げ足が早くて
なかなか捕まえられない。
20分くらい苦戦して僕はやっと
1匹目の魚が取れた。
これは兄さんの分。あとは僕の分を取れば
もう今日の仕事は終わりだ。
コツを掴めたのか、僕は5分ですぐに
魚をまた1匹捕まえられた。
魚にずっと夢中だったため、当たりを見渡せば夕方になっていた。
「……やばい、兄さんに怒られる!
早く帰らないと」
僕は急いで魚を持ちながら家に帰った。
「はぁっ……はぁ、ただいま!!!」
「……おい、お前帰ってくるのおそ…、」
晩飯の支度をしていた兄さんが
僕を見た瞬間 固まった。
「……なんだその魚」
「あのねっ!僕っ、兄さんの役に立ちた
くて頑張って魚を2匹とったんだよ!!
それからっ、それからね!頑張って
いつもの倍仕事をしたんだ!!
兄さんの負担を少しでも減らせたくて、
僕頑張ったんだよ!」
僕が目を輝かせながら言うと、
兄さんは 僕の言葉に驚いたのか、
目を大きく開けていた。
しばらく兄さんが黙っていると、
溜息をつき、 こう言った。
「……だから遅かったのか?
余計なことするなよ。俺はそんなこと
頼んでない。」
「……え?でも…、」
「……魚も、もし魚の体に何か あって
俺たちがお腹壊したらどうするんだよ」
「……っ、ごっ、ごめんなさい……」
「……とにかく、さっさとその魚川に
戻してこい。」
「……分かった」
いつもの倍 頑張ったのに、褒めてくれなかった。
仕事しても怒られる。なんで?どうして?
こんなの理不尽だよ。
川に魚を戻した僕はしばらく川を
ぼーっと見つめていた。
眺めるうちに僕は涙が溢れてきて、
止まらなくなった。
拭いても吹いても止まらない。
……辛いなぁ。どうして毎日
怒られちゃうのかなぁ。役に立ちたいのに
立てないことがすごく悔しい。
でも泣いたところで何も変わらない。
やっと涙が止まったところで僕はまた
家に戻った。
「……魚、戻してきたよ。」
「……晩飯、できてるから食うぞ。」
「うん、」
僕らは黙々と夜ご飯を食べ続け、
食べ終わった後、兄さんが皿洗いを
して、その間に僕は布団をひいた。
2人共仕事が終わると、
僕達は布団に潜り込み一日を終えた。
…でも最近、布団に潜ってもなかなか
寝付けないことが多い。
毎日不安で押しつぶされそうに
なるからだ。
僕は体をねじ曲げ兄の方をみた。
兄はすやすやと寝息を立てながら寝ている。
いつも兄さんは隙がないけど、
唯一寝る時だけは完全無防備だった。
そんな兄の姿に僕は少し可愛いと思ってしまう。
手を伸ばして兄の髪の毛を撫でるように
触ると、兄は少し幸せそうな顔をした。
……可愛いなぁ。いつもこんな感じ
だったらいいのに。
僕は我慢できなくて兄さんに抱きついた。
すると流石にやりすぎたのか、 兄さんが
んん、と魘されながらゆっくり目を開ける。
寝ぼけているのか、僕と目が合っても
しばらく黙っていた。
でも少し経てば、やっと目が覚めて
兄は大きく目を開く。
「なっ……お前なんで抱きついて…、
離れろ!」
「……寂しくて」
「離れろ!!」
「……ねぇお願い。 今日だけ兄さんに
抱きついて 寝たいの……」
僕は上目遣いでそう言い、
兄さんの体に頭を擦り付け甘えた。
もう一度抱きついてしまえば沼にハマり
抜け出せなくなる。
ごめんね兄さん。今日だけ許して。
「ぐっ……、もういい!好きにしろ」
「……!うんっ、」
僕は嬉しくなってさらに強く抱きついて
沢山兄さんに甘えた。
すると安心する兄の匂いが自然と
鼻につく。いい匂いだなぁ……。
せめて今だけは、
もう少しだけ甘えてもいいよね。
「、ねぇ兄さん」
「なんだよ」
「ぼくね、兄さんにどれだけ嫌われてても、
兄さんのことずっと好きだよ」
「……は?嫌い??」
「だって兄さん、いつも僕に叱って ばっか
だし、仕事ちゃんとしても 怒られるから、
きっと兄さんは 僕のこと嫌いなんでしょ、」
「……!?ちがっ、……!違う!!」
「え?」
「……おれ、は、お前に…
無理をさせたくないだけ…だから」
「じゃあっ、僕のこと嫌いじゃないの、?」
「……当たり前だろ」
「……!!そっか……!!えへぇ… 」
「気持ち悪いからやめろ!!」
「でもほんとなんでしょ?」
「……」
「図星だ!!」
「うるさい!!黙れ!お前はもう寝ろ!」
この幸せな時間がいつまでも
続きますように。
コメント
2件
可愛い時透ツインズと鬱すぎる展開のギャップが好きすぎるヮ💥💥😁💥💥😁💥💥😁💥😁💥💥😁💥😁💥💥😁😁💥💥😁😁💥💥😁💥💥
こんなに素晴らしいお話を思いつくなんて·····天才ですか?