三作目。
cpはGL。
解釈違いなど注意。
死ネタなど含みます。
少女レイ
(レイマリ×レイラー 死ネタ)
カンカンカン……。
何度この光景を見ただろう。
私は踏切の前で、繰り返しフラッシュバックする光景を見ている。
耳障りな機械音と共に、白と黒で彩られた遮断機がゆっくりと落ちていき、電車が勢いよくレールを走っていく。
その中に、ハツカネズミみたいに真っ白な髪の毛を二つ結びにした女の子が飛び込んでいった。
刹那。
ドパァン!と、破裂するような音がして、私の目の前に血と肉塊の雨が降った。
お揃いで買ったキーホルダーが千切れて、ボドボドとぐちゃぐちゃの肉塊が当たりに散らばる。
それでも、その光景が美しいと感じたのは、私の本能が狂っているからなのだろうか。それとも、私が全身全霊をかけて愛した人の体だったからなのだろうか。
答えなんて分かるはずもない。
だけど、私はその答えを探すように、目を閉じて、あの子___レイラーさんとの思い出を丁寧に振り返り始めた。
きっと振り返るのも、これで最後だから。
◇◆◇◆◇◆◇
「レイマリさん、私達ずっと友達ですよ!ね、約束しましょ!」
耳の奥で、可愛らしい声が蘇る。
そう、君は友達。ずっとずっと、友達のまま。私はそんなの、耐えられないよ。でも、君の願いを断るなんて、私にはできないから。
「…うん、約束しよう。私とレイラーさんは、ずっと友達…!」
夏の終わり、帰り道。二人で手を繋いでそんな約束をした。ガラスみたいにキラキラして、鋭く私を傷つける約束を。
思えばその時からだろう。
___私の本能が、狂い始めたのは。
その約束をした初めは良かった。レイラーさんとずっと一緒にいれるという、幸福感や優越感があったから。
だけど、段々と我慢ができなくなっていった。
「ししょー!一緒に帰りましょー!」
「みぞれさん、その髪飾り可愛いですね!」
「iemonさん、マリカしましょ!」
「Latteさん、パンケーキ食べに行きましょ!」
レイラーさんの目に映る人が許せなくなった。レイラーさんに話しかけられる人が心底憎かった。私だけを、見て欲しかった。
夏は完全に終わり、九月のスタートを告げるチャイムが鳴った時。
それが、私の本性が暴れ始めた瞬間だった。
花瓶が置かれていたんだ。
レイラーさんの机に、黄色い菊の花が入った花瓶が。
私達の学校では、見て見ぬ振りをされる、いじめがあった。いつも次の標的に置かれた花瓶。仕掛けたのは、私だった。
いじめが始まって数ヶ月、レイラーさんは明らかに変わった。いつも体のどこかに絆創膏や包帯を付けていたし、
「ねぇ、レイマリさん……私、何か悪い事しちゃったのかな……」
って、怯えた様子で聞いてくるようになった。
そう、君が悪いんだよ。私だけを見ててよ。そんな醜い私の本音の代わりに、
「え、どうかしたの?レイラーさんは何もしてないと思うけど……何かあったの?力になるよ?」
そんな嘘をついた。
そうするとレイラーさんは
「…そっか!ごめん、なんでもないよ」
無理に作った笑顔を浮かべて、誤魔化すのだ。
誤魔化さなくてもいいのに。私と君は友達なんだから、私の手を掴めばいいのに。苦しんでいるのだから、助けが欲しいはずなのに。
君は一度も私の手を掴んでくれなかった。
◇◆◇◆◇◆◇
キャハハハ、と教室に甲高い笑い声と、その声に隠れる薄笑いの声が響いた。
笑われているのは、レイラーさん。
思い返せば、この頃から君は絶望の淵にいるような、今にも消えてしまいそうな、そんな雰囲気を漂わせていた。
汚いバケツの水を頭から被ったレイラーさんに、いじめの主犯格の女の子が近づいて、彼女を叩いた。
巻き起こる笑い。笑ってる人の顔は、まるで理性のない獣だ。薄笑いの獣達が、レイラーさんを心が晴れるまでいじめ倒していく。
「あっ…!」
叩かれてよろけたレイラーさんのスカートに爪とカッターが突き立てられて、ズタズタに引き裂かれていく。
背が少し高い私と、小さな背丈のレイラーさん。身長差で不揃いのスカートがボロボロになっていくのは、少し寂しかった。
その日の帰り道、いつもの踏切に差し掛かったところで苦しそうにレイラーさんは言った。
「レイマリさん…私、レイマリさんが大好きだよ……。レイマリさんだけが、私の友達だよ……」
私も好きだよ。君の〝好き〟とは違うけど。
好きが違うのって、こんなに苦しいんだね。
君と透き通った世界で愛し合えたら___。
「ばいばい、レイマリさん」
___それが、君の最期の言葉だったね。
カンカンカン……。
耳障りな機械音が聞こえる。
カンカンカン……。
列車が迫る。
カンカンカン……。
君が遮断機の中に飛び込む。
カンカンカン……。
君がレールの上に辿り着く。
カンカンカン……。
カンカンカンカン……。
カンカンカンカンカン……。
____ドパァン!!
___その音を最期に、君は夏に消し去られてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇
カンカンカン…。
あの時と同じ機械音が、私を現実に引き戻した。あの時と同じように、列車が迫って、遮断機が落ちる。
唯一違うのは、真っ白な肌と髪をした君が居ないという事。
私は一年前、ここでレイラーさんを殺した。いや、正確には殺してはいないけれど、殺したも同然の事をした。
これは、その償いなのだ。
カンカンカン…。
君と同じように、遮断機を潜る。
カンカンカン…。
君と同じように、レールの上に辿り着く。
カンカンカン…。
列車が迫り来る中、私は確かに見た。
透明な輪郭をした、君が指差しているのを。
君が指差していたのは、私なのか、後ろから迫り来る列車なのかは分からない。
でもそんなの、どうでも良かった。
私は、夏に消し去られた君にずっとずっと、哀しいほど、とり憑かれてしまいたかったから。
列車が私と衝突する寸前、君の唇が動く。
君はきっとこう言ってた。
___君は友達。
コメント
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少女レイってこんな物語なんだなんか辛いな〜 (全く聞いた事ない人)
ヤンデレイマリ…