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「映山紅もちょっとは賢くなったな。つきあってくれないと自殺するなんて言い出す男を彼氏にすれば、捨てられる心配はないもんな」
超ヤバい先輩が賢くなったと馬鹿にするように言っている相手は僕でなく彼女。ということは――
「その人が君の元カレ?」
「う、うん」
よりによって彼女を傷つけたカツラギリクとは超ヤバい先輩のことだった。この男が彼女の処女を奪い、それから何ヶ月も性欲処理の道具として彼女の心も体も好き放題にしてきたわけか?
その男から僕はどう見えるのだろう? 自分の女を奪った憎い男だと責められるのだろうかと思ったら、全然違った。
「そんなに青い顔すんなって。別に怒ってねえからよ。かつて愛した女が別の幸せを見つけたというのなら喜ばしいことだもんな」
リクに怒ってないと言われて正直ホッとしたが、なぜか彼女が怒り出した。
「何が〈愛した女〉だ? ボクにひどいこといっぱいしたくせに!」
「ひどいこと? なんでもするから別れないで! と言うから、リクエストにお応えしてなんでもしただけなのになあ。今さら人でなしみたいに言われるのは納得できねえなあ。なあマサト」
「そうそう。おれたち映山紅に無理やり何かさせたことは一度もなかったのにな」
もう一人の先輩はマサトと言うらしい。それはいいが、なぜこの男まで彼女を呼び捨てにしているのだろう?
「夏梅、行こう」
彼女がベンチから立ち上がり、僕のいる方に駆け出してきた。リクとマサトは相変わらず僕らを見ながらニタニタ笑っている。一秒でも早く彼らのいない場所に行きたいと言わんばかりに、彼女は僕の手を引いて走り続けて、一度も振り返ることなく公園をあとにした。