テラーノベル
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rm view___________
rm「はぁ、っ、ふーっ、!!」
頭の痛みを緩和させるために必死になって両手で頭を押さえる
治らない、頭の痛みと、体の震え、悪寒、恐怖、そう、恐怖が治まらない
悪夢を見るようになって、己の睡眠は酷く害されるようになった
己の価値の無さを、不要さを、それも、メンバーからことごとく語られ罵られる、そんな夢
自分が、一番あって欲しくない夢
そんなことがないとわかっているのに、あまりに鮮明に覚えているものだから、ある日夢と現実が混同したかのような気分に陥って
……きっと、その日が境だった
寝ることが怖くて、寝ないことで健康を害し、撮影の為に睡眠を要し、しかしそれに耐えるためにカフェインやらに依存した
その悪循環が今の己の状況を作り出していた
“一緒にいるから”
ふと、数週間前の旅館で言われた、かざねの言葉が脳内を反芻した
rm「は、っ、はっは、ッッ」
頼ろうにも怖くて、手が出せなかった、彼からの助け
いいのか、信じていいのか、ここで、いや、ダメじゃないか、こんな、
…‥21時、呼ぶにはあまりにも唐突で遅すぎる
電話だけなら?いや、こわい、嫌われたらどうする?
彼のアイコンだけタップして、肝心な通話ボタンを押せない
呼吸が荒くなってそれどころではなくなる
rm「っ、ぅう”〜〜ッッ!!!」
過呼吸だ、吐かないと、吐かないといけない
わかっているのに、吸わないとダメだと本能が叫んでいて、体が言うことを聞かない
途端、目の前の端末が震え出す
rm「っ、!!ぁ、ぅ、、!、っ、」
電話___________かざねだ、
文字通りナイスタイミングというべきか、頭に浮かべていた彼から連絡が来る
しかし助けを求めるなんて発想は消えて、仕事のミスかと不安ばかりが押し寄せる
編集で何かミスをした?上手く動画撮れてなかった?何か投稿し忘れた?
___________炎上でもした?
なにか、やらかした?
だらだらと汗が流れて、息が詰まる
それでも、それなら尚更出ないわけにもいかないと義務感が湧き出て、震えた手で端末に手を伸ばす
緑色に光る応答ボタンに触れれば、画面はすぐに通話状態を示した
スピーカーをオンにする
kz『……りもこん?』
rm「……ぁ、…か、かざ、」
彼の声が聞こえる、答えなきゃ、声を、声を、
彼の声にどっと安堵感が押し寄せて、涙が込み上げる
しゃくり声が漏れて、それが聞こえないよう咄嗟に口を塞いだ
kz『りもこん?聞こえてる?』
rm「はっ、ひゅっっ、」
kz『りもこん』
画面の彼の声に段々と焦りが混じるのがわかった
もう完全にバレている、自分が決して良いとは言えない状態であること
rm「ひゅ、ふ、ッッか、ざね、っ、、」
kz『すぐ行くからな。通話切るなよ』
すぐ行く、その言葉に体が温かくなる気がして、自分の体が冷えていることに気づく
大丈夫、すぐ来てくれる、通話も切れてない、声が聞こえる
その安心感が、どれだけ今の自分を救ってくれることか
kz『っ大丈夫だからな、ひとりじゃない、』
kz『出来るなら玄関開けといて』
かざねの声の向こう側で、活動音が聞こえる
走っていたり、何か物音が響いて、外にいるようだった
こっちにきている、今、向かってきてくれている
そうだ、玄関開けないと、じゃないと、彼が入ってこれない
幾分か呼吸もマシになった体をなんとか起こし上げて、壁を伝いながら玄関へ向かう
ガチンッと音を立てて鍵を開放し、すぐそばに座り込んだ
画面からは息切れの音と、走る音、
焦っているからだろうか、大丈夫だ、とか、1人じゃないから、とか、言い聞かせるような断片的な言葉が繰り返されている
それだけでも、ほんのり自分の心は支えられていた
でも、それと同時に申し訳なさが押し寄せて再び不快感が押し寄せてくる
だめだ、だめだだめだだめだ
rm(おちつけ、落ち着かなきゃ、俺、おれ、)
不要じゃないって、必要だって、かざねがあの時言ってくれた
___________本当に?
だから大丈夫だ、俺は、要らない人間じゃない
___________嘘だ
___________だってみんな、俺のことをいらないって言った
___________邪魔だって、迷惑だって
___________言われた、言われたじゃないか
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!
