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キュイ視点


フィオちゃんと一緒に作った料理を出来上がった順にテーブルの上に並べていく。

温野菜のスープにソーセージとキノコのソテー、ポテトサラダの3品。

どの料理にも見たことのない食材が使われている。

フィオちゃんと一緒に料理をするのは初めてで、すごく新鮮な感じがした。

僕が作る料理は手間暇をかけて最高の仕上がりを目指している。だから作業工程が多いし、調理時間も長くなりがちだ。それに比べてフィオちゃんが作る料理は素材を活かしたシンプルなもの。レストランで出す料理と家庭料理では少し違うかもしれないが、少ないコストパフォーマンスの中で最高の料理に仕上げることはそんなに簡単じゃない。

温野菜のスープは寒い季節にはぴったりのほっと一息つけるような優しい味わいで、野菜たちにも出汁が染みてトロトロになっている。

ソーセージとキノコのソテーはバターで炒めただけなのにすごく美味しい。ソーセージの肉汁と塩味がキノコにも移っていてぷりぷりしたキノコの食感も食べていて飽きない。メインのソーセージは香草入りのようで、普段とは違う味わい。ソーセージの外側はカリカリで中は粗挽き肉がぎっしり詰まっていて食べ応えもある。

ポテトサラダも美味しくてしっとりねっとりとした芋の食感と香草のいい香りがふわりと鼻に抜けた。

「すごく美味しいね!食材の良さがすごくわかる。あんなに短時間で少ない調理工程からは想像できないくらい美味しい!」

「キュイ様が手伝ってくださったおかげです。普段はもう少しかかりますから。」

そう言ってフィオちゃんはまるではしゃぐ子供を見守る様なやわらかい視線で僕を見ていた。

「フィオちゃんも食べて食べて。」

僕は少し恥ずかしくなって手が止まっているフィオちゃんにそう言った。

「はい。いただきます。」

そう言ってフィオちゃんは手を合わせてから食べ始めた。

「本当に美味しいですね。」

そう言って笑うフィオちゃんを見て、笑顔になってくれてうれしいのに、なぜかそれと同じくらいの不安感が一気に押し寄せる。

フィオちゃんの笑顔はどうしてかとても辛そうで、大丈夫だよ。となんの脈絡もなく言ってあげたくなる。

もし、座っている席が隣だったらよしよしと頭を撫でていたかもしれない。

「キュイ様?」

フィオちゃん自身にフィオちゃんの表情が見えていないからなのか、僕の顔を見てどうしたのかと言うように目が合う。

「え、あ、うん?なにかな?」

さっきはあんなに辛そうに笑っていたのにそれが嘘のように形を潜めている。微かな違和感に胸の辺りがざわざわする気がした。

「この後のことですが、先にお風呂に入ってください。服は多分、替えがあると思うのでみてきますね。」

「あぁ、うん。ありがとう。」

この後、僕はフィオちゃんの微かな違和感の正体がなにかわからないまま、お風呂に入ってすぐ寝てしまったのだった。

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