テラーノベル
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『昨日、人を殺したんだ…w』
目の前にしずかに佇む“キミ”は自嘲的な笑みを浮かべながらそう言った。
その日はやけに気温が高く感じて 蝉の鳴き声さえも、うざったらしく思えた。
「ぇ…、殺したって…どういうことッ…?」
目の前の“ソイツ”はただでさえ白い肌を、更に血の気が引き青白くしながら聞いた
疑問に思うのも当然だろう
急に家を訪ねて来たと思えば、一言目が「人を殺した」なんて
土台、信じるのも難しい話だ
「殺したのは隣の席のいじめっ子だ……」
「嫌になって、肩を突き飛ばして………打ち所が悪かったんだろうな…w」
“キミ”はそう言いながらまた自嘲気味に笑った
まるで自らの人生を諦めたかのように
「もう普通には過ごせない…」
「オレは……どっかで死んでくるさ…w」
そう言う“キミ”の目には何も映っていなかった
私のことも…自らのことも…
光を失った死人の様な目をしていた
「………じゃあな…もうこれで最期だ…w」
“キミ”は此方に背中を向け、その場を去ろうとした
その時、私は咄嗟に腕を伸ばし“キミ”の腕を掴み“キミ”を引き止めた
振り返った“キミ”は驚きと困惑が入り混じった表情で私の目を見つめた
「……待って…私も一緒に行かせて…?…」
“ソイツ”はオレの腕を掴み引き止めたかと思えば、
何とも突拍子もないことを言い出した
“ソイツ”の目にはオレを止める気はないという意思と不安が浮かんでいた
「……後悔しても知らねぇからな… 」
私の言葉を聞き、“キミ”は少し安堵の表情を見せながらそう言った
“キミ”の為なら私は幾らでもそばにいてみせるし、その行動に後悔なんて一寸たりともない
私は決意の表情を見せながら“キミ”に言った
「後悔なんて、今更しないよ」
“ソイツ”は強い決意が宿った瞳でオレの顔を見つめた
それからはひたすら逃げた_。
嫌な現実から、やりたくないコトから、縛ってくる大人達から、
何もかもから逃げた
やりたい事をやりたいだけやった
2人でひたすら自由を楽しんだ
「何時までもこれが続けばいいね…」
「あぁ…… 」
「もしかするとこの先、2人とも死ぬ運命かもしれない」
「それなら、それまでを謳歌すればいい……だろ…?w」
「確かにそうだな…w」
幸せの道はこの先何日も、何週間も、何ヶ月、何年だって続くものだと思っていた
でもその幸せを失って始めてそれが薄い硝子の上にあったものだと気付く
自分の大切な人は不思議とこの先ずっと生きているものだと思ってしまう
そんな保証は何処にもあるわけじゃないのに_。
私と“キミ”は宛もなく道を歩き続けた
資金も底をつきかけ、水分不足で視界が陽炎の如く揺らいで見えた
そんなところにも現実は無慈悲に降りかかる
「速くッ…まだ走れる?…」
追ってきた大人達から逃げて逃げて逃げ続けた
でも限界がきた
オレは“ソイツ”に言った
「もう潮時だな……w」
“キミ”は静かにそう言った
何を言っているのか最初は分からなかった
でも刹那にそんな考えは吹き飛んだ
“キミ”は何処からかナイフを取り出し、自らの首筋に当てた
「ッ!?!?、何やってんのッ……まだッ…」
追手の足音と声が段々と迫りながらも“キミ”は
迷いなくナイフを持つ手に力を込めようとした
私は必死に止めようと“キミ”に向かい一歩踏み出したその瞬間_
「お前が居てくれたからここまで来れた」
「でもな……もういいんだ…もういいんだよ………」
「死ぬのはオレだけでいいんだ…w」
_。
その刹那、“キミ”はナイフで首を切った
まるで映画のワンシーンの様にスローモーションのように見えた
辺りには赤い飛沫が飛び散り、海のように鼻を裂くような匂いがした
そこで私は気絶したのだろう
それ以降の記憶がない
目を覚ますとそこは知らない天井だった
恐らく病院だろう
私は起きてすぐ“キミ”を探しに行った_。
でも何処にも居なかった
“キミ”は何処にも居なくて_。
“キミ”だけが何処にも居なかった_。
それでも時間の流れは止まってくれない
過去は幾ら望んでも変わらないし、変えられないのだ
あれ以降、夏になると“キミ”を思い出す
まるでアニメのように鮮明に_。
「会いたいよ……中也…」
そう呟く私の前には誰も居ない
私に出来ることは、この名前を呼び続けることだけだ_。
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文スト二次創作
太中
年齢改変(17歳設定)
曲パロ(あの夏が飽和する/カンザキイオリ様)
コメント
2件
やばっ!✨✨ 神すぎる……︎💕︎︎😇🪽 切ない………けど、最高です👍🏻⟡.·