1時間後佳代が大荷物で戻ってきた。
栞「どうしたのその大荷物??」
佳代「変装するんだもの、これぐらい必要でしょ!こりゃ、腕が鳴るわ!」
(なんだか楽しそう。このまま大人しく才川家に連れ戻される訳にはいかない!)
栞「佳代、私を思いっきり別人にして!」
佳代「おうよ!!」
それから私達はおばさんが連れてきた人達と佳代の協力で頭からつま先までまるで別人の様に生まれ変わった。
栞「凄い……本当に別人みたい」
特徴のひとつであった長い髪をバッサリと切り、油で髪質を痛めた。
顔や手に黒子を増やし佳代の化粧技術で顔を変えた。
(垂れ目になってる。それに雰囲気もなんだかほんわかしてる様な)
佳代「良かったの?本当に切っちゃって。あんなに綺麗な髪だったのに」
栞「いいの。変装するって決まった時から覚悟してたから」
自分でも驚くくらいの別人っぷり。
さらに驚いたのは総悟さんの 姿だった。
ガタイの良さを隠すため重ね着で体型を隠し、髭も生やした。
イケメンな顔は佳代の手によって普通の男性と変わりない感じに仕上がった。
栞「誰ですか??本当に総悟さん?」
総悟「お前こそ本当に栞か??」
佳代「どうよこの技術! 」
栞「本当に凄いよ!まさか体型まで別人にするとはあの人達は何者なの?」
おばさん「うちの常連客さ」
おばさんが連れて来たのは芝居小屋の役者達で店の常連客だった。
おばさんから話を聞き「いつものお礼」という事で駆けつけてくれたそうだ。
ドンッドンッ
おじさんかと思い戸を開けると腹掛けに褌を着た男がいた。
飛脚「これを。銀次様宛の文です。では!」
そう言って颯爽と去って行った。
(あれは飛脚?初めて見たかも)
銀次「届いたか」
銀次さんは届いた文を早速開いていた。
栞「誰からですか?」
銀次「少し遠い町に知り合いがいてな、そいつ宛に文を送ったんだ。これはその返事の文だろう」
栞「さっき書いていたのはその知り合い宛の文だったんですね! 」
銀次「ああ。そいつのいる町にも才川家の悪評は良く耳にする程らしい。それ で考えたんだ。才川家を懲らしめる方法をな」
栞「懲らしめるって、 そんな事が本当に出来るんですか?」
銀次「ああ、可能だ。あいつも協力してくれるらしい」
銀次さんの言う『あいつ』が一体誰なのか気になるが、ひとまず皆を集めて作戦会議をする事になった。
栞「それで銀次さん。その懲らしめる方法って一体どういう事をするんですか?」
銀次「それはな、蒋済家の力を借りるんだ」
佳代「蒋済家?!」
(蒋済家??)
栞「あのー、蒋済家って何ですか?」
佳代「蒋済家を知らないの?!あそこは才川家と同じ階級の家なんだけど主人は笑わないで有名でおまけに近寄り難い雰囲気出してるから私達もどう接すればいいのか分からなの」
栞「だけど、もし協力してくれるんなら強い味方になるんじゃない?」
佳代「そうだけど……」
銀次「安心しろ佳代。俺の知り合いが蒋済家の一員と親しいんだ。話だけでも聞いてくれる筈だ」
作戦会議を終え銀次さん達と団子屋に向かっていると才川家の連中がいた。
どうやら私達を探しているらしい。だけど今の私は変装のお陰で別人だ。
連中も気付く筈も無く過ぎ去って行った。
(良かったバレてない。このまま団子屋に着けば…)
「おい!!そこの者止まれ」
振り返ると去って行った筈の連中の1人がいた。
その男には見覚えがあった。
私を連れ去る際にいた連中のひとりだ。
御家人「この辺で綺麗な長い髪の若い娘と長身の色男を見なかったか?」
栞「いいえ見ておりません…」
御家人「そうか。引き留めて悪かったな」
御家人は去って行った。声を変えたお陰でバレることは無かった。
町の人々も協力してくれて御家人には『見ていない』の一点張りで通してくれた。
(本当に優しい人達ばかりだ。才川家に連れ去られた側室達も解放しないと…)
夕方家に帰り夕飯の支度をしていると飛脚がやって来た。知り合いからの文らしい。
銀次さんは文の内容を見るなり悩んでいた。
栞「どうしたんですか?そんなに悩んで」
銀次「実は届いた文の内容がな…」
その内容というのは私達が直接蒋済家に行き蒋済家の主人を納得せねばならないとの事だ。
銀次「やはり一筋縄ではいかなかったか。明日その知り合いが城まで案内をしてくれるらしい。俺は一緒に行けないんだ」
栞「そうですか…。分かりました!総悟さんと2人で説得してみせます!」
銀次「頼んだ 」
栞「はい!そうと決まれば準備です!」
銀次「総悟、栞を頼んだ」
総悟「安心しろ。俺はあいつの護衛だ。何があっても栞には指1本触れさせねぇから 」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!