テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
MAKO
『今日もいい天気だな・・・今日も執事たちと穏やかに過ごせますように』
犬の吠える声と、朝から元気に体操をしたり訓練をしたりしている声を聞きながら窓を開ける。
きっと今日も穏やかで良い日になる・・・はずだった
ーどんどんどんどん
ーガチャガチャ、ガチャン!
ーどかん!!
侵入者らしい。
どうやら玄関をぶち破って主の部屋まで駆けて来ている。
主が身構えると、ドアが勢いよく開いて長髪の子供が飛び込んできた。
【主様っっ!!!!】
その子供は主にとても馴染み深い人物であったため、主は気が抜けたように笑って子供を抱きとめた。
『お前か、ノアール』
【主様!帰ってきたと思ったら沢山の人間もどきを連れてきて引っ越しちゃうんですもの!
僕がどれだけ心配したと思っているんですか!?】
ぷくっと頬を膨らませ抗議する子供はノアールという主の使い魔だった。
主が幼い頃から一緒に暮らしていた猫で、死んだ時に魂を回収して使い魔として生まれ変わらせたのだ。
ノアールは主の胸に顔を埋めて甘えるようにすり寄っている。
こういうところは猫の時と変わっていないな、と主がノアールを撫でていると、執事たちがバタバタと侵入者を捕獲するべく部屋に入ってきた。
「おい!!お前!!主様から離れろ!!」
「主様、すぐに助ける!!」
「主様!ご無事ですか!?」
1階組がキッチンから慌てて来てくれたらしい。
手には包丁とお鍋の蓋を持っている。
『皆、落ち着いてくれ・・・この子は私の使い魔なんだ』
「使い魔・・・」
「使い魔ですか?」
【そうです、この私こそ主様に仕えるのがふさわしいのですよ。
人間もどき共、私の主様を気安く主と呼ぶのを辞めてくださいませんか?不快ですので】
ノアールは心底不愉快だという様子を隠さずに眉を寄せ、主を庇うように立った。
『こら、ノアール・・・この人たちは私の大事な執事なんだよ。そんなこと言わないで』
【執事ですか?これが?】
ノアールが調理着を着ているバスティンとロノを鼻で笑う。
【下男の間違いでは?】
『ノアール!!命令だ!!この人たちを侮辱することは許さない!!』
執事たちを貶されて腹が立ち、主は声を荒げてノアールに命じた。
【っ・・・かしこまりました、主様のご命令とあらば従います】
ノアールは深々と主に頭を下げた。
『皆済まないが、ノアールも一緒に住むことになる。私と一緒の部屋で寝起きするからよろしく』
朝食を食べながらそう説明すると、執事たちは羨ましいだのずるいだの文句を言ったが、自分たちよりもうんと仕えている時間が長いことなどをノアールに説明されて渋々了承した。
『ノアール、皆と仲良くしなくてはいけないよ?』
【どうしてでしょうか。僕は主様にお仕えできることだけが幸せです。この人間もどき達と仲良くするメリットを感じませんが】
『ノアール・・・私は執事たちが大好きなんだ。だからノアールにも執事たちを好きになって欲しい。
それではダメかな?』
ノアールは唇を尖らせて嫌そうに
【分かりました】
とだけ返事をした。
主がノアールの寝床を用意した後、ノアールは暇を持て余してハウレスの飼っている子犬と遊んでいた。
【子犬、お前の主人は誰です?】
「くぅん?」
【違います、あの短髪の男は主人ではありません】
「わんわん!」
【違わない、ですって?では主様はなんだというのですか?】
「ワン!」
【おやつをくれる人・・・?なんですって、許しませんよ子犬!主従関係を叩き込んであげます!】
「くうん・・・」
ノアールは元々猫だったのである程度動物と話せるのだ。
それで子犬が主をおやつ係と思っていることに腹を立て、子犬に主が一番偉い人だと教え込んでいたのだった。
昼食の後、ノアールを連れて主は食材の買い出しに付いていくことにした。
ロノとバスティンは今朝のことがあったため、ノアールに対してあまり良い印象を持っていない。
それを何とか払拭したくて主はノアールを買い出しへ連れて行くことにしたのだ。
【主様、市場に行かれますか?それとも商店に?】
「市場なんてこの辺にあるのか?」
【いいえ?転移魔法で買い物に行くのですよ?】
「転移魔法?というのは?」
【全く、何も知らずに主様にお仕えしているだなんて】
『ノアール!
・・・転移魔法というのはその名の通り移動できる魔法のことさ。こっちの世界に来た時に使ったのもある種の転移魔法だ。あれのもっと簡単なものだと思ってくれたら良い』
何かとマウントを取りたがるノアールに辟易しながら、主は転移魔法の説明をする。
ノアールは主の声にうっとりと聞き入って主にすり寄っていく。
主はそんなノアールを軽く撫でてやり、市場に向かって転移魔法を展開させた。
[いらっしゃい!]
[安いよ安いよ〜!]
活気あふれる市場の入口に立ち、ロノとバスティンは目を輝かせた。
『ここは街の端っこの方にある市場なんだ。
ここなら安くて質のいい野菜や肉が手に入るから』
[おや、魔法使い様ではありませんか]
主が説明していると、1人のおばあさんが主に声を掛けた。
【何用でしょうか?】
[うふふ、使い魔様もお元気そうで・・・
よろしければこちら、受け取っていただけませんか?魔法使い様が守ってくださった村で採れた野菜です]
【ありがとうございます】
『ありがとう・・・間違っていたらすまない、君は〇〇村で会ったお嬢さんかな?』
[あら!覚えていてくださったのですか?]
おばあさんは嬉しそうに笑って昔話をしてくれた。
かつて、世界には魔物がウヨウヨとしていて人間を襲っていた。
それを魔法使いと使い魔、そして勇者たちが打ち倒したのだ。
魔法使いと勇者たちは英雄と呼ばれて今でも信仰されている。
ざっくりまとめるとこんな話だった。
主は照れくさそうに害獣駆除をしただけだと言った。
そんな事があって、主について少しだけ知ることができたロノとバスティンは市場で食品を買い込み、屋敷に転送してもらったのだった。
【主様がすごい方だと、少しは分かりましたか?】
生意気にそう聞いてくるノアールにそうだな、と返事をして主のことをもっと教えて欲しい、と賄賂に干し肉を渡したのだった。
コメント
1件
あっ、これめっちゃ好きなやつだわ!第6話、読み終わったよ〜! ノアールのヤキモチ全開な感じ、猫の頃から変わらん主への執着がにじみ出てて最高だった。「人間もどき」呼ばわりでバスティンとロノにケンカ売るとことか、子犬に「主様が一番偉いって教え込む」くだりとか、猫あるあるすぎて笑った😂 あと、主が英雄だった過去がチラ見せされたのも熱い。普段は穏やかだけど、いざって時の強さが感じられる描写が刺さるわ。転移魔法で市場に飛ぶシーンも、世界観の広がりがあってワクワクした。 次回も絶対読む🔥 更新楽しみにしてる!