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春が来たらしたいこと。
いっぱいあるけど、絶対にしたいことは
君に会うこと。
僕はあと3ヶ月。たった3ヶ月の命だ。
毎日ひどい頭痛に襲われ吐血を繰り返す日々。
こんな生活が続いて2年。くだらない。
あと3ヶ月でこの苦痛から逃れられると思っていた。
なのに、僕は見つけてしまったのだ。
変わり映えのないモノクロの世界で
煌々と輝く君の姿を。
12月の桜の木の下で、毎日のように
患者さんの前で弾き語りをしている君を。
ー診察室ー
「ジョンウ君、先ほどのMRI検査の結果についてですが、」
「前回と比べて病気の進行が遅くなっているの。このままいけば満開の桜の木を見れるかもしれないし、外出許可もできるかもしれない。ジョンウ君、この調子で頑張りましょう」
嬉しいのか嬉しくないのか分からない。
でもただ一つだけ。
君に会いたい。
ー4月ー
余命3ヶ月という壁を乗り越え、今日も生きている。
少し変わったことは、以前よりも寝込む日が増え、力が弱まっていることだ。でも、満開の桜の木を目にすることができる時期にもなった。
きっともう見れないと思っていた桜の花びらと君の姿を、まだ見ることができるなんて。
先生からも奇跡だと褒められた。
でもその奇跡はきっと僕が起こしたんじゃなくて
君がくれたんだと思う。
ー4月下旬ー
「先生、お願いです。ジョンウの外出を認めてやってくれませんか」
病に倒れて早三年、初の外出許可が降りた。
母の啜り泣く声が廊下から聞こえたが、気付かないふりをした。
どうやら僕はもうじき死ぬらしい。
君を見つけるまで、楽になりたい、死んでしまいたいと思っていたのに、どうしてか君を見つけてから無性に生きたいと願ってきた。
君に会いたい、その願いが叶うまで。
ー4月30日ー
「そこの君、いつも窓から見てくれてるよね!やっと会えて嬉しいよ!記念に、何か弾いてほしい曲はある?笑」
「あ、急すぎて分からないよね、ごめん笑笑」
そうやって微笑む君。僕のことを知っていたなんて思ってもみなかった。
二度目の奇跡だ。
嬉しい。だけど、また君に会いたいと、生きていたいと願ってしまう。
そんな日も残されていないのに。
そう思いながら、僕は満開の桜の木が見えるあの病室で目を閉じた。
来世でも君にまた会えますように。
end.