体育館には静かな空気が流れていた。
「起立」「礼」そんな声が響くたびに、胸の奥がざわついて落ち着かない。
僕は、前の席に座っている 狐の背中を見つめていた。
背筋がまっすぐで、制服の第一ボタンまできちんと留めている。
いつも通りの落ち着いた雰囲気――それだけで心臓が少し苦しくなる。
その横で、般若がわざとらしく椅子を引いた音を立てた。
「……終わったら話がある」
般若が小さな声で狐に言う。低くて、感情を隠している声。
狐さんはゆっくりと顔を向け、穏やかな表情のまま答えた。
「えぇ、もちろんです。後でお話、しっかり聞きますね」
その一言で、般若の眉がほんの少しだけ動いた。
言葉にしない張り合いが、そこにあった。
すぐ後ろの席では 隈取が僕の肩を軽くたたいた。
「阿形。顔、強ばってるぞ、深呼吸な」
それだけなのに、不思議と胸が少し楽になった。
彼はいつもこうやって、余計な言葉を足さない。
隣の席では おかめが小声で言った。
「阿形、緊張してるの、?大丈夫だよ、阿形はちゃんと立てるよ」
そう言って微笑むけれど、その声は恋の色をまったく含んでいない。
だからこそ安心できる言い方だった。
司会の声が響く。
「このあと最後のチャイムが鳴りましたら、卒業証書授与に移ります」
最後のチャイム。
それが鳴ったとき、僕たちの関係がどうなるのか――考えるだけで胸が痛くなる。
だけど、すべてはもう始まっていた。
入学式のあの日から。
お久しぶりです。
投稿をお休みしていた理由は、普通に疲れてたりしてただけです!
今は元気なのでご安心を!
コメント
4件
お久しぶりです〜!久しぶりですがやはりこはさんのノベルが1番好きっすね〜!ノベルって長すぎてもちょっと目が疲れてくるし短いとなんか話が入ってきませんが、こはさんのノベルはちょうど良くて次のお話が気になるんすよね〜