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仕事で汗をかいたから、先にシャワーを浴びたいと言ったというのに、待ちきれなかったのか、浴室に乱入した宮本。
躰を洗っている最中の橋本はギョッとして、扉を開けた宮本をガン見するのがやっとだった。欲情に満ちたまなざしを注がれるだけで、同じ気分に陥る。
「雅輝……うっ」
橋本のつぶやきを封じる口づけは、一気にボルテージをあげた。
修行僧のようにシャワーを受け続ける宮本をなんとかせねばと、必死にコックを捻って止めたが、髪から滴る水もお構いなしに、首筋へと顔を移動させる。
「んっ!」
ぐらついて背中を預けた先は鏡だったらしく、背中にひんやりした冷たさを感じた。
「陽さん…陽さんっ」
「ああっ、あっぁッ」
舌先を使って、執拗に胸の頂を責められる。以前はそんなに感じなかった行為だったが、最近はぞくぞくするような、なんとも言えない快感を覚え、あられもない声が出てしまった。
「陽さんは俺の――」
胸を吸いながら宮本の空いた手が、後ろの秘部へと伸ばされる。なぞるように割れ目を伝い、そして――。
「んうっ!」
滴る水滴に導かれて、指が1本挿れられたのがわかった。
解しやすいように尻を突き出すと、宮本はしゃがみこんで橋本自身の先端を優しく咥え込む。
「うっ、あっあっ…もっと」
もっと深く咥えてほしいのに、宮本はそれをせずに先端を弄ぶ。その間も後孔の入口は順調に解されていき、指の数が増やされていた。
「雅輝、意地悪するなよ」
「んっんっんっ、陽さんの美味しい」
「もっと咥えろって、それじゃ物足りない」
「だったら、俺の中に挿れる?」
意外な言葉に、橋本の快感がどこかに飛んでしまった。
「な、なにを言って……どうして」
「俺のこと、抱きたいって思わないの?」
何度も瞬きする橋本を、宮本は下から仰ぎ見た。視線を逸らさずに、まっすぐ見つめられるせいで、橋本の緊張感が自然と増していく。
「雅輝を抱くなんて、考えたこと――」
「付き合う前に、俺を襲ったでしょ。今は抱きたいと思えないんだ」
「おまえ、野木沢に嫉妬してるだろ」
「してる、すっごくしてる。今すぐ陽さんに抱かれたいくらいに!」
浴室に宮本の断言する声が響いた。
「雅輝、ホントおまえってバカだな」
「バカなのはわかってる。陽さんが江藤ちんと逢ったときの気持ちが、野木沢さんに逢ってやっとわかったくらいだし」
宮本はしゅんとして、なぜかその場に正座をした。
「ごめんね、陽さん」
「なにがだよ?」
正座をした宮本の前にしゃがみ込み、顔を覗き込む。橋本の視線を受けて、目の前にある顔が慌てふためいた。
「陽さんってば、そんな色っぽい顔を近づけないでくださいよ。理性をきちんと押し留める、俺の気持ちも考えてください」
「もっと、雅輝の気持ちを教えてくれ。野木沢に俺と関係があったって聞いたとき、どんな気持ちになったんだ?」
顔を近づけるなと注意されたばかりだというのに、橋本はわざと顔を近づけた。宮本は大好きな恋人の顔をまじまじと見つめながら、ごくりと喉を鳴らす。
「雅輝、ほら吐いちまえって」
「あ、えっと……野木沢さんは陽さんの好みなんだなって。俺と違ってイケメンだし、漂ってる雰囲気が上品な感じで、俺と違いすぎると思ったら、自然と落ち込んじゃった。陽さんの相手が不細工な俺でいいのかと」
「俺も思った。江藤ちんみたいなイケメンじゃねぇし」
「そんなことないっ! 陽さんは俺にはもったいないくらいの、すっごくいい男です」
「ハハッ、ありがとな。そんでもってその言葉、そのまま返してやるよ」
言いながら宮本の頬を、橋本は両手で包み込んだ。
「おまえの持つ純真無垢な心は、見た目のいい野木沢が持ってない、すげぇものなんだぞ。雅輝は俺にとって、もったいないくらいのいい男さ」
「陽さん……」
太い眉をへの字にして、あからさまにしょんぼりしている宮本に、橋本は触れるだけのキスをした。
「おまえ野木沢に、俺を抱いてること言ってないだろ?」
「そんなこと言う雰囲気じゃなかったです」
「それなら好都合だ」
「好都合?」
宮本は橋本に顔を掴まれたまま、わけがわからず首を傾げる。そんな不思議顔をしている恋人を、橋本は優しいまなざしで見つめた。