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「そっち飲ませて」
「……なぁ。あんたこそ前から思ってたけど。 ほんとに勝つ気ある?」
呆れ気味に言われ、私は頬を 膨(ふく)らませた。
ポーカーはこれで10戦10敗。 負け越しだ。
「……あなたこそ、なんでそんなに強いの?」
「あんたとはここが違うんだよ」
低い声で呟くと、 佐伯(さえき)は私の額を軽く 小突(こづ)いた。
むっとしたけど、下手に口を開いて、さっきのことを持ち出されても困る。
”俺が勝ったら、
望月千夏(もちづきちなつ)のことを聞かせて”
あれには正直動揺した。
からかっただけでも、本当に聞かれたら答えに詰まるし、思い出すと変に体が熱くなる。
額に手を当てていると、彼はトランプをしまい、腕時計に目を落とした。
「あぁ、そろそろ昼か。 なにか食べたいものはある?」
言われてみれば、足元の影がとても短い。
もう正午な************
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