※二宮和也×大森元貴さんの短編小説です。
一部センシティブのため、苦手な方はスルーして下さい。
※この物語はフィクションです。
「こちら、主題歌を担当された、Mrs. GREEN APPLEの大森さんです」
その紹介の声が響いた瞬間、
大森元貴は、ほんのわずかに胸の奥がざわつくのを感じた。
――今、自分の前に立っているのは、
ずっとテレビ越しに見ていたあの人。
あの、二宮和也だった。
嵐の一員として、スターとして、
そして演技者としても、音楽好きとしても、
自分の“憧れの領域”にいた存在。
(やばい、ほんとにいる……)
唾を飲み込んだ。
リハーサルの時とは違って、今日の撮影は本番。
映画『ラーゲリより愛を込めて』の取材を兼ねたクロストーク番組の収録。
“主題歌担当”としてゲストで呼ばれた自分は、
まさか本当に、あの二宮さんと並んでカメラの前に立つとは思っていなかった。
「よろしくお願いします」
二宮が軽く頭を下げ、隣に腰を下ろした。
一つ一つの仕草に、長年の芸能キャリアの余裕が滲み出ている。
隣にいるだけで、自分のテンポが狂うような感覚。
大森は笑顔を保ちながらも、内心では心臓が小さく跳ねていた。
「緊張してる?」
二宮がふとこちらを見て、軽く笑った。
「……ちょっとだけ」
「顔に出てるよ。“ずっとテレビで見てた人だ……”って顔してる」
「えっ……!」
図星すぎて、思わず俯く。
けれどその表情を見たニノが、面白そうに笑った。
「よく言われる。でも、そう思ってもらえるのは嬉しいよ。
……ていうかさ、めちゃくちゃ聴いたよ。『Soranji』。歌ってくれて、ありがとね。」
「……こちらこそ、ありがとうございます」
一気に息を呑む。
“テレビで見ていた人”が、自分の歌を知ってくれた。
その事実だけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
けれど、ニノはすぐに空気を切り替えるように、くいと顎を傾けた。
「で? 君は俺に、どんなイメージ持ってたの?」
「えっ……」
「“二宮和也”って、どんな人だと思ってた?」
不意に向けられた視線に、呼吸が詰まりかける。
どこか試すような目。
まるで――駆け引きを始めようとしているみたいな空気。
「……飄々としてるけど、すごく人の心を読むのが上手な人」
「へぇ、よく見てるじゃん」
ニノは笑って、脚を組み直す。
「俺ね、人のこと観察するの好きなんだ。
だから、今日こうして君と話せて、いろんな意味で興味湧いてる」
「いろんな意味……?」
「うん。“どんな声で話すんだろう”とか、“目を逸らす癖あるな”とか、“表情が歌詞に似てるな”とか」
(……やばい)
完全に、目を合わせられなくなった。
「そんな風に見ないでくださいよ」
「なんで? 恥ずかしい?」
「そりゃ……」
「可愛いね」
静かに、笑いながら言われたその言葉。
大人の余裕と、どこか小悪魔的な距離感。
憧れは、憧れのままで終わると思っていた。
けれど――
“この人は、俺を見てる”
そう感じた瞬間、
元貴の中の何かがゆっくりと、確かに熱を帯び始めた。
(……この人、面白い)
ただの一方通行のファンじゃない。
これはもう、視線の応酬だ。
「じゃあ、俺も……」
少しだけ勇気を出して、視線を向ける。
「二宮さんのこと、もっと知りたいです」
ニノの目が、かすかに見開かれる。
そして――
「へぇ。
じゃあ……ゲーム、始めようか?」
その声は優しくて、でも確かに挑発的だった。
コメント
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あらららら🫢 新しいやつきちゃ…!!! 1話目からもうやばいよ色々と…!!!💞 続き楽しみにしてます!✨