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ケリーは城下町にある騎士の寮に住んでいる。 リオが崖から落ちた直後は、城の地下にある牢に入れられていた。しかしリオの無事がわかり、ケリーが反省と謝罪の言葉を口にし、逃げないと誓ったので、寮に戻した。もちろん、見張りの者はつけている。
リオが仕事を再開した二日後の仕事終わりに、ゲイルに呼ばれた。ケリーと話す許可が降りたのだ。
庭で片付けをしていた所を呼び止められ、城の北側の小さな部屋に連れてこられた。部屋の奥にはもう一つ部屋があり、すでにケリーが待ってると言う。
リオは、ゲイルに|促《うなが》されるままに奥の部屋へ行こうとした足を止めて、振り返った。
「ゲイルさん、俺が落ちた時、ギデオンに知らせてくれてありがとうございました。ケリーを取り押さえてくれてありがとうございました。ゲイルさんが見ていなかったら、あの後もケリーに何をされていたかわかりません」
「…いえ、本来なら、君が落ちる前に防ぐべきでした。後手に回ってしまい、結果君は怪我をしました。申しわけない」
「そんな!ゲイルさんも、ギデオンのように分かりにくいだけで、良い人ですよね。…あの、ところで奥の部屋の声って丸聞こえですか?」
リオは恐る恐る聞く。
変な話はしないつもりだが、もしも魔法という単語が出たら、それは聞かれたくないと思ったのだ。
ゲイルはほんの一瞬、目を開いて無表情に戻る。
「いえ、壁が厚いので聞こえにくくなってます。ですが全くの無音ではない。なにか問題が?」
「いえっ、ケリーの返答によっては、俺が興奮しそうで…」
「ああ、ギデオン様から聞いてます。興奮されたらギデオン様が何とかしてくださるでしょう。ただ、ケリーが暴れたら怖いですから、やはり注意深く見張りはさせてもらいますよ」
「そうですね。わかりました。では入ってもいいですか?」
「ギデオン様がもうすぐ来られますので、待って……あっ」
リオは、ゲイルの言葉が終わる前に扉を開けた。そして後ろでゲイルが手を伸ばしたことに気づかずに、中へ入り扉を閉めた。
部屋の中には机と二脚の椅子があり、奥の椅子にケリーが座っている。左頬に窓からの西陽を浴びながら、リオを見て微笑んだ。
「やあリオ。久しぶりだね」
「ずいぶんと余裕だな」
「今日は君に会えると聞いて、楽しみにしてたんだよ」
「へぇ、それはどうも」
リオは椅子を引き、少し距離を取って座る。
その様子を目を細めて見ていたケリーが、口角を上げて笑った。