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昼休み。学食の喧騒から切り取られたような、ほんの小さな音が響いていた。
「カチャ…」
フォークがトマトをそっと突き刺す音だけが、愛梨の“無音の島”に響き渡る。
誰とも目を合わせず、ただ淡々と口へ運ばれるトマト。
見た目はほんのり赤く、甘酸っぱそうなのに――その味は、愛梨の心の中ではただの“無”だった。
(私、望月愛梨。高校一年生。今日もボッチ、でーす……)
愛梨のビジュアルです⤴︎
心の中で呟くその言葉に、少しだけ寂しさが混ざっているのを彼女は認めたくなかった。
「別に、寂しくなんかないし。話すのが苦手なだけだし……うるさいのは苦手なんだもん」
でも、ほんの少しだけ、
「誰かに話しかけてほしいな」――そんな気持ちが芽生えるのは、どうしてだろう。
その瞬間――
フォークからトマトがこぼれ落ちた。
「ポトンッ」
制服の袖に、赤いシミがつく。
まるで運命の血痕のように、彼女の平穏な日常に小さな“歪み”が生まれた。