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🎧短編「変わらないまま」
夜。
部屋。
ソファ。
気づけば、当たり前みたいに隣。
距離は、もうゼロ。
琉夏は、完全に寄りかかってる。
冬星の腕も、自然に回ってる。
最初は“たまたま”だったのに。
今は、これが普通。
琉夏「……重いって言えよ」
冬星「言ってる」
琉夏「聞いてねえ」
短いやり取り。
でも。
どかない。
テレビの音が流れる。
内容は、全然頭に入ってない。
ふと。
冬星「明日さ」
琉夏「なに」
冬星「リハ、ちょっと遅くなる」
何気ない報告。
でも。
ほんの少しだけ、間が空く。
(……あ)
理由なんて、分かってる。
ただ、それだけなのに。
いつもより、少し遅くなるだけなのに。
なぜか。
琉夏「……そっか」
短く返す。
それで終わるはずだった。
でも。
体が、少しだけ動く。
寄る。
さっきより、深く。
冬星「……なに」
琉夏「別に」
即答。
でも。
腕を、少しだけ掴む。
(……なんでだよ)
自分でも分かる。
ほんの少しだけ。
“足りない”って思った。
その理由が、分かってしまう。
(……まじか)
黙る。
冬星は、何も言わない。
でも。
腕の力が、少しだけ強くなる。
包まれる。
それだけで、落ち着く。
少しして。
冬星「……すぐ終わる」
ぽつりと言う。
(……言わなくてもいいのに)
そう思う。
でも。
少しだけ、嬉しい。
琉夏「別に」
いつもの返し。
でも。
そのまま、離れない。
沈黙。
でも。
さっきまでと違う。
少しだけ。
“失うかもしれない”っていう感覚。
それが、ほんの一瞬だけよぎる。
でも。
すぐ消える。
腕の中にいるから。
触れてるから。
ここにいるって、分かるから。
琉夏「……なあ」
冬星「なに」
少しだけ間。
琉夏「ちゃんと来いよ」
ぽつりと言う。
それだけ。
でも。
意味は、十分。
冬星は、少しだけ目を細める。
冬星「行く」
短い返事。
それで、安心する。
また、静かな時間。
距離は、変わらない。
でも。
さっきより、少しだけ強くなった。
繋ぎ止める力。
言葉にしないまま。
それでも。
ちゃんと、続いていく。