ガンガンと頭が割れるように痛んで、生理的な涙が込み上げる
“いっつも人の話聞いてないよな”
“自分勝手に行動してさ”
“脱出ゲームなんだから危機感持てって”
“そろそろ役に立てよ”
“___________なんでいんくにいるの”
三色の瞳がこちらを覗いている
心底不思議そうに、心底ウザそうに
嫌われてるなんてこと、聞かなくてもわかるくらい、重たい視線がこちらを覗いている
脳裏に蘇る、”夢の記憶”
rm「ぅう”〜〜ッッ!!っ、ゃだぁ、っ、やだ、やだ、!」
痛い、痛すぎる、波打つ頭の痛みが周囲の頭で遮って、かざねの声なんて聞こえなかった
何か言ってくれてるのがわかるのに、聞きたいのに、きっと、頑張ってなにか伝えようとしてくれてるのに
その場にうつ伏せになってしまって、画面さえ見えなくなる
kz「りもこん!!!」
途端、勢いよく玄関が開かれて、部屋に風が入り込む
驚きと、名前を呼ばれたことに反応して垂れた髪の間から覗けば、先程まで通話していた彼が酷い形相で立っていた
俺の姿を見るなり、すぐに玄関を閉めてこちらに駆け寄り抱きしめてくる
苦しくなるくらい、それは強く
kz「またお前ひとりで……ばか!ほんとに、!」
rm「ぁゔ、っ、ふっ」
kz「大丈夫だからな、怖いこと何もない、大丈夫」
kz「俺の声聞こえる?ちゃんとわかる?」
rm「か、ざね、っ、ぐす、」
kz「聞こえてるな?えらい、大丈夫、ほら、大丈夫、」
一生懸命自分を落ち着かせようとして、優しい声でがざねが語りかけてくる
息切れしているのが呼吸でわかる
今日は仕事もあったろうに、こんな時間に、ここまですぐにきてくれた、走ってまで
申し訳なさばかりが脳内を支配して、それでも彼の存在への安心感が混じり、頭が混乱を起こしていた
rm「ごめ、っごめん、ごめん」
kz「ぁやまるなってぇ…!っ、どうする、どうしたらいい、……っどうしたい?一緒に寝る?」
かざね自身も混乱してきたようで、焦りの混じった声色が自分に問いかけてくる
優しく撫でるその手も震えていて、それでも幾度となく抱きしめる力を強めてくれた
ねる……寝る?そんなことしたら、自分は、また、
rm「…ぃ”、い”、…ねる、のは、……ゃだっ、」
リズムよく背中を叩き出したかざねが、俺を眠らせようとしているのだと気づく
だめだ、今眠ったら、また、他でもないかざねたちから言葉のナイフを投げられる
それは辛い、もう、耐えられないくらいに辛い
いつも通り受け流すなんてできない、もうずっとずっと、一緒にいて欲しい、認めてほしいのに
kz「は、」
“……なんで、“
そんなかざねの言葉が小さく廊下に響く
不意に体の支えがなくなって、かざねの足音が鳴った
かちり、とスイッチの音がする…廊下の電気がつけられた
そばに彼がしゃがんだ気配がして、咄嗟に顔を合わせないよう俯いた
kz「…りもこん、顔見せて」
rm「っ!!…っ、」
肩を支えられて頰に手が触れる
顔を見られる、そんなことがあれば、深く生じたクマで、寝ていないことがバレてしまう
心配させてしまうか、……いや、まともに体調管理ができない奴だと失望されるか
反応が怖くて両腕で顔を隠し、ぐっと目を瞑った
kz「りもこんっ、!!」
己の行動に傷ついたらしいかざねが声を上げて、大丈夫だから、と俺の両腕を押し下げた
心配そうに揺らぐピンク色の瞳が視界に映る
なんとも言えない気持ちになって、すぐに目を逸らした
kz「…クマできてんじゃん……!!」
泣きそうな声をあげて、目下のクマをなぞる指が、少しくすぐったかった
それと同時に、溢れる寸前まで溜まっていた涙が彼の指に滑り落ちる
kz「なんでだよっ…旅行の時言ったじゃん…!」
彼の悲痛な声が、電話に出なきゃよかったとか、もっと早く頼っておけばとか、
ぐちゃぐちゃな相反する気持ちを生産して心の内側を取り巻いていた
体が熱い、さっきまで冷たかったのに、サウナに長時間さらされているかのように、嫌に熱い
だというのに、心の芯は消え切っているようで、体の内側から嫌な寒気が心身を蝕んでいく
rm(……あたまがいたい)
ごめん、ごめんねかざね
何か言いたいんだけれど、安心させたいんだけれど
来てくれてありがとうって、心配かけてごめんって、伝えたいんだけれど
……なんでか、上手く体が動かない
kz「っ!!!」
kz「り____、っ___________!!!」
かざねがなにか言ってる気がする
体が揺れてる気がする
…ねえかざね、おれ、どうしたら良かったんだと思う?
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