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「そうだよ。エリアーナはここによく来ているんだよね」
「…はい…」
「エリアーナは、読書が大好きで寝食忘れて読むぐらい好きだって知っているよ。」
「そうなんですね…」
殿下と話しながら馬車から降りる。
わたしが本好きであるとか、寝食を忘れて読んでしまうとかを殿下に話したことはないはず。時々、本を借りに王立図書館に来ていることも、どうして知っているんだろう。
「国民に迷惑をかけてはいけないから、貸切にはしてないよ。エリアーナはそういうのを心配するでしょう。安心して。ただ、エリアーナと一緒に図書館に来てみたかったんだ。君がどんな分野の本を好んで読むのか知りたかったし、エリアーナと本について語りたかった。そして、俺の好きな本とか、俺のことも知ってほしい」
エスコートをされながら横で歩くわたしをチラッと見て、真っ直ぐに前を見据えて話される。
勇気を出して聞いてみよう。
いまなら聞ける。
「あの…キャロル嬢とは来ないんですか?なぜわたしなんですか?」
横にいるアーサシュベルト殿下がゆっくりわたしの方を見る。
「逆に聞くよ。なぜキャロル嬢なの?どうしてエリアーナと一緒は駄目なんだ?」
なぜって、殿下がキャロル嬢と親しくされているから…で。
言いたいけど、感情的にはなってはいけないと言葉を呑む。
殿下は足を止められると、人払いの合図をされて、護衛の騎士様が足を止められた。
「エリアーナと芝生の広場にいる。ここで待っていて」
図書館へのアプローチから外れて、図書館の横にある芝生の広場に向かう。その真ん中にある大きな木の下まで来た。
殿下がハンカチを敷いてくれて、そこに座るように促され、ふたりで並んで座った。
「さっきの話。キャロル嬢とはそういう仲じゃないよ」
殿下がわたしを真っ直ぐにじっと見られる。
嘘つき…
そっと、 心の中で呟く。
「俺はね。自信がなかったし、素直になれなかった」
「えっ?」
殿下の思いがけない言葉に驚く。
「俺はエリアーナのことがずっと好きだ。でもエリアーナが俺のことをどう思っているのか、この3年間ずっと自信がなかった。」
春の殿下と言われ嫌味なぐらい眩しい貴方がなにを言っているの?
確かに殿下に恋をすることを知る前のわたしは貴方からの愛を諦めて、貴方から逃げることをずっと考えていた。
「先日のランチの時にエリアーナは、キャロル嬢に嫉妬してくれたよね。あの時は酷いことをしてごめん。でも、執務室でキャロル嬢にランチを食べさせてもらっているときにエリアーナが嫉妬してくれたのが手に取るようにわかって、それがすごくうれしかったんだ。嫉妬がうれしいだなんて、俺は最低だよな。エリアーナを試すような真似もして申し訳なかった。あれも全てキャロル嬢の協力でわざとなんだ」
こんな殿下を見たことがない。
いままで見てきた殿下はわたしに対して塩対応の殿下でまさか、わたしを好きだったなんて。
それこそ、最近は殿下の瞳がわたしを熱っぽく見ていることには気づいていたけど。
「エリアーナが俺のことを少しでも意識してくれている、好きになりかけてくれていると思っていいか?」
真っ直ぐわたしに向けられる深い緑の瞳。
不安気なその表情になんと声を掛けていいのか、戸惑う。