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Episode 4『秘密を暴く音』
放課後の廊下。
生徒たちがぞろぞろと寮へ帰っていくなか、アメリカは一人、屋上へと続く階段を駆け上がっていた。
「日帝ちゃん……いるよな、きっと……」
昼間、ソ連との会話で少しだけ冷静さを取り戻した。
逃げるんじゃなくて、向き合おう――そう思ったから。
ガチャ。
「……!」
ドアを開けた瞬間、アメリカの目に飛び込んできたのは、
フェンス越しに佇む日帝の後ろ姿。
夕日がフードの影を伸ばしていて、その輪郭はひどく遠くに見えた。
「日帝ちゃん……!」
声をかけると、ピクリと反応するその背中。
だが、振り返らない。
「ごめん、今朝は……俺、なんか余計なこと言っちゃったかもって思ってて……」
沈黙。
「でも、どうしても気になってさ。日帝ちゃんのこと。
もっと知りたいって、思って……」
そのときだった。
風が強く吹き、フードがはらりとめくれた。
「――!」
あらわになった、猫耳。
夕焼けに照らされ、朱色の目とともに、確かにそこに“異質”があった。
アメリカは息を呑む。
「あっ……!」
日帝は慌ててフードをかぶり直し、距離を取るように一歩下がった。
「……見たな」
その声は震えていた。
「ごめん……!違うんだ、そんなつもりじゃ――!」
「……なぜ、何も言わなかった」
アメリカは、ゆっくりと日帝に近づく。
「だって、別に。猫耳でも、日帝ちゃんは日帝ちゃんだろ?」
その言葉に、日帝は目を見開く。
「俺にとっては、大事なルームメイトで……気になる存在で……
もっと一緒にいたいって、そう思っただけだよ」
……沈黙。
だが次の瞬間――
「――それは、困るな」
屋上のドアがギィと開き、影がふたりの間に差し込んだ。
現れたのは、ナチス。
その赤い目は、何もかも見透かしているかのように鋭い。
「個人の秘密を軽く暴くことは、学園の秩序に反する」
「ナチス……!」
「日帝。君は、生徒会の副会長だろう?」
その冷たい声に、日帝の体がわずかに震える。
「これ以上、個人的な感情に流されるなら――
君の“正体”を公にしても構わない」
その言葉に、アメリカの目が見開かれた。
「おい……それって脅しじゃん!」
ナチスは無表情で言い放つ。
「秩序のためなら、どんな手段もとる。俺はそういう人間だ」
その背後で、静かに佇んでいたイタリア王国が小さくため息をついた。
「またナチス、強引なこと言ってる……」
だがアメリカは、日帝の前に立ちはだかるように一歩前に出る。
「やめろよ。日帝ちゃんのことは、俺が守る」
ナチスの目が鋭く光った。
「……そうか。なら、抗ってみせろ。
お前に、その資格があるなら、な」
そのまま踵を返し、ナチスは去っていく。
夕焼けに染まる屋上に残されたのは、アメリカと日帝、そして不穏な空気だけ。
次回――
Episode 5『守るって、何を?』
秘密を知ったアメリカ。
揺れる日帝の心。
ふたりの距離に、ナチスの影がじわじわと忍び寄る。