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40 - 第四十話「崩壊前夜、歌えないバトル」

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2025年07月26日

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深層の部屋に、重たい空気が満ちていた。


ないこがギターを握ると、白吼は無音のマイクを手に立った。

楽器ではない。武器でもない。

それは“存在証明”を賭けた、ふたりだけの道具。


冥晶:「……あのマイク、普通じゃない。

    たぶん、“響導研究所”が作った感情制御型……!」


白吼:「察しがいいな。

   “感情の音域”を奪い、上書きする装置さ」

白吼:「お前の声も、歌も、感情も――全部、俺のものになる」


ないこ:「……ふざけんな。

    お前が誰でも、俺の声は、俺だけのもんだ」


白吼は笑わない。

その瞳は、誰にも期待していない者の冷たさを湛えていた。


白吼:「なあ、“ないこ”。

   もしお前が、何も失ってこなかったら――

   俺たちは入れ替わってたかもな」


ないこ:「……それでも、お前じゃない。

    お前には、“冥晶”がいない」


冥晶:「!」


その名を呼んだ瞬間、ないこの背に音が灯った。

記憶。後悔。怒り。叫び。

全部を抱えてきた“冥晶”の音色が、ないこの音に溶ける。


ないこ:「俺たちは“共鳴”してる。

    だからもう、お前に奪われるもんなんか、ねぇよ」


白吼のマイクが振るわれた。

無音の波が空間をえぐり取るように襲いかかる――が。


その音は、ないこがかき鳴らすギターの旋律で弾き返された。


白吼:「……!」


ないこ:「“音が出ないバトル”ってのも、悪くねぇな。

    お互い、声のない過去で生きてきたんだ。

    だからこそ、音だけでぶつかろうぜ」


ギターとマイクが、火花を散らすように衝突する。

音はない。けれど、心が響き合う激しさは、世界を揺るがすほどだった。


それはまさに、“音楽”そのものだった。


冥晶:「(……見せてやれ、“ないこ”)」

冥晶:「(お前が、壊れたままで終わらなかった理由を)」


そして――


遠く、現実世界のモニターが、ざざっとノイズを吐いた。


“響導研究所”のデータベースに、

何者かのログイン履歴が記録される。


【B-00:再起動】

【音響中枢との連動:開始】


闇は、まだ終わっていなかった。




次回:「第四十一話:声なき反響、白吼の過去」



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