コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「だーかーらー…!ユキがいるから静かにしてろって…!」
俺は必死に声を抑えながら、今にも飛び出しそうな2人を宥める。
だが、その努力も虚しく高い声を上げユキのいる部屋を指さしたのは、リイカだった。
「だって!ユキちゃんがいるんでしょ!?避けてよそこ!!どけろや!!!!」
今まで見たことがない程口調が荒く、暴力的になっているリイカを目の当たりにし、俺は思わず怯んでしまう。
そんなリイカとは対称的に、先日来たばかりのコノハさんはかなり落ち着いた口調で喋り出す。
「まぁまぁ。見えないからと言って、そんな大きい声を出しちゃ喉が壊れちゃうわよ?」
「霊体だから壊れないでしょ。」
「あら、そうなの?」
のんびりとした口調でリイカを宥めてくれるコノハさん。
文字だけ見ているお前らは、コノハさんを大人しい人だとか、優しい人だとか思うかもしれない。
だが、目の前にいるコノハさんは口調は落ち着いてるものの、目は完全に血走っている。
とても怖い。
今すぐ大声を出して止めてやりたいが、生憎ユキは俺の声が聞こえるしそれが出来ないのだ。
万が一名前を呼んでしまったら、ユキを巻き込み更に収拾がつかなくなるのが目に見える。
心の中で必死にホープに助けを求めるが、あの様子だと暫くユキを離すことは無いだろう。
「頼むから一旦落ち着いてくれ…。ユキにお前らがいるってバレたら本当に終わりだから…!」
必死の思いで伝えると、何とか2人は落ち着きを取り戻し前に出かかっていた足を引っ込めた。
ホッと胸を撫で下ろすと、明らかに不満そうな顔をするリイカと目が合う。
「私に関しては会いに行ってもよくない?だってユキちゃんが見えてるのはキョウカだけでしょ?」
「お前が1番会わせたくないんだよメンヘラサイコパス。」
反射的に言い返すと、リイカはでかい目を丸く更に大きく見開き、「へぇ?」と低い声を出す。
一呼吸置いてから短く謝罪を述べると、少しは落ち着いたようにも見えた。
昔から、リイカはあぁなのだ。
気に入らないと強く圧をかけて、無言で謝罪を要求してくる。
流石お嬢様と言うところだろうか。
2人にバレないように小さくため息をつくと、諦めたのかコノハさんは嫌がるリイカを引っ張って、この場を去って行った。
姿が見えなくなるまで2人を見守った俺は、またユキのいる部屋へ戻ろうとする。
すると、部屋の中から声が聞こえた。
「帰ります。すみません、こんなにしていただいて。」
先程とは違う、焦ってるのか早口になってる声。
咄嗟に俺はドアノブに手をかけた。