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若井 side
楽屋に入ったら、元貴がソファで仰向けに伸びていた。
動く気配がないのでおそらくうたた寝している。
スタッフと立ち話してたしちょっと待たせたかと時計を見上げたけれど、時間的にはそんなに経っていない、疲れだろう。
靴音に気を遣うこともせず近づいてしゃがみ、元貴の顔を覗き込む。
ほらやっぱ寝てる。
少し前髪がかかったまぶた、取れなくなってきた目の下のクマ、あどけなく開いた唇。
全部元貴だなぁって思う。変わってきた元貴も昔から変わらない元貴も、全部元貴。
「おつかれさま」
小さくつぶやいて人差し指で前髪を払ってやった。
少しすれば目を覚ますだろとおなかの上に伏せられていたタブレットをどかしてやる。
元貴の足元に腰を下ろしてタブレットで時間をつぶすことにした。
10分くらいで起きなかったら声かけようかな。
タブレットは動画の再生が終わった状態で、俺はとりあえず動画の再生ボタンをタップした。
眠っていたわんちゃんがごはんだよーのひと声で飛び起きるなり飼い主さんの周りを走り回っていた。
かわいらしい姿に笑みがこぼれる。
………元貴も好きなものの名前聞いたら起きるのかな?
軽い思いつきで、タブレットを操作する手はそのままに首だけ元貴の方に向ける。
目は閉じられたままだ。
「と、トマトパスター」
小さな声で言ってみても、起きる気配が全くない。
「ぷりんー」
「おにくー」
食べ物はあんま聞かないか?
「タピオカー?」
笑うようにむにむにと閉じられた口元に勝機を見出した。
もう少しで起きるはず。
他に好きなもの……
「わ、わかいー?」
「ブハァッ」
「ちょっ!?起きてた!?」
「え!いつから!?」としつこく肩を揺さぶって訊いても、おなかを抱えてずっと笑ってて結局教えてくれなかった。
コメント
1件
自分からわかいって言っちゃう若井さん罪。まじで可愛いすぎる。ありがとうございます。